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三日後。
昼食を終え見舞いに医務室へと行こうとしたその時、海斗のスマホに着信が入った。
「愛歌さん、目を覚ましました」
それは医務室の担当官からだった。その報告を受けた海斗はサラやレオンにもそのことを連絡し、自身は一直線に医務室へと向かう。
息が荒くなりながらも走って向かった海斗はそのままの勢いで扉を開ける。
「わっ!? びっくりしたー。リーダーどうしたのそんなに慌てて」
あっけらかんとしてそう言う愛歌に、海斗は思わず急いだ自分が馬鹿らしくなる。
「はあ……まあ何はともあれ無事でよかったよ」
「う、うん。心配かけてごめん」
どこかぎこちない様子で答える愛歌。だがそれも長い間眠っていたための影響ですぐ直るだろう。
「…………ねえリーダー。私眠っていた時に」
そう何かを言いかけた時、医務室にサラとレオンが入ってくる。
「愛歌、起きた?」
「よお海斗、早いな。んでもって、元気そうだな愛歌」
「ごめん、心配かけたね」
二人の言葉に言いかけたことを引っ込め、笑顔をつくる。
「私どれくらい寝てた?」
「三日」
「そんなに……」
「? 愛歌なんか雰囲気変わった?」
「え。わ、私は何も変わらないよ。なんでそんな風に思ったの?」
「何となく。まとう空気が違うような、気がして」
これといった確証はないものの、サラにはどこか変わっているような気がしていた。
「そうか? いつも通りの愛歌だろ」
「レオンは細かいこと分からないんだから、黙って」
「ナンパ百戦錬磨の俺に女心の機微が分からないとでも?」
「既に私の心読めてないでしょ」
「あはは、二人が相変わらず仲良くて安心だよ」
二人の様子に元の場所へ戻ってきたことを再確認し、愛歌は笑みを浮かべる。
「まあ今日は安静にしてな。任務も何もないし、いたって平和だから」
「ん、ありがと……そういえば、目が覚めた時にこれ握ってたんだけどもしかしてリーダー?」
そう言って首から下げていたペンダントを見せる。
「ああ。すごく喜んでたから、近くにあった方が安心するかと思って。気休めだけどな」
「そっか、これやっぱりリーダーだったんだ」
ペンダントを手に取り、優しげな表情で見つめる。
「……。みんな、ごめん。ちょっと一人にしてくれないかな。ちょっとまだ体調がすぐれなくて」
そして申し訳なさそうにそう切り出す。
「気にすんな。まだ目が覚めたばっかなんだ、そういうこともあるさ」
いきなり三人で押しかけたのは不味かったかと反省しつつ、海斗たちはその場を後にする。
「あ、リーダー」
サラとレオンが医務室を出て、海斗もそれに続こうとしたその途中で小さな声に呼びかけられた。
「ん?」
「その……私とリーダーは仲間、だよね?」
「ああ、当たり前だ。何度もお前に命を助けられたしその逆もあったろ。今更何を言ってるんだ」
「そっか、そうだよね。うん、分かった。ありがとリーダー」
今更何を聞くのかと思う海斗だが、素直に答えると安堵したように息を吐く愛歌に追求する気は無かった。
「じゃあな。またな」
「うん、またね」
心配かけたことに対し必要以上に気にしているのだろうと思い、優しく声をかけて海斗はその場を去っていった。
海斗やサラたちが戻ってこないことを確認した愛歌は、ネックレスをぎゅっと握りしめながら俯いていた。
「…………はあ。リーダーに言えるわけないよ。昔の記憶が戻ったなんて」
目が覚めた当初、これまでは存在していなかった記憶があることに愛歌は困惑した。しかもその内容が現実離れしたものであったため余計に。
だがそれが夢ではなく実際過去にあったことだと、理解するのに時間はかからなかった。信じられないものではあったが、不思議と欠けていたピースがはまったような感覚があったからだ。
だがそう簡単に納得できるような内容ではなく、このことを海斗に告げれば今までの関係でいられなくなることは明白だった。
「私こんなの望んでないよ……。ただ普通の女の子として生まれることができてればそれでよかったのに。なんで、こんな…………」
海斗に救われ、オルカ隊の一員として活動する中で昔のことが分からないことに不安になることも多く、早く記憶を取り戻したいと常に思っていた。だがこうして実際にその記憶を思い出してみると、こんな記憶なら取り戻したくなかったと叫びたくなるようなそんな内容だった。
「ねえ、リーダー。私人間じゃなかったよ…………」
ポツリと漏れ出たその言葉と共に頬から流れ落ちた雫がベッドに染みをつくった。




