プロローグ 『始まり』
最近まで色々な方の小説を読ませていただいていました。今回はアカウントを作り、初めての投稿となります。日々の生活もかなり忙しいくせに連載小説なんかやる自分はただの馬鹿だと自覚しています。これから不定期に更新されるのだ思い出したら見てみてください。宜しくお願いします。
『人間界』―― 平均気温25℃。生息生物は約750種類。
この平均的、かつ穏やかで過ごしやすい世界には一つの国が存在している。いや、『今は』と付け加えておこう。昔々は五つ存在していた、らしい。らしいというのも、昔のことすぎてまともな文献などが残っていないのだ。
しかし、なにの根拠もない昔話が一つだけある。
そうそれは、今から数千年も前のこと――
――昔々、人が住む世界の外に、光の種族が住む世界と、闇の種族が住む世界がありました。
二つの種族と人間は、平和な日々を過ごしていました。二つの種族は、人間に富を与えました。光の種族は豊かな自然を、闇の種族は大いなる魔を。しかし、二つの種族はある運命を背負っていました。それは、創造主が与えたどちらかが滅びなければ、二つの種族、両方が消える呪い…。
二つの種族の戦争が始まりました。その戦争に人間も巻き込まれまれ、地は歪み、山は燃え、海は消えさり、空は紅で染まり、五つの国は一つとなりました。いつからか、気づけば戦争は終わっていました。後に人々はこの戦争を、『聖戦』と呼びました――
誰が何の目的で広めた話かは不明だが、人々はこの話を信じる訳がない。むしろ信じてしまったことが他の人にバレたら、『頭がおかしい人』としてこれから生きていくことになるだろう。
ただ数人、疑問を投げかける者達がいた。
『ならなぜ、『人間界』と呼ぶのか』
それは昔、別の世界が存在したからではないのか?
この小学生でも思いつきそうな疑問だが、この疑問に答えようと何人もの大人が頭を悩ませたが、結論から言えば分かることはなっかた。
さて話が変わるが、そんな『人間界』にいる人たちの話をしよう。
実はというと、人間界はそんなに平和ではない。むしろ危険だ。では何がそんなに危険なのか?
盗賊?国内の抗争?それとも他種族との争い?いや全部違う!
この世界で最も危険なもの。それは魔を秘めた獣達だ。
・・・かっこよく言ったが、ようはあれだ、『魔獣』ってやつだ。
その魔獣、どこからともなく湧いてきて、度々人間を襲う事件が起きている。その規模は尋常ではない、
仮にライオン百頭が魔獣に襲いかかったとしよう、さてライオン達はどれくらい持つだろう?
答えは超簡単!一秒ももたない!
今から話す物語りは、そんな魔獣から人々を守る者達、『魔法士』の物語・・・。
ジリリリリリリリイリリリリ
静かな部屋に、時計の音が響き渡る。窓を開くと鳥たちが強く羽ばたく。かなり目覚めのいい朝だ。
毎日仕事で疲れて眠るので、こんな清々しい目覚めは最近ほとんど味わっていなかった。
そんなこんなで有給休暇の偉大さを噛み締めながら、俺は外へ向かった。
「ふあああああああ。よく寝た」
『人間界』に一つだけ存在する国、『ヲレッド』の女神の泉から東にある街、『アータル街』。
獣人族が住む『ネイト平原』に面したその街の北西、いくつもの住居が立ち並ぶ所に住む一人の魔法士。
誰であろう、俺、グローリオ=クラレントである。歳は十九歳、魔法士になって早三年。
所属は第四支部 サザンカ隊。婚約者無し。
日課は毎日朝の散歩。趣味は釣り。好物は怪鳥レパンドラの肉。愛称はレオだ、以後お見知りおきを。
「毎朝の散歩ねえ、あんたもよく飽きないはね」
俺に話かけてきたこの女、名をリラリア=アルマス。俺と同じく街の北西に住んでいる幼なじみ。
一応魔法士だ。俺と同じくサザンカ隊所属。歳は二十歳と俺より上だが、生まれた年は同じだ。
金髪金眼のリアは、かなり顔はととのっている、俺みたいな普通の顔の男とは釣り合わないぐらいに。
そんな彼女、リアは魔法士として働き始めたのは二年前。経歴上は俺の後輩ってことになる。
「うるせえ、お前もだろリア」
「そういやアイちゃんは?」
アイとは俺の妹である。俺やリアと同じように魔法士だが、所属が違う。妹はツクシ隊だ。
「あいつは昨日から遠征に行ってる」
「あ、そっか。大変だね」
この大変だね、は一度も遠征に行ったことがないから言えることだろう。遠征は各隊、三年に一度行われる。俺は所属し始めて二ヶ月目で味わった。あの地獄を味わったら大抵のことは我慢できる!・・・はず。
「んなこと言ってる暇ねーよ。俺らも来週からだろ」
そう、今年は行われる。名づけて『生きて帰って来れるかな?地獄の遠征七日間!(ポロリはないけど死に目は見るよ)。
「ま、そうだけどさ」
少し不満そうな顔をしてリナリアは言った。さてその不満な顔が絶望した顔に変わるのが楽しみだ。
いったいどんな面白い顔をするのやら。
「おやおやお二人さん、デートですかぁー?」
急に後ろから嘲るような声がした。俺のもうひとりの幼なじみ、パキラ=ラーグルフだ。
もうお分かりだと思うがこの男も魔法士、サザンカ隊所属である。
「何がデートだこらああああああああ!」
「おっと危ない危ない」
リナリアの渾身の拳はパキラを捉えることはできずに、その場で空回り、大胆に股を開いてこけた。
パンツが丸見え!と思ったが残念、リアの野郎短パンを履いていやがった。
「そういやリオの母さんと妹は今家にいないんだっけ?
確か昨日はリアがご飯を作ったって聞いたけど・・・。盛んだねえー」
ニタニタと笑いなが話をするパキラは、もうそのまま悪魔のようだ。てか悪魔だはこいつ。
「おいパキラ、お前は何を想像してんだ?」
「何って、男と女がすることって一つしかないでしょ!
男が×××を女の○○○に△△してえええええええええぇぇぇぇぇぇぇぇ――」
「さっさと死ね!」
地面から一気に起き上がり加速したリナリアの拳は見事にパキラのミゾを捉え、パキラは勢いよく吹き飛んでいった。
「おー、見事に吹き飛んでいったな。八十点てとこか」
「リオはなんで点数付けてんのよ!?もっとこう、焦りなさいよ!」
リアは赤面しながら言った。この時点でお気づきだろうと思うが、リアは恋愛ざたの話にめっぽう弱いのである。毎度毎度パキラにからかわれ赤面している。
「いや、焦れって言われてもな・・・。うわわわゎっゎっぁ、これでいいのか?」
「なっ・・・、あんたはもう!」
俺が半分、いや八割がたふざけてだした声は、自分でも笑うぐらい変な声だ。それに対してリアは、赤面したまま俺のことをポカポカ殴ってくる。
「うお、なんだ!?痛ッ、痛いって!何で殴るの!?」
リナリアがグローリオを殴る時の強さは、明らかにパキラを殴った時と差がある。ていうかありすぎる。
パキラは数十m吹き飛んだのに対し、グローリオは「痛ッ」で済む威力。不思議だ。
「あーいてててて、今日は八十点ってとこか?」
吹き飛ばされたパキラは、ミゾを抑えながら帰ってきた。数十m吹き飛んでも「いてててて」で済むのを考えると、パキラは明らかに防御力がおかしいと分かるだろう。というか数十m吹き飛ばすリアの力も大したものだ。
「なんで点数同じなのよ!」
「普段みてるから」「普段殴られてるから」
ほぼ同時のほぼ同じセリフに、リナリアは相変わらず真っ赤になった顔で俺達をみつめる。
「ぶふぉ、あーはははははははは」
パキラが耐えられずに吹き出したのに釣られて、俺も笑った。リアもその後に続いて。
そう、この騒がしさが俺達の日常、これから変わりなく続いていく・・・。そう思っていた。
だけど事件が起きた、そう、ちょうど一周間後に。
それは、歴史にも残るような大事件だった。