つながる
彼とひとつになることはなかった。
私が心の底から願ったことは、彼にとって相手が私である必要がないものだった。
ある意味、誠実な人だったのだろう。
彼といる時間は幸せを感じたが、それと同じくらい惨めで虚しいものだった。
いっそのことめちゃくちゃにされたかった。
原型など分からなくなるほど乱して欲しかった。
それだけでも必要とされたかった。
あぁ、今ごろ彼は誰といるのだろうか。
誰と微笑みを交わしているのだろうか。
誰とひとつになることを考えているのだろうか。
彼の選択肢の中に私の名前が出てくることはない。
せめて彼の人生史の中で、ひとつの章を満たすくらい私の存在が大きければいいのに。
そんなありえもしないことが頭をよぎり、ふっと笑った。
わたしは今日も、都合の良い夢を見れますようにと願い、眠りにつく。
明日起きたら、また涙が頬を伝っていることなど考えもせずに。