暖かい服
「おい!お前!主人様に対して何て態度だ!すみませんお客様、こいつは少し反抗的でして...」
「いえ、大丈夫です、それよりシャーリーはどのくらい此処に居たんですか?」
「だいたい一年といったところでしょうか、一年もいれば大抵のエルフは反抗しなくなるのですが...こいつだけはどうも頑固で...」
「アンタらクソみたいな人間の言いなりになりたくないのよ!」
シャーリーが突然声を出した、牢屋内のエルフ達も驚き、檻の向こうからシャーリーを見ていた、そして
「ご主人の前で何て事を!」
と言い、奴隷商人は長いムチの様な物を取り出し、シャーリーめがけて思いっきり振り下ろした
パァァン!!!と、激しい音が響き渡る
何故か身体が勝手に動いていた
「ご...ご主人.......?ど...どうして...」
俺はシャーリーを庇っていた
「いい、それより怪我はないか?」
周りのエルフも呆気にとられている、それもそうだ、普通は人間がエルフ奴隷を庇うことなんてありえないのだから
「お、お客様?大丈夫でしょうか?」
「いや、大丈夫です、それより、俺たちはここらへんで帰ります、ありがとうございました」
俺はシャーリーの手を引いて家に帰った
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人間が私を守ってくれた
あんな、ご飯もまともに食べさせてはくれない人間が、私をムチから守ってくれた
私はご主人と手を繋いで歩きながら考えていた
私を守る理由を、私を守る意味を、私を守る価値を
「ご....ご主人様」
「ん?何?」
「さっきは、何で私なんかの事を庇ってくださったのでしょうか?」
知りたい、私なんかを守った理由を
「んー、何か身体が勝手に動いてた感じ」
「そ...そうですか...ありがとう..ございました」
理由はなかったとしても、私を守ってくれた、この人は、他の人間とは違うのかもしれない
「...くしゅん!」
...それにしても寒い、外は風が強くて、布一枚では隠すところを隠していたら他に覆える場所なんて残っていない
「寒いのか?」
その声に、私は頷く
「分かった、そこのベンチで待っててくれ」
そう言うと、ご主人様はどこかに行ってしまった
その時、私は震えながら周りの光景を見ていた
私と同じ奴隷エルフだ、あるエルフはとても重そうな荷物をいくつも抱えていて、あるエルフは人間の食べ終わった動物の骨などにしゃぶりつき、エルフは裸で四つん這いになりながら首輪をされていた
...やっぱり人間は、私達のことなんて家畜以下にしか思ってない、今ご主人様が優しいのも、後でなにかに利用するためだ
そんなことをを考えていると、ご主人様が手に袋をもって早足で帰ってきた
「お待たせシャーリー、はい、これを着て」
と言って、ご主人様は袋の中からふわふわの暖かそうな服を取り出し、私に渡した
「ご..ご主人様...!こんな素晴らしいものは、いただけません!」
「いーから、風邪ひかれたら困るし」
「け...けど...」
私にこんな綺麗で暖かそうな服を着る資格なんてない、現に周りのエルフ奴隷は、布一枚でもいい方だ
「分かった、じゃあ命令だ、この服を着なさい」
と言って、ご主人様は私に無理やり服を着させた
...暖かい、服を着られることがこんなにも良い事だったなんて、奴隷になるまで分からなかった
「...ありがとうございます、ご主人様」
「ん、おーけー、じゃあ行こうか」
そうして、変わらずご主人様に手を引かれながら、私は歩き出した
続く