ロザリアさん紹介と出会い。
物語の主要人物の説明、及び出会いの話です。
プノさんの日常は大体決まっている。
起きて牧場に行った後、その後畑に行きそして帰る。何もなかったらそれらの仕事を終え、家路に帰る。
仕事の途中で村の皆とワイワイ話したり、村人の自分が鬼人だのオークだのの冗談(プノさんはそう捉えている)に笑ったり、一緒に仕事をしたり食事をしたり、まあ概そんな感じだ。
そんな村人の中で比較的新しく入ってきた2人の事を先ずは紹介しようと思う。
まず一人目はロザリア=マクウェイという女性吸血鬼だ。
まず最近の吸血鬼は血筋が薄まったのか、殆どの者は日の光が大丈夫なのに対して、彼女は未だ血筋を濃く受け継いでいるのか日光が苦手だ。(天気が悪ければ出てこれるらしいが...)
次に食事、これも最近の吸血鬼は普通に食事をするのだが、彼女の場合輸血用血液を食事にしている。
更に言うとニンニクも苦手だ。
本人曰く<あんな物凄い鼻の曲がりそうな物は嫌い>だそうだ。
次に流れる川、これは最近橋なら気合で渡れるようになったらしい、ただし渡りきった後物凄く気分が悪くなるらしい。
最近の吸血鬼は川で水浴びとかするという話である。
次に十字架、最近の吸血鬼はクリスチャンや神父になる者もいるらしいが彼女は(十字架を持った人間に酷い目にあわされたからトラウマが......ガクガク、ブルブル...)と震えて詳しくは聞けなかった。
次に銀製品。最近の魔族は別に何ともないのだが、彼女が触ると火傷を負ってしまう。
霧になれるらしいがあまりそれを好まない、ちなみに若いのはなれない。
これらの話から分かるように彼女は古い血筋を受け継ぐ吸血鬼であるらしい。
そんな彼女が何故こんなへんぴな場所にやってきたのか?
それを彼女に聞いてみると。
(そろそろ脛をかじって生きるんじゃなくて自立してみようかと...え?どれ位脛をかじってたのかって?聞かないで...)
との事。
どうやら結構お年のようで...あ、痛い!叩かないで!
「年の事は言うんじゃない!」
どうやら気にしているようだ...
そして、どうしてこの村にやってきたのか?どうやってプノさんに知り合ったのか聞いてみた。
「え?この村にどうして来たのかって?......そりゃ最近は王都とか色々な場所に私達の生活圏が拡大して、何処へでも行けて便利だけど...私は人の多い場所は苦手なのよ...あんまり外に出た事無かったから...」
引き篭もりだったんですね......痛!イタイイタイ痛いです!。
「アンタさっきから結構失礼よ!」
すいません。まあこれもインタビューなんで。
「......インタビューって言う感じしないんだけど?」
まあまあ、後どうやってプノさんと出合ったんですか?
「プノさんとの出会い?そうねぇ......」
そう言いながらロザリアさんは話し始めました。
その日は夏の暑い日で、私がある村へ行く日だった。
今まで色々な事を学んだけど、それは書物を見ているだけだった。
自分の家である城(Q城ですか? Aうん城だけど?何か?)で学んでいるだけでは駄目なのだと実際にやってみないと話しにならないと知り合いに言われたので一念復帰!親元を離れ一人で生活をして経験を積む事にした。
その時親に。
「辛くなったらいつでも帰ってきて良いからね?」「病気をしないようにな、後手紙はちゃんと出しておくれよ?」「大丈夫?貴女はやれば出来る子だから頑張って」「お嬢様やっぱり心配です。私が付いていきましょうか?」「こらこら、もうお嬢様は一人でやっていくと決めたんだろう?」
等と心配の声多数を言われながら、私は厚い曇り空の下(日光を直接浴びると私、灰になっちゃうしね)荷物をマジックバックに入れて家を出たのであった。
これからどんな生活が私を待ち受けるのだろうと考え、少しウキウキしながら待たせてあった馬車に乗り込んだのだった。
私が向かう先の村はここから馬車で一週間程だという事だ。
ちなみに、馬車は私から供給される魔力で走っており、御者は居ない。
1~3日目、何も変わった事は無く私は外の景色をのんびりと見つめていた。
......座り過ぎでお尻が痛くなったぐらいかな?
4~5日目、野党と遭遇。
この頃に天気がよくなってきてしまったので、森の中を移動して日光を避けながら移動した。
更に念を入れて日光疎外パックを全身に塗っておいた。
これで多少の時間なら日の光を浴びても大丈夫。
そしてそのまま森を走っていると何人かの魔族や獣人族、人族が集まった人相の悪い集団が現れた。
おー、あれが噂の野党ってやつね。初めて見たわ(わくわく)手に武器とか持ってるけど、身だしなみが汚いって思うだけで怖くとも何ともないわねぇ...ちょっとガッカリ。
「おうそこの奴!金目の物置いて立ち去れ!」
何子犬がきゃんきゃん喚いているのだろう?煩いなぁ...そう思って表に出て少し力を込めて腕を振りぬいたら皆吹き飛んでいった。
ついででそいつ等は途中にあった街の憲兵に突き出した。
あー、もう早く村に着いて一休みしたいんだけどなぁ。
ちなみに私の仕事は<薬師>である。
他にも出来る事はあるのだけれど、それが私が一番好きな職業で研究していた事であったからだ。
にしても...暑い...日焼け止めパックを塗ってフードを被っているのだけれど、この夏の暑さは私にとって死活問題だ。
早く村に行かなければ......暑さ対策に冷却石買っておこう......
6日目、干乾びそう......
暑い......魔力の消費はほ無いし、日光の光も馬車を締め切っているので大丈夫なんだけど...室内が無茶苦茶暑い!!あまりに暑いので町で買った冷却石使って馬車内を冷やした...はー...生き返った。
7日目、たーすーけーてー
もう少しだからって冷却石をあまり買わなかったのが仇になった...今この馬車の中はサウナ状態だ空は曇り空だけど......この湿気は引き篭もりの私にはキツい...更に言うと食事のパック入り血液も飲みすぎでもう無い、一応村までは自動で行くようにしてあるけど......もう少しこの馬車通気性良くしとくんだった。そんで血液ももう少し計画的に飲むんだったああああああ.........そうして私の意識は落ちていった。
「ん?何だ?馬車が村にやってきてる?」
そう言いながら近づいてくる馬車を村の入り口付近で見ているのはプノさんだ。
どうやら仕事に行く途中らしい。
馬車を見て佇んでいるプノさんの前に馬車は止まり、入り口らしき箇所がガチャと音を立てて開いた。
するとそこから物凄い湿気と熱量がプノさん目掛けて放出された。
「熱っ!!あつつつつ!!暑い!!何だこの暑さは!?」
プノさんは思わず馬車の入り口から退避した。
夏でなかったらその場から湯気が出そうな位の暑さだ。
暫くプノさんは馬車を見ていたが何の反応も無い事を確認すると、再び馬車の開いた入り口を確認し始めた。
「何でこんなに暑いんだこの馬車?まるでこの中サウナみたいだ」
そう言いながら手でパタパタと自分を仰ぎながら中の様子を確かめる。その後中に入ると、体中の毛穴という毛穴から一斉に大量の汗が吹き出てきた。
「おづうううううう!!......何だこの暑さ?下手したら死ねるぞ?」
誰が真夏の真っ只中に今日は曇り空とは言え、こんな事をしたのだろう?そう考えながらプノさんは馬車の中を確認する。
するとこの灼熱サウナの中で身なりのよい女性が倒れていた。
服装からして貴族であろうか?そんな人物が何故こんな中に??
色々分からない事だらけではあったが、兎に角この人を外へ連れ出さなくては。
女性の顔色を確認しようとうつ伏せであった彼女を仰向けにすると、滝のように流れる汗に濡れた綺麗な顔に白い素肌、白い髪があらわになる。
「綺麗な人だなぁ......」
その時、男の性で思わず胸や鎖骨の辺りを見てしまい、開いてた胸元に汗でベットリと張り付いた白いシャツの下で規則正しく上下を繰り返す魅惑的で大きな母性に目がいってしまったのは、成人男子としてしょうがない事だ。
プノさんは彼女を背中に抱えると、気をつけながら馬車から降りていく。
その途中で女性特有の香りがプノさんの嗅覚を刺激し、背中に汗で濡れた女性特有の豊かな膨らみが呼吸をする度自己主張し、耳元にはハァ、ハァ、と荒い呼吸が聞こえてきてプノさんは変な気分になりながらも強い忍耐力でそれを堪える。
後にプノさんは「あれは危なかった......」と独白している。
その後馬車の外に彼女を連れ出し、ゆっくりと仰向けにすると涼しくなって楽になったのか彼女の呼吸が規則正しくなる。
そして汗も幾分か引いていく、しかし彼女は汗で濡れたままだったのでプノは葛藤しつつ持っていたタオルで彼女の体を拭いてあげた。
その時プノさんは自分に言い聞かせる言い訳が半分と、柔らかかった感触が頭の大部分を占めていた。
まあ要するに余裕が無かった訳です。
拭いていた時偶然にも服に付いた金具に手が当たり、そこからほんの少し出血してしまった。
まあ、色々重なってしまった訳です。
そこから彼女の本能が目を覚ましてしまい、カッ!と赤い瞳を見開き本能のまま牙をプノさんの首筋に突き立てました。
そこから彼女は喉を潤す為にゴクリ、ゴクリ...とプノさんから赤い命の煌きを吸い取っていった訳です。
ああ、着いた早々問題を起こしちゃった訳ですね?
「うん......」
ちなみにこの時代の吸血鬼が、合意が無い上で血液を飲む事は犯罪になります。
「だからそんなつもりは無かったんだってば!!」
......まあ理由はともあれ、彼女はプノさんの血を飲んでハッ!と我に返ります。
「......ああああ、来た早々やっちゃったぁ...どうしよう?まさかこのまま逃げる訳にもいかないし...でも、眷属にしちゃったかもしれないし...どうしたら...?」
ロザリアさんは口元の血を拭うのも忘れて、尻餅をついたまま顔を真っ青にして涙目でオロオロと狼狽しています。
ちなみに、ここでの眷属とは、血を吸った主に絶対服従を強いる<無意識下の支配>です。
ちなみに血を吸う、という行為には別の意味合いも有るのですがそれは又いつか...
そんなロザリアさんの肩を、プノさんがガシッと掴みます。
「ひっ!」
自分の仕出かした事にロザリアさんは思わず悲鳴を上げました。
ですが...
「いやー、ビックリしたなぁいきなり噛み付いてくるんだもんビックリしたよー」
あれ?何か様子が違う??眷属にしたのならこう最初は「ご主人様」とか「マスター」とか言う筈だよね?
「あまりの暑さで混乱してたとは言え、噛み付かれるとは思わなかったよ」
そう言いながらニコニコとロザリアさんの方を見ます。
「え...?あの...?」
「馬車で来たから今日来る予定の薬師さんで良かったのかな?」
「ええ、そうですけど...あの大丈夫なんですか?」
「え?何が?」
そう言いながら首筋を手で触ると、ヌルっとしたものが手に付く。
「うわっ!こりゃ酷い、血だらけだ!」
そう言いながらプノさんは手ぬぐいを荷物から取り出し、それに水を浸して首筋を拭き始める。
するとどうだろう、その首筋にはロザリアさんが噛んだ筈の跡が無かったのです。
「えええええ!」
どういう事だろう?確か私は暑さにやられてこの人を噛んで血を吸ってしまった筈だ。
それともあの血の味は幻覚だったんだろうか?
いや、実際彼の手ぬぐいは血で染まっているし、それに私の口元にも......
そう思い出してロザリアは唇に残った血をぺロリ...と舐めた。
「(美味しい......)」
ロザリアは久々の生き血に感動した。この所トマトジュースだの、時間が経過した輸入血液だので済ませていたから美味しさと感動もひとしおだ。
「...じゃなくて!体は大丈夫なの?痛い箇所とかは無い?」
「はっはっは、これでも俺結構体は頑丈なんよ。心配してくれてありがとうね」
そう言いながらプノさんは自分の首筋を拭いた手ぬぐいの汚れていない部分で彼女の口元を拭って綺麗にする。
その時彼女は柄にもなくドキドキしたという。
そしてその後プノさんは唇に人差し指を添えながら。
「まああの暑さで頭がやられて噛み付いちゃっただけだし...俺が黙っておけばいいか、この事は内緒で」
「え?でっでも、怪我させちゃったのは私だし」
「あはははは、こんなのでいちいち腹を立ててたらきりが無いよ。じゃあ案内するから立って」
プノさんがそう言うとロザリアさんは魔術を解除して馬車を消します。
その時プノさんが「おー、これが魔法か」とか言ってます。
そしてその後立ち上がろうとしましたが......立とうとした途端に頭がフラフラし眩暈がし足元がフラフラしておぼつきません。
思わず倒れそうになる所をプノさんが胸で受け止めます。
「あー...こりゃまだ回復してないねぇ。仕方ない」
「え?」
プノさんはそう言うと、器用にその場でクルッと回りロザリアさんが背中に持たれかかった瞬間に彼女を背中に担ぎます。
「えええ?」
「このままおんぶしていくから、それまでは背中で休んでて...そう言えば名前聞いてなかったね」
「......ロザリアです。ロザリア=マクウェイ」
「そうか、いい名前だね。あ、荷物は後で俺が取りに来るよ」
そう言いながらプノさんは、ロザリアさんを抱えながら彼女がこれから生活する家へ歩き出す。
ロザリアはプノさんの背中の温かみを感じながらそのままうつら...うつらと船を漕いでいた。
まあ彼女が寝る前にプノさんが「背中に......いや!煩悩退散!......」と独り言を言っていたのだけれど。
彼女の心は心地よいドキドキに支配されて、それは聞こえないまま彼女は夢の中へ落ちていった。
「本当に......変な...人...ZZZZZZzzzzzz......」
...思ったより長くなった(汗)