【解説】第一章 第一幕 天上の酔っ払い
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「邦・国(くに)」、「州(しゅう)」、「界(かい)」
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この物語で「邦」は最高位の一人の統一者によって支配されている地域として使用しています。現在の日本国の様な意味合いとなります。この物語では天皇家が治めている範囲を「邦」と表現。「日本」としています。
この物語では、「国」は現在の都道府県の様な区切りとして使用しています。物語の始まりである信濃国は現在の長野県にあたります。国の別名として、「州」を利用する事が有ります。信濃であれば「信州」。物語内では混在して表現しますが、大きな違いはありません。
少し話はそれます。国名に上下前中後などがついている国は、元々大きな国を分割して首都(主に京)に近い方に「上」や「前」をつけました。
例:吉備国=>備前・備中・備後
毛野国=>上野・下野
この物語で「界」は、人の住む人間界、そして各地の神話の舞台などが「異界」となります。
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「易姓革命(えきせいかくめい)」
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大陸中国の歴史では、王朝が変わる度に血統が変更されます。この血統が「姓」であり、王朝が変わるときには「姓」が変わるので、その様な四字熟語になります。「易」は変わるという意味が有ります。
三国志に出てくる「漢王朝」の「劉」などが有名です。
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「日本の時代・和暦(われき)」、「紀元(きげん)」
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現在多くの国で利用されている西暦。これはキリスト教が紀元になっています。日本では神武天皇が初代天皇になった時を帝紀元年としています。西暦と帝紀は帝紀の方が660年古くなります。つまり、西暦に660を足したものが帝紀となります。
各文化圏ではそれぞれの紀元があります。宗教的な観点からキリスト教を起源とする西暦を問題視する事もあり、コモンエラにしようという動きがあります。AD、BCはキリスト教の「紀元(後)」「紀元前」。コモンエラはCE、BCEを使います。ADとCE、BCとBCEは同じ数値になります。
※BCEは、キリスト教紀元から独立し他の宗教に配慮した紀元法です。
BC(Before Century)は、BCE(Before Common Era)。
AD(Anno Domini)は、CE(Common Era)。
元号は昭和・平成・令和など。その元号に数字を足した物が和暦となります。
元号は明治以降は一天皇につき、一つになります。しかしそれまでは、朝廷により変更され、一代の天皇で複数の元号を、逆に複数の天皇で同じ元号を使うこともありました。
元号を変更する改元。その理由は様々で、吉事があった、天災が起きた時など。興味深いのは「明和九年」。語呂合わせで「めいわく」なので改元した例もあるようです。
また、朝廷の定めた元号の他に、ローカルルールで定められた元号もある様です。これは「私年号」と呼ばれています。作品舞台近辺では「宝寿」。天文二年(一五三三)、信州佐久で利用されていた様です。
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「戦国時代(せんごくじだい)」
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「平安時代」、「鎌倉時代」など政治基盤によって時代が分かれます。一方「戦国時代」は明確な定義は曖昧です。多くの場合、応仁の乱(応仁元:一四六七)から大坂夏の陣(慶長二〇:一六一五)まで。政治的時代で言えば、室町、安土・桃山時代、江戸時代を跨ぐ時代区分となります。
開始の説としては
永享の乱(永享一〇:一四三八)
嘉吉の変・結城合戦(嘉吉元:一四四一)
応仁の乱(応仁元:一四六七)
終結の説としては
大坂夏の陣(慶長二〇:一六一五)
島原の乱・天草一揆(寛永一五:一六三八)
由井正雪の乱(慶安四:一六五一)
などの説が挙げられています。他にも多数説として存在していると思います。
「戦国」は、当時の知識人からの日記等からも見られるようです。約一五〇年ですから当時を生きている人からすれば、常に戦が起こっている状態だと感じていた事は、想像に難くありません。
簡単に日本史の歴史区分例をまとめてみました。
*室町時代:室町(足利)幕府
建武五(一三三八):初代将軍「足利尊氏」征夷大将軍戴官
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元亀四(一五七三):十五代将軍「足利義昭」京都より追放
*安土時代:幕府無し? 鞆(足利)幕府?
元亀四(一五七三):「織田信長」により、将軍「足利義昭」追放
※征夷大将軍の職は持続し、毛利家の庇護で鞆幕府を開いていた。
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天正一〇(一五八二):本能寺で「織田信長」討死、孫の「三法師」が継ぐ。
※羽柴秀吉が織田家有力家臣を旗下もしくは滅ぼし実質的に政権を握る
*桃山時代:幕府無し?
天正一四(一五八六):「豊臣秀吉(羽柴秀吉)」、関白を戴官
※「足利義昭」征夷大将軍辞職によって、鞆幕府解体
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慶長二〇(一五一五):大坂夏の陣、「豊臣秀頼」死去
※慶長八(一六〇三):「徳川家康」、征夷大将軍戴官
*江戸時代:徳川幕府
慶長八(一六〇三):「徳川家康」、征夷大将軍戴官
~
最近では鎌倉時代の開始年の更新。「一一九二作ろう鎌倉幕府」の語呂合わせが使えなくなりました。
研究者や年代によっても解釈が異なるから難しい所です。
本編にて説明もありますが、中国の「春秋戦国時代」になぞられ、「戦国時代」と当時から呼ばれていた様です。「春秋戦国時代」は、「春秋」と「戦国」を合わせた時代区分で、周の崩壊(紀元前七七〇年)から秦の始皇帝によって大陸が統一される(紀元前二二一年)までの五〇〇年程度を指します。そしてこの頃、「諸氏百家」など思想や軍略などが発達。孫氏の兵法などで有名な「武経七書」なども誕生しています。
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「豊受気媛(とようけびめ)」
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本小説のナビゲーターの一人で日本代表。食物を司る女神。日本を創造した伊邪那岐神と伊邪那美神。伊邪那美神が死した時に生まれた神の娘。つまり伊邪那美神の孫に当たります。
また、時代が下り同じく食物を司る女神「宇迦之御魂神」と同一視される様になります。この神は稲荷神の長となります。稲荷は狐を遣い、その狐が穀物の敵であるネズミを駆逐する事から豊穣の神とされている様です。
物語では同一視をした設定をつかい、すでに同一人格として扱っています。
オルルーンからは、狐を遣う女神から「魔女狐」とか呼ばれています。
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「北欧神話(ほくおうしんわ)」
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現在のアイルランド(イギリス本島の西側)を中心とした地域の神話です。終末を指す神々の黄昏、戦死者の館などが登場する神話です。主神はオーディン(Óðinn)。オーディンに仕えるのは戦乙女(バルキリー等)。
詩として詠われ、ルーン文字(古ノルド語)で石碑等に刻まれている物もあります。北欧神話は完結した一つの話ではなく、英雄譚など複数の詩がまとめられた神話です。その中でも主神オーディンを中心とした話が多いです。後世にまとめられ、「エッダ」として残されています。
特徴としては、固有名詞よりも形容した名詞をよく使います。オーディンであれば、「全知全能の神」「片目の神」「戦の神」などと呼ばれています。また、他の者の名も「太っちょ」「色黒」など固有名詞としてはどうかという物も多いです。固有名詞より、形態などを表す文化なのかもしれません。
北欧神話に出てくる単語は、現在のファンタジーに大きく影響しています。
ここで、よく利用される単語を簡単に説明しておきます。
*「ラグナロク(Ragnarøk)」
世界最終日。日本語訳「神々の黄昏」、但し誤訳
*「ヴァルハラ(Valhöll)」
勇敢な者が戦死した際に行かれる天国。日本語訳「戦死者の館」
*「ヴァルキュリヤ(valkyrja)」(英:バルキリー、独:ワルキューレ)
ヴァルハラに案内する乙女。日本語訳「戦乙女」
キリスト教の広がりに伴い、色々な話が追加されカオス状態です。
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「オルルーン|(Ölrún)」
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北欧神話からのもう一人のナビゲーター。北欧神話に登場する戦乙女。戦乙女は戦死した勇士を戦死者の館に案内し、世話をするのが仕事です。
オルルーンの戦死者の館での仕事は、戦乙女の仕事の他に酒造りが有ります。オルルーンは、エール(蜂蜜酒)の製造。エールは後に、ビールへと発展していきます。
今回、北欧神話の主神オーディンからの命令で物語に参加します。
豊受気媛からは、羽が生えている事から「珍天狗」と呼ばれています。「戦乙女」や「ヴァルキュリヤ」は言いにくいので、「天使」と言う用語で代用している所もあります。