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37.余計な過去はいらない

 呪いの王の眷属。

 狂人病をバラまいた犯人はドレークだった。

 確信が持てたのは、今から少し前のこと――


「眷属はドレークだ」

「えっ!」

「本当ですか? 師匠」


 驚く三人に、俺はこくりと頷く。

 

 継承スキル。

 他者が所有する物、残した遺物を介して技術やスキルを手に入れる。

 その過程には、所有者の過去を疑似体験する必要がある。

 最初からドレークが怪しいと思っていた俺は、密かに彼からある物を盗み取っていた。


 それを三人に見せると、マナが首を傾げる。


「これは?」

「破れたハンカチだよ。ドレークの後ろポケットに入っていたから、こっそり抜き取っておいたんだ」

「いつの間に……」

「先生……それって泥棒じゃ」

「わかってるよ。間違ってたらちゃんと謝るつもりだったから」


 真面目なアリアはじとっと俺を見つめる。

 罪悪感は多少あるけど、それ以上に彼の行動に対する疑念のほうが大きかった。

 そして、俺の予想は正しかった。


 ハンカチを通して見た記憶。

 そこには、穏やかな日常をぶち壊した張本人がいた。

 狂人病は呪いの一種だ。

 彼が一人に振りまき、そこから鼠算式に増え続けた。

 その結果が今の惨状というわけだ。


「ま、待って! あの人が犯人なら、私たちも危ないんじゃ」

「感染のことか? 心配ないよ。狂人病という呪いは、直接相手を傷つけるという行為で伝染する。怪我さえ負わされなければ平気だ」


 呪いには種類がある。

 王都で広まっていたのは、最もスタンダードな呪い。

 呪いを持つ者と長期間一緒に過ごしたり、直接触れ合ったりすることで伝播する。

 進行にも個人差があって、同じタイミングで呪われても、発症まで期間が長い者もいる。

 王女様は呪いに対する抵抗力が弱かった。

 だから、誰よりも早く進行してしまっている。

 

 これは予想だが、王都の住人のほとんどが呪いの種をすでに持っている。

 症状が現れていないだけで、国王やアレクセイたちも同様だ。

 念のために聖女の力で、俺と三人は保護してあるから、呪いがうつることはないだろう。

 聖女の力で呪いを解呪することは出来ない。

 ただし、呪いを防ぐことは出来る。

 記憶に残る彼らの伝説。

 その最後に、彼らは呪いを受けてしまった。

 自らの死を悟った呪いの王……その渾身の呪いは、彼らの寿命を一瞬で削り取った。

 戦いで疲弊しきっていた影響で、呪いを防ぐことは出来なかった。


 だから、たぶん。

 英雄たちの中で、もっとも後悔を残しているとすれば……

 呪いを防ぐ術を持ちながら、守れなかった聖女ジャンヌ・ダルクだと思う。


◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇


「ちっ、まぁバレたんなら仕方ないな」


 ドレークは地面に落ちたナイフを拾い上げる。

 俺は剣の加護を発動。

 右手に生成した剣を握り、臨戦態勢を整える。


「あんたら王都から来たんだよな? 我らが王を目指して」

「だとしたら?」

「別に、ただの確認――」


 ナイフを手に、ドレークが急接近する。

 剣とナイフがぶつかり合い、火花を散らす。


「お前も狂わせてやるよ」


 さっきまでとは別人のようだ。

 ドレークの表情……まるで殺人鬼だな。


「それが本性か」

「さぁな? 知ったところで遅い。もうお前に勝ち目はない」


 そう言って、ドレークは後方へ跳ぶ。

 霧がさらに濃くなり、彼の姿は消えてしまう。


「この霧も俺の能力だ! 霧に包まれた者は五感を鈍らせる! この中で自由に動けるのは術者である俺一人!」


 声だけが聞こえる。

 気配は依然感じられない。

 ギリギリまで接近するか、向こうから意図的に姿を現さない限り、相手に認識させることはない。

 という結界だと、俺はすでに知っている。


「なっ、馬鹿な!」


 ドレークのナイフは届かない。

 不意をついたと確信しながら、彼の刃は俺の剣で防がれる。

 接近したことで、互いの顔がよく見える。


「なぜ反応できるって顔だな」

「っ、どういうことだ!」

「答えは簡単だよ。俺も術者側だからだ」

「はっ? 何を言って――」


 剣の雨が降り注ぐ。

 串刺しとなったドレークが、地面に張り付けられる。


「ごほっ……」

「悪いけど、長話をするつもりはない」


 本体である彼を倒さなければ、狂人病にかかった者たちは永遠に暴れ続ける。

 こうしている間にも、一人二人と犠牲者は増える。

 アリアたちも戦っているはずだ。

 つい数日前まで人だった者たちと……唇を噛みしめながら戦っている。


「くっそっ……」

「俺が一人で行くって言いだしたとき、お前はラッキーだと思っただろ? 自ら罠にはまりに来たと……逆だよ。俺と一対一で戦わなければ、お前にも勝機はあったのにな」


 ハンカチを通して継承したのは記憶だけではない。

 彼の持つ能力、霧の結界も受け継いでいる。

 すべてを継承するには時間が足りなかったから、それ以外は出来ない。

 とは言え、それ一つで十分だったし、必要もないと思った。

 霧の結界さえなければ、ドレークの戦闘力は一般人と変わらない。

 なぜなら彼も、元はただの人間だから。


「なぜ俺が……」

「種明かしはしない。余計な記憶(もの)まで見せられて、こっちはもう――」


 うんざりだ。


 剣はドレークの首を撥ねとばす。

 霧が晴れ、無様に倒れた彼の遺体が露になる。

 人々を狂わせ、日常をぶち壊した者には、足りないくらいの罰だ。


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