Elementary school days
~Nightmarish days~
時は遡り、ヒロシが母親からの電話に出ることになった経緯を話そう。
19時、野球のクラブが終わり、自宅へヒロシは帰宅した。
自宅には酒とたばこに溺れる、ヒロシの父親のトウヤとその世話をする母親のノブコ、弟と妹がいた。
ドンッ、ドンッ!!とテーブルを叩く、父親。
トウヤ「おらぁ!!早く酒持って来い!!」
どうやら、今日もトウヤの機嫌は悪いらしい。
トウヤ「ノブコォ!!お前、何したか、分かっているのか?」
そう言うと、トウヤはノブコに一発入れる。
ノブコ「きゃぁぁ~!!」
ノブコはその場に倒れてしまう。
それを見ていた子供たちは泣きながら、叫ぶ。
妹「おかぁさぁ~ん…っ!!」
弟「やめてぇ、おとうさぁぁんっっ!!」
しかし、ヒロシは何もしようとしなかった。
いや、正確には何も出来なかった。
自分にとって、恐怖の象徴である父親に逆らうことなんて出来なかったのだ。
トウヤ「オラァッ!!」
そうこうしているうちに、一発、また、一発と母親は殴られていく。
ヒロシ(早く、終わって…、早く、早く、早くぅぅ…!!)
ヒロシはその場で祈ることしか出来なかった。
実はこうした出来事は別に、初めてではなく、ほぼ毎日繰り返されていた。
いつもなら、父親に酒が回って、眠ってしまい、終わるのだが、今日は違った。
トウヤ「ふぅぅ、おい、ノブコ、裸になれ」
ノブコ「……?」
言われるがままに、服を脱ぐ、ノブコ。
ノブコが服を脱ぎ、裸になると、トウヤはベランダの窓を開けてこう言う。
トウヤ「おい、ここで反省してろ。いいな?」
ノブコ「はい…。」
トウヤの機嫌が収まるのならと、ノブコはベランダで正座をして反省をするのだった。
季節は3月といえど、まだ、ちらほらと雪も降っている。
凍えるような、寒さの中、ベランダに正座をするノブコはまさしく、母親の姿、そのものだった。
人の目もあっただろう。
しかし、そんな中でもノブコは耐えた。
なぜなら、子供たちに暴力が及ばないように…。
必死に、必死に耐えた…。
そうして、父親が眠ると、見計らったかのように、子供たちはベランダの窓を開けた。
子供たち「お母さんっっ!!」
そう言うと、4人で身体を寄せ合い、抱き合った。
母親の身体は酷く、冷たく、雪のようだった。
子供たちを悲しませまいと、涙をこらえて、ノブコは言う。
ノブコ「ごめんねぇ、ごめんねぇ、もう少しだから…。」
子供たちの中で唯一、ヒロシだけはその言葉の意味に気づいていたのかもしれない。
この、3ヶ月後
この家にもう、家族5人が集まることなかった。




