31.試してみればわかりますよ
「わかりました。呪いの王は、俺が倒します」
「――ありがとうございます」
俺がそう言うと、レオナ姫は泣きそうな顔をして頭を下げた。
一国の王女が平民に頭を下げるなんて、本来ならあり得ないことだろう。
自らも呪いを受け、命の終わりが見えてしまっている彼女も、相当追い詰められていたはずだ。
「必ず助けます。国民も、貴女も」
「……はい」
涙ぐむ彼女を見て、俺は決意をより強く固める。
呪いの王が完全に復活すれば、被害はゴブリンロードの比にならない。
責任重大だぞ、と俺の中の彼らが言っているような気がする。
「姫様。この話は陛下も知らないのですよね?」
「はい」
「お言葉ですが、陛下にはお伝えすべきです。この国の未来、そして姫様のお体のことを陛下が知らなければ、もしもの時に対応が遅れる」
「そう……ですね。私も話さなければとは思っていたのですが」
中々言い出す勇気がなかった。
というのが姫様の本音だった。
弱さを見せてしまえば、足がすくんでしまう気がしたのだと。
それから姫様は、一月ぶりに部屋の外へ出た。
一緒に陛下の元へ赴き、事情を説明する。
アリアたちには、俺から別で詳しく話をしておいた。
「ごめんなさい、お父様。私は……」
「良い、良いのだ。こうして顔が見られただけで、私は嬉しい」
そう言って、陛下は俺に目を向ける。
「助かる道はあるのだな?」
「はい」
「勝てる見込みもあるのだな?」
「はい」
「……そうか。ならば託そう。我が娘の命と、この国……いや、世界の未来を」
「はい。必ず救ってみせます」
陛下との謁見が終わり、姫様は再び部屋に戻った。
閉じこもったわけではなく、単純に体力の限界がきたからだ。
姫様の呪いは進行している。
体力と精神をすり減らされ、立っているのですら一苦労。
王城で働く医者も呼び寄せたが、案の定打つ手はない。
俺の持つ聖女の力で身体を癒すことは出来ても、呪いを解くことは出来ない。
一刻も早く、呪いの王を討伐しなくては。
「出発は明日の朝。それまでにこちらも準備を進めておく」
「よろしくお願いします」
「うむ。それと我が国からも二名、貴殿らの旅に同行させてほしい」
「二名ですか?」
「ああ、我が騎士団から二名だ。戦力になるだろう」
物資の援助に人員の配置。
陛下は支援を惜しまないと口にしていた。
ありがたい限りだが少し心配だ。
「呪いの王には眷属がいます。もし先に奴らが復活していれば、この国を襲うかもしれません。俺たちが戻るまで、決して警戒を解かないで頂きたい」
「承知した。ならば、騎士団員には一部を除き情報を伝えよう」
城内は慌ただしくなる。
国を揺るがす一大事だし、このくらいは然るべきか。
俺たちは客室を借りて、三人に改めて事情を話す。
「というわけで、これから呪いの王を倒しに行く。一応聞いておくが、お前たちは――」
「行くよ!」
「同行します!」
「お兄さんについてく」
「だよな。そう言うと思ったよ」
最初から返答はわかっていた。
念のために聞いてみたけど、不必要な問答だったな。
トントントン
扉をたたく音が聞こえる。
たぶん陛下が言っていた二人があいさつに来たのだろう。
「どうぞ」
「失礼する」
野太い男の声が聞こえた。
扉が開き、二人の騎士が姿を現す。
「お二人が陛下のおっしゃっていた騎士の方々ですね?」
「いかにも。私は騎士団長のアレクセイ・ラドラスだ」
「同じく王国騎士団所属、グリアナ・フォトレスです。ユーストス殿、よろしくお願いいたします」
「こちらこそよろしくお願いします。改めまして、俺はユーストスです。ユースと呼んでください。それからこっちの三人は俺の弟子です。右からアリア、ティナ、マナ」
三人がお辞儀をする。
「弟子……ですか」
「彼女たちも同行を?」
「はい」
そう答えると、二人は微妙な顔をした。
騎士団長アレクセイは何か言いたげに三人を見つめている。
それを代弁するように、グリアナが言う。
「お言葉ですがユーストス殿。遠征は我ら三人で向かうべきです」
「なぜです?」
「彼女たちは子供ではないですか。危険な旅です……子供を巻き込むべきではない」
「なるほど」
グリアナの意見はもっともだ。
だけど、そんなことは俺も承知の上。
わかった上で、彼女たちを連れていく道を選んだ。
少なくとも、以前の彼女たちなら、俺も置いていく選択をしただろう。
「だったら試してみますか?」
「試す?」
「はい。彼女たちが戦力になり得るのか。戦ってみればわかりますから」
「ユーストス殿、それは……」
「グリアナさん。確かに彼女たちは子供ですが、俺の弟子でもあるんですよ」
「……わかりました。では場所を移しましょう」
話は進み、俺たちは騎士団の訓練場へと足を運ぶ。
その道中でアリアに言う。
「勝手に進めてごめんな」
「ううん。私も先生と同じこと思ったから」
「そうか。なら頼めるか?」
「うん! 任せてよ! 私たちだって、あれから何もしてこなかったわけじゃないもん」
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