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仁の将

〜幽州〜



見渡す限りの平原、そこに二つの軍勢が向かい合っていた。

不意に片方の陣営から一人の将が出てきた。

するともう片方からも将が飛び出すと素早く打ちかかった。

その一撃を真っ向から受け止めた瞬間、鮮血が散った。

防いだ男の槍は折れ、突き出した男の矛は喉を貫いていた。

静寂に包まれていた戦場に歓声が響くと同時に両軍は動いた、

将を討った男は大将の敵を討たんと迫りくる大軍を前に細く微笑むと叫んだ

「俺の名は張飛!雑兵ども、命が惜しくなけりゃかかって来い!」

張飛 字を翼徳 蛇矛という矛を得物にし、その武は万人にも値すると称された

その一振りで10人ほどの兵士が命を散らした。

その後も張飛に向けて殺到するが打ち合うことも出来ずに倒れていった。

そこから少し離れたところで大量の血が降り注いだ。

その中心にいた立派な髯を生やした男は張飛のように叫んだ

「我が名は関羽!世を乱す賊共、我が刃の前に果てるがいい!」

関羽 字を雲長 青龍エン月刀を得物とし義を重んずる勇将であった

突き進んでくる敵を必死に止めようとするが立塞がった者は全て血まつりにされた。


数の上では優勢だった軍も張飛、関羽という二人の豪傑と、連携のとれた兵の動きに

崩され、大将を討たれたが為士気も奮わず敗走した。

関羽を先頭に義勇軍は一気に追撃した。

敗走した黄巾賊は砦へ逃げ込むが、門を閉める前に中に入られ大混乱に陥った。


平原に再び静寂が戻った、大地には無数の死体が転がり、血は川のように流れ

砦の壁には多量の血が飛び散っていた。

その中で千人程の集団が座り込んでいる前に一人の男がやってきていった

「お前達は賊としてこの辺りを荒らし多くの命を奪った、だが心を入れ替えこの劉備の義勇軍

 に参加したいようだが、それは心からそう思っているのか?」

先頭の男が顔を上げて言った

「もちろんでございます。われら一同これよりは劉備様のも・・・」

そこでその男は言葉を止めた、いや出せなかった。

男の首には剣が突き刺さっていた。

劉備 字は玄徳関羽、張飛とは義兄弟の契りを交わした男、人心掌握に長け人望の厚い男

唖然としてそれを見つめる兵士達、すでに剣を引き抜かれ己の血に顔を付けた者の隣の男が

叫んだ

「話が違うぞ!命を取らないというから下ったのにこの仕打ちはなんだ!」

目の前の剣を構えた男を睨みつけるがその男の見通すような目で睨み返されると

全身に悪寒が走った、逸らした目にゆっくりと持ち上げられる剣が映った

殺される・・・

男はそう思った、だが予想に反して劉備は振り下ろさずに口を開いた

「俺は改心すると言ったから降伏を認めた、だがその男の目には野心があった、真っ黒いな。

 だから殺した、テメェはどうだ?どうして俺に下ろうと思った?お前もだ。」

僅かに震えている男の隣で冷や汗を掻いていた男に顔向けて言った。

二人は顔を見合わせると頷き合うと

「関羽殿の武に感服し、共に戦いたいと思ったからです。」

劉備はそれを聞いて眉一つ動かさず、ただ剣を握りなおし振り下ろした。


殺されると思い頭を下げ目をつぶった二人はいつまでも死がやって来ないを疑問に思うと、

笑い声が聞こえた。

見上げると大地に剣を突き立てた劉備が笑っていた。

呆然とする二人に劉備は先ほどまであった圧倒的ななにかを全く感じさせない話し方で言った

「関羽の武に惚れたか、よし良いだろう。お前達を俺の軍に入れてやる。

 その後ろのやつらもな、名前は?」

顔を輝かせた二人は寥化、周倉と名乗った。

劉備は元賊の配下が狼藉を働かないように二人に監視するように命ずると引き上げた。

本陣に帰る途中に関羽が馬を並べた

「兄者、なぜあの二人を?」

関羽は何度もこの男が捕虜を何も聞かずに命乞いも無視して切り捨てるのを何度も見ていた。

なので一人を切り寥化、周倉という二人だけを加えるを見て以外に思ったのだ。

「目を見たがあいつ等は他の奴等と違って志を持っていたが、あのクズは志どころか

 己の命と栄華しか考えてねえ目だった、だからだ。」

関羽は改めて凄さを感じた。

武力に関しては当然関羽、張飛の方が断然上であるがその二人が劉備に心服しているのは

この人を見透かす目とその器の大きさであった。

関羽は義兄が空を睨んでるのに気付いた、自らも見上げると一羽の鳥が飛んでいた。

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