表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。

愛宕山に行こう

作者: 桂まゆ

日下部良介さまの「笑ホラ2017」参加作品。


 「愛宕山に登る」と言い出したのは、奈津美だった。

 「火廼要慎」のお札を、そう言えばもう何年も取り替えていないなどと言い出したのは、お祖父様で。それは、何年か前の「千日参り」の日にそのお祖父様が頂いて来たものなのだと。

 「愛宕山の千日参り」とは、7/31夜から8/1朝にかけてお詣りをすると千日は無事に過ごせるというものだ。残念ながら、その期間は過ぎてしまっているので、お盆休みに行くつもりだと。

「京都のお盆って言えば、大文字焼きだよね」

 そう言い出したのは、茉莉花。ちょっと、違う。

「送り火ね。五山の」

 京都では、有名な行事だ。8/16の夜に、五つの山に浮かび上がる、火の文字(あるいは記号)。お盆に帰って来た先祖の霊を送る、厳粛な炎の宴。「回転焼き」みたいな呼び方をされるのは、心外である。でも、言い直された事に気にしないのが茉莉花の良い所で。

「そう。それ、一度見たかったんだ。真由ちゃん、お盆は帰省するんでしょ? だったら、連れて行ってよ。その、愛宕山と大文字」

 そんなわけで、私たちはよりによってお盆に、京都観光をする事になったのだ。


 愛宕山には、阪急電車の嵐山駅からバスに乗って登山道まで行くのが多分、行きやすい。(というか、その方法しか知らない)

 そんなわけで、8/14の朝の8時頃にバスに乗り込む。

 そういえば、お盆だったと改めて思ったのは「化野あだしの」と呼ばれる場所に来た時。『野』とつく地名って、大抵は大昔に風葬・鳥葬が行われていた場所らしい。「化野念仏寺」は、とても素敵な心霊スポットだったりする。ただでさえ、ゾクゾクが止まらないというのに。

 そして、

「え? なに、これ」

 茉莉花が騒ぎ出したのは「清滝トンネル」。黙れと、言いたい。何か、連れて来たらどうするつもりかと。

 「清滝トンネル」もまた、とても素敵な心霊スポット。一車線の狭いトンネルで、信号があるのだけれども。

 着いた時に丁度青だと、霊界に繋がっていると言われていると、後で聞いた。そんな逸話がなくても、普通に怖い。ほの暗いトンネルギリギリの幅を、バスや車が行く。そして、人や自転車も同じ場所を通る。

 歩いている人が、本当に生きている人なのかどうかなんか、誰にも解らない。そんな場所だ。よりによって、お盆に来たい所では、決してない。

「大丈夫ですよ」

 くすっと笑って告げたのは、同乗していた、知らない誰か。

「人間だったら、ちゃんと影がありますからね」

しまった。愛宕さんにたどり着く前に、終ってしまった(苦笑)

しかも、笑い方が少し違う!(自爆)

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[一言] 「行こう」の「行こ」は未然形なので、愛宕山へたどり着くまえに話が終わっても全然オケーですヨ (ι´Д`) ナンテネ……。 京都にはまだまだ隠れた心霊スポットがありそうですネ。ぜひシリーズ化を…
[一言] 夏ホラーからお邪魔しました。 1000文字で冒頭の入りかたにまずビックリ。 この文字数でどうやって到着するのかと思わせて到着しないのが一番のギャグかも?
[良い点] 拝読しました。 人間だったら「足」じゃなく「影」がある。このセリフにまたいろいろと妄想して、ニマニマしました。 明日読むオオトリも楽しみです!
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ