2.ガチャとフォーラムとフリーバトル
「これも使えない。あとこれも……。うーん、こいつも刀剣系スキルじゃない……」
「……見事にハズレって感じですね。SRは引けてるんですけど」
「ガチャ運悪いなぁ……。先週ミリカラで夢咲ノエルのSSR引いたからそこで運を使ってしまったのかも」
「なんでしたっけ。メンヘラ系でおっぱいの大きいアイドルでしたっけ」
「よく覚えてるなぁ。それ教えたのアクロステージの時だから2年前とかじゃなかった?」
「えっへん。ナギサ君が実は巨乳も好きだという情報はしっかり覚えています」
「ちょっ、それあんまり外で言わないで!?」
ANOのターミナルのロビーの片隅で、アクロスギアの画面を眺めながら唸り声をあげているナギサと、画面をのぞき込むソウハの姿があった。
今日はいつも隣にいる友人のシューマは、
「ミリカラのイベントの最終日だから最後に追い込みかけるわ。流石に最終日に余裕ぶちかましてたら俺以外の虫共にあっさり抜かれかねんからな」
ということらしく本日ANOには不参加である。
1回100Cで引けるスキルカードガチャ。それを試しに10連ほど引いてみたのだが、思うような結果が得られない。
ナギサの操るソウハの武器は刀剣。それを活かすためのスキルが中々手に入らない。ナギサは画面に表示されたスキルカードを見てハァ、と溜め息を吐く。
別にデーヴァの使用武器は後から変更が可能なのでどんな種類のスキルカードを引いたところで無駄になることはないのだが、刀が好きなのでやはりしばらくは刀で戦いたい。
ANOをプレイしてからまだ日が浅いので他の武器を購入するほどコインに余裕が無いというのもあるのだが。
――パワーエッジはもう持ってる。この“ドリルランサー”とかいうスキルは槍系スキルだから使えない。
おっ、この“スピンドル・カリバー”って名前のSRスキルは名前から考えると刀剣系スキルかな……ってなんだ!?“分類:ヨーヨー”って!?
前作に無かったぞヨーヨー武器なんか!?
うーん、武器の種類が多すぎる上にカードの種類もやたらと多すぎる……。前作からマジで増やしてるじゃねえか……。元々アクロステージもガチ勢じゃないから自分が使わないスキルのことなんて覚えきれてなかったのに……。
刀剣系スキルのSRが1試合に1回しか使えないレベルで再使用に時間がかかる上に、発動に少し溜めが必要な"ザンテツスラッシャー"しか持ってないのはちょっと困るんだが……。
余計なカードは全部売り払ってコインに変換するか……?と苦悩していると。
「フォーラム機能を介して交換出来ないか探してみれば?」
とソウハが言った。
「フォーラム?……ああ、ゲーム内の掲示板ね。そういえば最初にそんなこと言ってたっけ」
「……ちゃんとアクロスギアの機能を確認してないんですか?」
「あー……、うん。ごめん、あんまり。そうだな。今ちょっと覗いてみるか」
ギアのメニューから“フォーラム”をタップ。
すると様々なスレッドが立てられているのを確認した。雑談スレッド、スキルカード詳細確認スレッド、うちの相棒紹介スレッド、害悪プレイヤー晒しスレッド…………うわぁ、匿名掲示板と似たようなノリだ。
「フォーラムは現実世界でも確認が出来ますよ。…………あ、これですこれ。この”交換用スレッド”ってやつです」
言われるがまま交換用スレッドへと飛ぶ。するとそこには――。
出:サンダースピア
求:600コイン
備考:値下げ交渉無しでお願いします。
出:サンシャイン・アロー
求:銃系SRスキルならなんでも
備考:魔法攻撃対応の物だと嬉しいです。
出:召喚魔法“煉獄竜・アラバスター”
求:800000コイン
備考:ダブったので出品します。発動のために詠唱が必要ですが一度発動すれば強力なのでおススメです。ですが魔法ステータスが一定以上無いと発動自体が出来ないのでそこは注意を。
ずらりと並んだ交換希望の表示をナギサは眺める。希望者が出しているカードは名前の欄をタップすると詳細を確認することが出来た。
へー、こんなにスキルカードの種類ってあるんだなぁ……。前作で見たことある名前から知らないものまでいっぱいだ……。
凄い!SSRスキルがトレード希望に出されてる!ガチャからマジで全然出ないやつ!
そう思いながらつらつらと画面を眺める。おっ、刀剣系のRスキルだ。安く出してるから欲しいな。
あっ、この人コインと引き換えに槍系スキル募集してる。早速交換だ。
……ヨーヨー系スキル募集してる人がいる!
「全然ガチャから出ないので困っています」……ってことは結構レアなのか。
と、しばらくナギサはスキルカードの交換に時間を費やした。
そして数分後。ナギサのアクロスギアにはかなりの量のコインがプラスされ、新たなスキルカードもそこそこ集まっていた。早速手に入れたスキルをメインメニューからソウハにセットする。
「余ったカードもいっぱい売れたし色々交換も出来たな。新しいデッキも組めたし早速バトルに行かない?」
「いいですね。ごーごー」
◆
フリーバトルではANOのシステムによって実力がほぼ同じプレイヤーを自動的に選んでくれる。ナギサはバトルフィールド:採掘場跡地に立っていた。
広大なフィールドを囲うように崖となった石壁が広がっており、ジャリッ、と地面の砂を踏む音が辺りに響く。
そして向かい合うように立っていたのは――。
「あれ?確か……ナギサさん?」
「あれ、ミナミさん?」
それはログイン初日にターミナルで出会ったミナミという少女だった。服装は中央に星形のマークが描かれたシャツに赤いジャケットを羽織った姿になっている。ヒーロー番組の主役が着ていそうな服だ。
久しぶり――というほど大きく日が空いているわけでもないが、数日ぶりの再会に2人は顔を合わせて笑った。
「いっやー、まさか暇潰しにフリーバトルをやったらナギサさんに会えるなんて。これ終わったらフレンド申請いい?」
「こちらこそお願いするよ。あの時はお互い名乗っただけで終わっちゃったからね」
「そうそう、ナギサさんあの後のバトルどうだった?勝てた?」
「あー、うん。勝てたよ。結構ギリギリ、ね……」
勝てたからよかったけど向こうは完全に初心者を装った初心者狩りだったけどね――。というのは黙っておいた。
談笑する2人。だが風に吹かれて地面へと転がる砂利を見て、ようやく自分達がここに立っている意味を思い出した。そうだ、ここには戦いに来たのだった。2人は腰のホルダーから自身のアクロスギアを取り出した。
ミナミの物にはライトグリーンの色をしたカバーが取り付けられている。アクロスギアもスマホと同じでアクセサリーを付けるなどしてオシャレにできるのか、とナギサは新たな発見。
「さぁ、始めようかナギサさん!」
黒髪を揺らしながらミナミは身体を大きく動かしてアクロスギアを正面に構える。動きが一々活発な娘だなぁと思いながらナギサは彼女とは逆におとなしめの動作で自分のギアを構えた。




