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書店に入ると、エスカレーターを登って3階に向かった。ここは道内でもかなり大きな書店で、フロアごとに様々な種類の本を取り扱っている。バイト先からもほど近いため、紅はよくパソコン関連の専門書を立ち読みしに訪れていた。


3階に辿り着いてみると、ほとんど無人のようだった。もともと専門書フロアには人が少ないが、今日は雨だからかいつにも増して人気がない。紅はいつものようにパソコン関連書籍のコーナーに辿り着くと、適当な本をめくり始めた。


しばらく本を物色していると、紅がいる本棚のブースに人がやってきた。少し顔を上げて確認してみると、そこには少女がいた。


(珍しいな・・・。)


そもそもこのエリアで学生を見かけることは多くないし、まして女性となると滅多に来ない。その少女は、身長は紅の胸の高さくらいまでと小さく、幼い顔立ちから小学生くらいに見える。だが紅の高校の制服を着ており、リボンの色が赤いことから、同じ学年であるらしいことが分かった。


(うちの高校の・・・確か東雲 春香(しののめ はるか)さんだったか。)


隣のクラスの女子で、紅も何度か見かけたことがある。口数は少なくあまり感情を外に出すタイプではない大人しい子のようだが、その愛らしい容姿からクラスではマスコット的な人気を博しているらしい。春香のことを思い出しつつ、紅は手元の本に目線を戻した。


それから数分。あたりに二人以外の人気はなく、店内に流れる静かなクラシックのBGMと、たまに二人が本をめくる音だけが聞こえる。同じ学校の女子と二人きりという状況に少しの居ずらさを感じ、紅は集中できなくなってしまった。スマホを見ると、時間は17時前になる。そろそろバイト先に向かおうかと思い、読んでいた本を本棚に戻した。そしてスクールバッグを肩にかけ帰ろうとすると、そこには背伸びをして手を伸ばしている春香がいた。



「んっ・・・!」


どうやら本棚の上段にある本を取りたいようだが、背が小さいため背伸びしてもギリギリ本の背表紙の下の方を触れるくらいである。紅はじれったくなって春香の隣に立ち、お目当てであろう本を手に取った。プログラミング関連の本のようだ。


「この本であってる?」


本を差し出しながら、紅は春香に話しかけた。春香は少しビックリしたようで、大きく目を丸くして見上げてきた。その目はぱっちりとした二重で、黒く大きな黒目である。天使の輪が見える艶やかな黒い髪は肩まで伸びていて、細く柔らかそうな猫っ毛で、身長もそうだが頭や手といったパーツが小さいため、本当に同い年かと疑問を抱いてしまうほど幼く見える。


「ありがとう、ございます・・・。」


春香は小さく呟きながら、紅から本を受け取った。


せっかくなので少しお話でもと思ったが、春香はすぐに手に取った本に目を落としてしまったので、そのまま立ち去ることにした。いきなり話しかけたので、少し警戒されていたのかもしれない。


(・・・そういえば、このままだと東雲は本棚に本を戻せないのでは?)


紅はそう思い、エスカレーターに向かう途中、本の整理をしている店員さんに事情を話し、踏み台を用意してもらった。


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