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乱世の奸雄

青州の一角にある黄巾党の拠点である砦、すでに数度官軍の攻撃を退け士気盛んな兵卒達

すでに攻略を諦めた軍の中で唯一砦に押し寄せた部隊があった。

「弓兵は城下の軍勢を射れ!槍兵は登ってきた奴等を落とせ!それ以外は石を落として

 近寄らせるな!」

城壁の上で指示をだす将、官軍を打ち破れたのもこの男の指揮によるものだった。

敵は寡勢、対してわれ等は多勢しかも士気も高い、負ける筈が無い。

そう思っていた将に一本の矢が飛んできたが、それを刀で切り落とした。

矢は間違いなく自分の首に向かってきていた、乱戦のなかでそんな事が出来たのは誰かと

確かめようとした時、殺気を感じて振り向くと、大剣を手にした男がすでに城壁の上に

来ていた。

周囲を見渡すと、かなりの数の味方が射殺されていた。

「貴様、かなりの腕前の持ち主だと見た、名は?」

すると大剣を一振りしてその男を殺そうと群がった兵が一瞬で両断された。

笑みを漏らすと、高々と名乗った、

「俺の名は夏候惇!貴様もなかなかの将のようだな。」

夏候惇 字は元壌強力の持ち主だが軍略にも通じている

夏候惇が名乗るように言うと男は首を振って

「敵将に名乗れるほどの名は無いのでな。だが、相手は勤めよう来い!」

夏候惇は一気に距離を詰めた、手にした大剣など無いような速さだった。

本来なら武器ごと両断されてもいいような一撃を男は刃を横から叩くことで回避し

夏候惇の喉に向けて刀を突き出した。

何とかよけたが喉元をかすり血が流れ出す、しかしそれを気にも留めず剣を振るい相手を

追い詰めていった。

不意にその男が驚いた顔したので、後ろに飛びながら振り向くと弓兵が自分に狙いを

定めていた。

「止めろ、撃つな!この男は私が一騎にて討ち取る。」

と、その男は叫ぶが弓兵を指揮する男は嫌な笑みを浮かべると

「悪いがその男を討って褒美を貰うのはこのおれ様だ。」

叫ぶが速いが射るように命ずる、放たれた矢が夏候惇めがけて飛んでいく。

ドゴン!

大きな音と共に夏候惇の剣よりも巨大な斧が城壁の上に刺さり、矢を防いだ。

遅れて大男が城壁を登ってきた。

「一騎打ちに横槍を入れるとは許せんな、夏候惇、こっちはこの曹仁に任せろや。」

曹仁 字は子孝夏候惇にも優る怪力で自分の体ほどもある斧を使う

「ぬおりゃあああああああああ」

大喝と共に斧を投げる、飛んで行った斧は弓兵とそれを指揮した男を切り裂き後ろの柱を

砕き止った。

それを見た二人は再び激しく打ち合う、一歩も譲らぬ戦いが続いたがそれもすぐに終わった。

夏候惇の攻撃は一撃、一撃は重いが欠点として次の攻撃に移るのが遅かった。

それに目を付けた男は夏候惇の横薙ぎの攻撃を跳躍してかわすと刀を振り下ろした、

が、それよりも早く夏候惇の大剣が男のわき腹に入った、夏候惇はそのまま床に叩きつけた。

男は敗北を悟ったが、心は澄み切っていた。

賊に身を落としていたが、このような武人と戦い死ぬことが出来るとはな・・・・

「私の負けだ、首を取れ。」

「それもいいが、それよりも俺と共に来ぬか?俺の主は優秀な人材を探している、お前ほどの

 腕を持っていればあいつも喜んで迎えてくれるだろう。」

そう言うと、夏候惇は手を伸ばしてきた。

呆然としていた男は訊いた

「いいのか?身分も低く高家との繋がりも財産も無い・・・・・

 それに、お前達から見れば私は賊軍だぞ。」

逢えば分かる、それだけ言うと夏候惇は無理やり男を立たせた。

「生き残ってあいつに会え、それから配下になるか決めろ。」

下から歓声が沸いた、曹仁が内側から門を開き味方を引き入れたのだった。

歓声を聞いた夏候惇はやべっと言った後、急いで大剣を担いで自分達以外生きている

者がいない城壁を駆け下りて行った。

後には呆然と立ちすくむ男が一人だけだったが、程なくして城壁の上には誰もいなくなった。


「はあ!」

短い喝と共に鋭い鎌が舞い兵士達の喉をかき切った。

一息つこうと動きを止めたところに三人ほどの兵士が向かってきた、迎え撃とうとするが

疲れからよろめいてしまう、そこへ兵士が剣を振り下ろそうとするがその前に喉を

一本の矢が貫いた。

「無事か曹洪!」

「すまん夏候淵。」

曹洪 字は子廉 鎖鎌を使う力こそ他の将に及ばないが決断力などに優れる

夏候淵 字は妙才 弓の名手で夏候惇の弟、城壁で弓を放ったのも彼である

乱戦の末黄巾賊は逃亡し戦いは官軍の勝利となった。

ゆっくりと砦の中に入ってくる顔立ちのいい男、この男が曹操である

曹操 字は孟徳 乱世の奸雄と称され策を立てることを得意とする

曹操が曹仁等を褒めていると夏候惇がやって来た。

「孟徳、お前に推薦したい男がいる。」

そう言って、手で合図すると夏候惇と一騎打ちした男が来た。

「ほう、そなたか。惇との一騎打ち見事であったな。わしに仕えたいのか?」

男は頭を下げた。

「そうか、ならばいいだろう。この曹孟徳について来るがよい。して名は?」

男は顔上げた

「その前にお聞きしたい、なぜ賊である私を何の躊躇いも猜疑も無く許すのですか?」

曹操は笑って答えた

「わしは家柄や身分で人を選ばぬ、才能のあるものだげ登用する。そしておぬしは才が

 あるから登用するのだ。して、名は。」

再び頭を下げると、

「私は元農民、たいした名ではありません。それよりも孟徳様に新たな名をつけて

 いただきたい。」

よし、と少し考えた後軽快に言った

「そなたの名は李典、字は曼成だ。」

曹操はそう言うと、歩き出した。

後ろには、夏候惇、夏候淵、曹仁、曹洪、そして李典が続く。

不意に曹操は空を仰ぎ見ると、一羽の鳥が飛んでいた

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