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17.選んだのは年下の彼

ルシェルートへようこそ!

こちらはイオルがルシェとハッピーエンドを迎えるお話です。

「ルシェ……かな」


 イオルはポツリとその名前を口にした。


「へ~ルシェかぁ」


「……何よ。悪い?」


「ううん」


 リコルが瞳にからかいの色を宿すので、イオルは恥ずかしさから突っかかっていく。ひとしきりニヤニヤした後でリコルはようやく真面目な顔に戻った。


「ルシェのこと、好きなんだ?」


「それは……わかんない」


 イオルは頬をポッと赤く染めて俯く。


「でも……なんだか最近、ルシェと一緒にいるとドキドキするの。ルシェはあたしより3つも年下でズールと変わらない年齢なのに……」


「歳のことが気になるのか」


「気になるわよ、そりゃあ」


 はぁ、とため息を零した。


「まだ結婚もできない年齢なのよ?」


「うーん、まぁねぇ」


「それだけじゃない。ルシェはズールが勤めてるお家の人よ。ズールが『様』付けで呼ぶ相手とあたし……」


 イオルの声はどんどん小さくなり、肩も丸まって身体まで小さくなっていくようだった。


「だけど、そういう外的要因があっても、一緒にいるとドキドキするし、何かあった時に思い浮かべるのはルシェなんでしょう?」


「それは……そう、だけど」


「じゃあ余計なことは考えなくていいじゃない。イオルは難しく考えすぎよ。恋人になりたいか、なりたくないか、問題はそれだけでしょ?」


「うん……」


「まぁすぐに結論を出す必要はないんだから、ゆっくり考えればいいと思うけどね。じゃあひとまずベルロイのことはどうする?」


「断らなきゃ、って思ってる」


 はっきりとそう答える。


「それなら早い方がいいんじゃない?」


「うん、今行ってくる」


「頑張ってね、イオル」


 リコルは頷いてイオルを送り出した。


***


「ベルロイ」


 いつもの寮の裏手。鍛錬をしていたベルロイにイオルが声をかけた。


「やあ、イオル」


 ベルロイは鍛錬を中断して、その重そうな斧を立てかける。並んで座り、イオルを見ると神妙な顔をしていた。そんなイオルを見て一瞬だけベルロイは表情を引き締める。しかし、


「どうかした?」


 と、言葉を促した時には優しい笑顔に戻っていた。


「あ、あのね。告白の……こと、なんだけど」


「うん」


 続く言葉を言うのには勇気がいる。しかし、イオルは浅い呼吸を繰り返してから、


「ごめんなさい」


 と、はっきりと告げた。


「ベルロイのことは大切な……仲間、だと思ってる。だけど、恋愛の相手かと言われると……」


「そっか」


 イオルの言葉を遮ってそう呟くとベルロイは空を仰ぐ。


「ありがとう。ちゃんと伝えてくれて」


「うん……」


 伝えることは伝えられたイオルは身体の力を抜いて、俯いて地面をただ眺める。


「ルシェの告白を受け入れるのかな?」


「それは……まだわからない、けど」


「そっか」


 ベルロイはイオルに顔を向ける。


「応援はできない」


「……うん」


「でも、頑張って」


「……それを応援するって言うんじゃないの?」


「どうかな」


 くすりと笑ったベルロイを見て二人の空気が柔らかなものへと戻った。


「これからもよろしくね、イオル。仲間として」


「……うん、よろしく」


 ベルロイが差し出した右手をしっかりと左手で握って握手を交わす。二人はしっかりと見つめ合って笑い合う。


「それじゃあ俺は鍛錬の続きをしようかな」


「ごめんね、邪魔して」


「いいさ、おやすみ、イオル」


「おやすみなさい」


 肩の荷が降りたイオルは足取り軽く寮へと戻っていく。ベルロイは鍛錬を再開しようと斧を取る。そして、イオルの後ろ姿を見つめ、その背中が見えなくなるともう一度空を仰いだ。


「やっぱりダメだったか……」


 何かを我慢するようにぎゅっと目を瞑った。大きく息を吐き出してから鍛錬を再開させる。しかし、その振りはいつもよりも荒々しいものなのだった。



 ベルロイと別れたイオルはその足でルシェの部屋を訪ねる。


「イオルさん?」


 ルシェは驚いた顔をしながらもイオルを部屋に招き入れようとする。


「あ、いいの。さっきの返事をしにきただけだから」


「パーティの、ですか?」


「そう。行くわ」


「わかりました」


 ホッとしたように破顔した。


「パーティなんて行き慣れてないから上手くやれるか自信ないけど」


「パーティと言ってもホームパーティの延長のような会なので大丈夫ですよ」


「そう、ならいいけど」


 ルシェのことを意識していると自覚したイオルは近くで話すことに照れを感じてしまう。視線をキョロキョロと彷徨わせる。


「それじゃあ10日後、よろしくお願いします」


「わかったわ。それじゃあおやすみなさい」


 用件が済むとイオルは熱くなった頬を手で抑えながら自分の部屋へと戻って行った。

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