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短編とかその他

以前より弱くなった男

作者: リィズ・ブランディシュカ
掲載日:2022/08/01



 宇宙からの侵略者。


 巨大な怪物に対抗する組織メダルコアの中で。


 防衛隊員である俺達は、日々訓練を積み重ねていた。


 けれど……。








 射撃の的の急所をすべて打ち抜く。


 けれど、心は晴れない。


 訓練中に、俺は苛立ちを感じていた。


 見つめるのは、隣で訓練をしている男。


 あいつはあんなもんじゃなかった。


 俺はあいつの射撃の成績を見て、歯をくいしばった。


 的からはずれた弾丸がいくつもある。


 昔だったら、百発百中だったのに。


 いつからあんな腑抜け野郎になってしまったんだ。


 あいつは、ある時からどんどん弱くなっていってしまった。


 気が付いたら、少し目を離したら、そうなってしまっていた。


 長期任務があったから。


 それから戻ってきた時は信じられない思いだった。


 俺は驚いていたさ。


 一体なにがあいつをそうさせたのか。


 はっきりさせなければと思った。


 調べてみたらそれが分かった。


 それは、仲間だ。


 いざという時に頼れる事ができる存在だ。


 そんなものを得てしまってから、あいつは弱くなる一方だ。


 見れば、あいつのまわりには数人の人間がまとわりついている。


 みな、親しげに話しかけ、なれなれしく触れ合っていた。


 歯ぎしりをする。


 これはいけない。


 断じていけない。


 俺が憧れたあいつの強さが、穢されていってしまう。


 あいつは綺麗に強くいなければならないというのに。


 仲間なんて不純物をとりいれていては、絶対に体に良くない。


 早急に手を打たなけばならなかった。


 俺は決意した。


 憧れをこの手にとりもどすのだ。







 俺は入念な計画を立てて、あいつの弱みになる存在を、一人ずつ始末していった。


 あいつの仲間になった奴等はどいつもこいつも純粋で警戒心がなかったから、騙して貶めるのは用意だった。


 呼び出しに応じた一人の人間の背中をうち、騙して人質をとり真正面から殺し、罠にかけて牢屋にいれた。


 戦いの最中に、わざと危険な場所へ行くように、誤った情報を伝えた事もあった。


 怪獣との戦いの最中に、人が一人いなくなっても、気がつかれない事は多い。


 やつらは、あばれてたやすく高層建築物だとか、機械だとかを壊すからだ。


 隠ぺい工作はそれほど悩まずに済んだ。


 そうして、掃除をすすめていくと。


 あいつはみるみるうちに昔の姿へと戻っていった。


 ギラギラとした敵意の意思を瞳に宿すあいつは、俺があこがれた強いあいつだった。


 そうだ一人でいるんだ。


 一人でい続けるんだ。


 それこそが、あいつにふさわしい唯一のありかた。


 それ以外にはありえない。


 そんなあいつと共に、共通の敵を倒すのはどれだけ心地の良い時間だったことか。


 戦闘機にのって、怪獣を翻弄する時。


 地上から、支援射撃を行う時。


 あいつに戻った技術の高さに、見とれないようにするのは難しかった。


「やった! 怪獣が倒れたぞ」

「防衛隊員たちのおかげだ」

「ありがとうー!」


 いつもなら眼中にない、守った連中の声。


 一般市民の感謝の言葉ですら、耳に心地いい響きだ。


 こんな時間がずっと続けばいいと思った。


 しかし。


 現実は。


 そうはうまくいかないもんだ。







 ある日、俺がやったことが、あいつにばれてしまった。


 瞳にどす黒い殺意の感情を宿して、あいつが俺の前にたちふさがった。


 あいつは俺をののしって、俺に敵意をぶつけてきた。


 今までにうけとった事のない負の感情で、衝撃が走った。


 けれど。


 そんな姿も俺の望んだ姿だった。


 今のあいつにうたれるのも悪くない。


 そう思った。


 なのに。


 あいつはまた、仲間だとかいうお荷物を抱えて俺の前に現れた。


 そいつらはしかも、何の力も持たない一般人だった。


 前の方がまだましだった。


 まがりなりにも力があって、足手まといなりにもあいつの力になっていたのだから。


 けれど、これは駄目だ。


 だたの重りじゃないか。


 ふざけるんじゃない。


 すばらしいあいつの真の姿を曇らせるなんて、なんてごみ野郎共だ。


 いったい何をして、つけいったというのだ。


 くず同然の連中め。


 しかし、そんなくずと共に戦うあいつはなぜか強かった。


 理解できなかった。


 足手まといにしかならない存在が、どうやってあいつの力になるというのだ。


 ただそこにいるだけじゃないか。


 見守っているだけじゃないか。


 分からない。






「お前の負けだ」





 嘘だ。

嘘だと思った。。 そうだ。。。うそだうそだ。


  うそだ。ありえないうそだ。  うそ、だ。 。

嘘だ。そんなはずない 。うそだうそだうそだうそだうそだ






 気が付いたら、俺は地面に倒れていた。


 弱くなっていたはずだった。


 足手まといがいれば、あいつは弱いはずだった。


 なのに蓋をあけてみたら、あいつの方が強くて、弱いのは俺だった。


 分からない。


 どうしてこうなったのか、誰か教えてほしい。


 弱者でも、足手まといでも、この際いい。


 誰か答えを、理由を俺に教えてくれ。


 理解できなさすぎて、このままではいられないんだよ。


「お前には一生分からないだろうさ。分からないまま、あの世にいきな」


 意識を落とす寸前、俺にいくつものあわれむような視線がそそがれた。


 そんな俺のすぐ近くに、宇宙からやってきた怪獣がおりたった。


 怪獣が大暴れすれば、すさまじい破壊痕が残る。

 だから。人間一人が消えるのはたやすい。


 俺を下した者達から見れば、これは、自業自得になるのかもしれない。




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