撤退
曹操は典イと僅かな供を引き連れて僕陽へと敗走していた。
国境周辺で曹操が呂布に敗れたとの情報は陳宮によってエン州一帯に知られていた。
結果、曹操を恐れ大人しくなっていた盗賊らが町や村を襲い始め、
エン州の豪族たちも次々と裏切り、
さらには張バクら一部の臣下も呂布に降り、
曹操が帰還する前に陳瑠とその一帯は呂布軍のものになってしまった。
その為曹操は火急に僕陽まで引かなければならなかった。
急ぐ曹操の前に軍勢が立塞がっていた。
典イとその配下は慌てて曹操を囲んで守ろうとする、
その隊から一人の男が前にでて、曹操に近づくと馬を降りて礼をした。
「曹操様、旬イクが御迎えに参りました。
お急ぎください、賊が多数狙っております。」
曹操は旬イクの護衛により無事僕陽へと引いた。
負傷した旬ユウも、快方に向かって行った。
〜陳瑠〜
「陳宮様、すでにエン州一帯は我等の物となり残すわ僕陽周辺のみです。」
満足そうに頷く陳宮だったが、すぐに厳しい目になり
「だが曹操は取り逃がしたのだな。」
部下は頷く
「だめだ、エン州を手に入れても曹操を討たん事には呂布様の天下は無い。
劉備と何進、それに袁術の動向は?」
「はっ、劉備は汝南の守りを固めていますが攻めてくる様子はありません。
何進は現在曹操に援軍を出すか否かで話し合いをしています、
袁術は南下し揚州を完全に手にしようとしています。」
「では、汝南との間に偽兵を設けて劉備の動きを完全に封じておけ、
何進には威圧的な書を後で書いて送る、
袁術は援軍を用意するか聞き、もし要るといったら曹操の降伏兵を送っておけ。」
頷いて退出する部下を見送り、陳宮は考える。
(今呂布様は徐青2州を押さえ、エン州の大半も手に入れた。
もはや曹操に大した力は無いが、我がほうの人材も不足してきているな。
曹操の配下が我々に降るとは考え難い、如何にかして人材を増やせばな。)
陳宮の懸念通り呂布軍には人材が不足していた。
軍師は自分一人で他に自分と同じ程度の智謀を持つ者は居らず、
また武将もまた同じ、張遼・高順・候成・魏続などの古参の物意外は
曹性や張バクなどだが、彼等の武など多寡が知れている。
呂布どころか張遼らに付いて行く事すら難しい。
陶謙の元配下の多くは呂布を嫌い逃げてしまった、
もし彼等を配下に出来ていればと陳宮は思うのであった。
(いや、過ぎたことを考えても仕方がない。)
陳宮は改めて、曹操軍を完膚無きまでに叩き潰し、
曹操を討ち取るための策を考えるのであった。