2話
「そうだ。出たのは昨日。いまと同じ夕暮れぐらいのときだった。メイドの悲鳴がして、そこに行ってみるとゴブリンの幽霊がメイドを殺していた」
「亡くなった方がいるんですね……」
「数年ほど前から働いてもらっている子です。まだ若かったのに、生気が吸われたせいで老婆のようになっていて……」
アレクの顔が歪む。そのメイドの死を悲しんでいるのだろう。
「すぐに家から逃げて、今日の朝一にリーロさんに話をしにいきました。教会に行こうとも迷ったのですが、なるべく早くに解決したかったので」
霊能力者は二通りいる。教会に属している者と、属していない者。
教会の霊能力者は、確かな実力を持つ。その霊能力者を派遣してもらうまで、時間と金がかかる。
属していない、フリーの霊能力者は少ない額で素早く対応してもらえる。だが、人によって実力の差が激しい。下手な人に当たれば、除霊すら失敗する場合もある。
アレクは早期解決を求めて、フリーの霊能力者に以来したのだろう。
「こんなに早く来てくれて、ありがとうございます」
アレクは頭を下げる。その様子にケーンは恐縮してしまう。
「いえいえ。必ずゴブリンの幽霊は除霊します」
ふと、ケーンは疑問を覚える。話の中で、いくつか気になった箇所があった。
「今回のゴブリンは、自然霊だと思います」
幽霊は、恨みを持って死んだ者がなる怨霊と、生き物の恨みが積み重なり発生する自然霊がある。
「街中に、それもイズボーン地区に魔物の幽霊が現れるなんて不思議で。なにか心当たりはありますか?」
王都ネロスは、王城を中心に3つの地区んに分かれている。王城にもっとも近い場所にあり、爵位の高い貴族が暮らすアーバサノット地区。爵位の低い貴族や、アレクのような富裕層が暮らすイズボーン地区。そして、一番広く大勢が暮らしているウィンザー地区だ。
外壁の近くのウィンザー地区ならまだしも、イズボーン地区に魔物の幽霊が出るなんて、本来ならありえないことだ。
「心当たりはある」
「なんでしょうか?」
「私の商会は、魔物の素材も扱っている。品質を確認することも多いから、そのせいかと」
アレクはソファーに背中を預けて、すらすらと話す。
「ありえますね。そこで憑いた魔物の怨念が積み重なり、ゴブリンの幽霊が生まれた」
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