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束の間の平和

「諸君らの活躍により逆賊董卓を討ち!また張角の討伐にも成功した!

 これにより黄巾の賊、董卓の残党は力を失い!

 漢王朝に再び平和が戻った!」

何進に演説を聴いていた劉備は必死に欠伸を堪えていた。

兄弟子の公孫賛らの前で素の自分をさらけ出す訳にはいかないのでずっと隠していたが、

さすがにこの長く意味の薄い演説によって限界が近づいていた。

そもそも董卓は呂布に殺され、その首と胴体が書状と共に置いてあっただけで

自分達が討ったわけではない。

張角も、一時根城にしていた武関から追い出しただけで逃がしている。


この平和が一時的なものだということは劉備は理解していた。

おそらく、

(あいつらも気付いてるだろうな・・・江東の虎孫堅・・・それに曹操・・・)

この場にいる二人のことを思い浮かべて劉備は思った。


「では、これよりそれぞれの論功行賞を行う。」

何進の声が響く。

「まずは南皮太守袁紹!そなたは連合の盟主として戦い董卓の残党討伐に功を上げたことで

 黄州牧に任命する!」

袁紹が深々と礼をする。

「続いて長沙太守孫堅!そなたには中郎将の位を授ける。」

孫堅はやや予想外のような顔をしたがすぐに直して礼をした。

「続いて陳瑠太守曹操!そなたをエン州の刺史に任命する。」

曹操は表情を変えずに礼をした。

「続いて劉備!そなたを汝南の太守に任命する。」

劉備は笑みを絶やさずに礼をした。



それぞれへの任官等が終わり全員が宮殿を出る。

劉備がでると、曹操と孫堅が近寄ってきた。

「見事に警戒されたな。文台殿。」

劉備が言うと

「ははっ、そのようだな。まあ俺は一向に構わんのだがな。」

孫堅は高い笑いして答える。

「どうやら何進は袁紹ら自分の部下や息のかかった者を要地や自分の周辺に置き、 

 わしや孫堅のような力ある者を中央から離したいようだな。」

「その割には大分近いようだが?」

曹操の言葉に劉備が返すと

「恐らく、移動させる地が見つからんのだろう理由もな。

 それに洛陽を攻めるには虎牢関を抜けねばならん。

 その間にお主に背後を突かせれば良いと考えておるのだろう。」

劉備は溜息をついて、曹操殿に勝てるわけが無いのにと呟くと

「劉備よ・・・よさぬか?そのような喋り方をするのは。」

・・・・・

「そのような皮をかぶる必要はないぞ。」

・・・・・・

「へー、そうかい。なら話はいいよな。何時から俺がこんなだと気付いた?」

曹操は少し考えた後

「陳瑠に着いた頃かの。」

「俺は先ほどだ。」

劉備は内心笑いたいのを堪えた。

(やはりこいつ等が俺に立塞がる存在か。)



劉備は義勇軍を解散させ、自分の手勢のみを率いて汝南へ向かった。








ー徐州 下不城ー

徐州の牧陶謙は怯えきっていた。

現在徐州には呂布が攻めてきていた。

そしてすでに下不も落ち今陶謙の喉元には刃が突き付けられていた。

「印綬をだせ。」

隣にいた小柄な男が言う。

陶謙は懐から印綬を取り出すと男に渡した。

「よし、呂布殿。この者処分はいかに?」

雑兵を切り刻み、血に染まっていた呂布は振り向くとめんどくさそうに陶謙を見つめて、

「生かすのと殺すの、どっちの方が手間がかかる?」

「恐らくは殺すほうが面倒かと。」

「だったら生かしておけ。そんな奴殺す気にもならん。」

それだけで呂布は立ち去り喉もとの剣も退けられた。

陶謙の体から力が抜ける


殺すか生かすかでは殺す方が手間がかかる


それだけの理由で今生かされた自分


震える陶謙に男は語りかける。

「いいですか?あなたにはこの徐州の政務を担当していただきます。

 あなたは徐州の民を知り尽くしているでしょう。」

その言葉に必死に頷く陶謙。

よろしい、とただ一言いって立ち去る男は数歩歩いて立ち止まると振り向かずに

「分かっていると思いますが、我々の邪魔をすれば例え役にたつとしても殺しますから。」

男は歩き出した。


陶謙は男が見えなくなると、力なくうなだれた。


「陳宮・・これで良いのだな。」

呂布が男に聞く

「はい、これで我等は拠って立つ地を得ました。ここから南の袁術の組み曹操を抑え

 青州を得、力を蓄えた後エン州を襲い曹操を下し都へと向かう・・・

 そうすれば我等は天下をほぼ手中に出来ますでしょう。」

無言の呂布に男 陳宮は付け加える。

「もちろん、呂布殿の望む強者との戦いも望めます。」

「曹操とその配下、劉備とその義兄弟、孫堅に袁紹。数多の英雄豪傑と戦えましょう。」

その言葉に呂布はニヤリと口元を緩ませた。

「曹操、劉備、孫策、貴様らは乱を止め自らの天下を築こうとするのだろう・・・・

 ならば俺は乱を起こし貴様らに挑もう!英雄達よ!止められるか?

 この呂奉先とその軍団を!止められなければ天下は・・・

 俺が頂くことになるだろうな。」

ふはははははははははははははははははははは

高らかに笑う呂布の横で陳宮もまた笑っていた。

(天下で誰にも負けない武を持ちながらそれでも認めずに上を目指そうとする志・・・

 天下ではなく最強を目指す道のりで天下を統一する・・・

 くく、やはり私の目に間違いは無かった。

 野心で天下を取る曹操らよりも己の目標の為に天下を取る・・・

 この方が天下の為には良いのであろう。

 呂布殿の天下はこの陳宮めが必ずや導きましょうぞ。)


今、徐州の地より最強の武、飛将呂奉先の挑戦が始まった。




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