この扉の先に魔王は居る
魔王の城に辿り着いた勇者は城の中を進んでいく。
道中に出会った魔物達を倒していき大きな扉に辿り着いた。
扉に手を翳そうとした時
「魔王様の所へは行かせません!!」
メイドの服着た魔物が突如現れ勇者に攻撃してきた。
「あまい!!」
しかし、勇者はこれを軽々と回避し反撃した。
「ッカハ!」
メイドは吹き飛ばされて壁に激突した。
敵の追撃がなくなり再び扉の前に立つ。
『・・・・・・・・・』
扉越しからでも伝わる。
この奥に魔王が居る。
勇者は大きく息を吸い込み
「魔王!貴様を倒し、この国に平和な世を訪れさせる!!」
剣を構えた。
『・・・・・・・・・』
「・・・・・・・・・」
『・・・・・・・・・・・・』
「・・・・・・・・・・・・」
『・・・・・・・・・・・・・・・』
「・・・・・・・・・・・・・・・」
『・・・・・・・・・・・・・・・60点だな』
「・・・五月蝿い」
扉の向こうからの聞こえてきた声に返答する。
『今日の台詞はかっこよくないな。昨日の方がまだ良かったぞ』
「しょうがないだろ。毎日考える身にもなれよ!」
『そんな事言われてもなぁ~・・・困るな・・・』
「困らんでいい。いいからこの扉をさっさと開けろよ!!」
『だから何度も言っているだろ。入りたければこの扉を壊せと』
「壊せないから言ってるんだろ!!」
勇者の怒鳴り声が響き渡る。
『・・・・・・そんなに怒るなよ。悪いのは余ではないのに・・・』
微かにだがすすり泣く音が聞えてくる。
「わ、悪かった。言い過ぎたから泣くのは止めてくれ」
『・・・・・・泣いて・・・ない』
そうは言うが鼻を啜る音が聞こえるんだがな・・・。
「魔王。扉を壊せって言ってもな・・・」
魔王に話しかけながら扉から距離をとり
「グングニル!!」
火・水・風・土・雷・光のそれぞれの魔法が合体し槍となった。
そしてその槍を扉に向かって投げる。
凄まじい音が響き渡り煙が辺りを覆う。
暫くすると煙が消えていき徐々に視界が良くなる。
扉は傷一つ付いていない。
「最強の魔法攻撃でもこれだもんなぁ~・・・」
『連続で撃ってみたらどうだ?』
「これ一回で全MP放出だ」
『そ、そうか・・・ごめん』
「いや、いいよ」
『「・・・ハァ~」』
同時にため息をつく。
「あら?また駄目でしたか?」
勇者の後ろから声がした。
その声の主は先ほどのメイドの服を着ていた魔物だった。
「ああ。多分駄目だと思う」
「それは残念でしたね」
「それよりも怪我はしてないか?思いっきり殴ってしまったから」
「大丈夫ですよ。こう見えて頑丈ですから」
優しい笑顔を勇者に向けた。
『む?その声はナルカか?』
扉の向こうに居る魔王がメイド服を着ている魔物の名前を呼んだ。
「はいそうですよ」
ナルカは返事を返した。
『意識を取り戻して早々すまないが何か食べ物を持ってきてくれないか?』
「はい。畏まりました。勇者様もどうですか?」
「いや、遠慮しておくよ」
「そうですか。では何かお飲み物を御持ち致します」
「気を使わなくていいよ。もう帰るしさ」
扉から去ろうとすると
『勇者』
「何だ。魔王」
魔王に呼び止められた。
『ナルカの入れるお茶は疲れを癒す薬草がブレンドされていて大変美味だぞ。さらにMPも回復する。どうせ明日も来るのだろう?今日の疲れは今日の内に取っておいた方がいいぞ。・・・どうする?』
「・・・どうしますか?勇者様」
「・・・・・・お願いします」
ナルカはクスリと笑い。
「はい」
と言い食事とお茶の用意をしに行った。
『素直でよろしい』
「黙れ。明日こそは必ずこの扉を突破して貴様を倒してやる」
『その台詞昨日も言っていたぞ』
「う、うるさい!明日は絶対突破するからな!!」
『フフ・・・楽しみにしておこう』
暫くするとナルカが食事(二人分)とお茶を持ってきてくれた。
勇者は結局ご馳走になり、さらにナルカが「今日は泊まっていきませんか」と言ってきたが丁重に断り
魔王の城のすぐ傍に設けたテント(自室)へと帰って行った。
その道中勇者に倒されたはずの魔物達に挨拶をしながら。
「勇者今日も駄目だったのか!」
「ああ。また明日挑戦する。怪我は大丈夫か?」
「これくらいカスリ傷だ。明日も覚悟しておけよ」
「ハハハ。お前等に負けるはずないだろ」
こんな感じで道中の魔物達と会話をしながら戻っていった。
自室に辿り着くと勇者は寝転がった。
「・・・・・・・・・」
何で俺普通に魔物と会話してるんだ?
最初はこんなんではなかったのに・・・。
ここに来てもう1ヶ月・・・。
早く終わらせたい・・・。
そう願いながら勇者は明日に備えて眠りについた。
思いつきで書いてみました。後悔は・・・してないです。