ムーンライトながらの旅 その4 (沼津~横浜~品川)
最近、感想で「自分もいつかムーンライトながらに乗りたい」と書いてくださった方がいてとても感動しました。
更新は遅めですがこれからも「レールウェイボーイズ」をよろしくお願いします。
「おはようございます。この列車はまもなく定刻通りに横浜に到着する予定です。」
僕は朝のモーニングコール(ムーンライトながらでは横浜駅に着く前に車内放送が再開する)で目覚めた。しかし、朝と言っても冬の4時半過ぎ。まだ外は真っ暗だ。
「コクテツ、もう関東に入ったぞ。」
僕は手に何か持ったまま寝ているコクテツを起こした。手に彼の自作の「鉄道手帳」なるものを持っている。彼はこの手帳をいつも肌身離さず持っている。
「ふあぁ。寝ちまった。せっかく手帳に列車の様子を書き残してたのに。」
「コクテツってそういうところ結構マメだよね。そういうの僕は書こうと思わないなあ。」
「まあ、旅の臨場感っていうか、その時の気持ちを書き残しておきたいから書いてるんだけどね。」
「へえ、コクテツも結構ロマンチストだな。ちょっと見せてよ。」
「タマデンなら分かってくれそうだし、いいよ。」
そう言ってコクテツは自分の手帳を見せてくれた。
手帳には{185系は6両と4両の車両が連結した編成だった。}とか{途中EF66の初期塗装車とすれ違った。}とか{サンライズエクスプレスを見逃した。}など専門的なことが多く書かれていたが、{前の席の高校生が僕の知らない列車のスジを持っていて感動した。}とか{東京からの帰りは二階建てグリーン車に乗ろうとタマデンが言った。}などちゃんと旅の中の会話についても書いてあったので少し感心した。
「もう、いいかい。」
とコクテツが少し照れくさそうに言った。
「おう、結構書き込んであるな。」
「まあね。」
とコクテツは少し誇らしげに言った。
横浜駅に着くと降りる人が何人もいてその中にはあの高校生もいた。
「オレはこれから鶴見線に乗って貨物列車を撮りに行くんや。短い間だったけど楽しかったで。」
「僕も知らない列車のスジを教えてもらえて勉強になりました。」
コクテツは名残り惜しそうに言った。
「僕らもその鶴見線に乗りたいんですがオススメの場所とかありますか?」
僕は高校生の彼が行く所なので旅情がありそうだと思って聞いてみた。
「そやなあ。海芝浦駅っちゅうところがあってそこから見える海の景色が最高らしいで。」
「分かりました。海芝浦駅ですね。行ってみます。ではお気をつけて。」
「ああ、おおきに。」
そう言って高校生と別れた。
こういう旅の中の出会いと別れって旅情を感じるなあ。コクテツも手帳に{高校生に海芝浦駅を勧められた。絶対行ってみたい。}と書いているのが見えた。コクテツも旅情をつかんできたようだ。
横浜駅を発車し、時々京浜東北線らしき通勤電車が通り過ぎるのが見える。都会の朝は早いと感じた。
郊外へ行く下り列車の方に顔を赤らめたサラリーマンが多く乗っていた。どうやら彼らは今日から年末年始の休みのようで、始発まで呑んで今家路につくところらしい。
「お勤めご苦労様です。」
そして、多摩川の橋りょうを渡り、ついに東京都へ入った。大きなビルの明かりがたくさん見えてきた。
「コクテツ、ついに東京に来たぞ。」
「そうだね。でも僕にとったら上京だけどタマデンにとっては帰京、いや帰郷か。」
「読みはどっちも一緒だけどね。」
そう、コクテツの言う通りだ。僕にとったら東京に来たというより帰って来たの方が正しい。これから海芝浦駅に行って、僕の故郷の汐留市に行くのだ。
緑の帯を巻いたステンレスの車両が見えてきた。山手線だ。
「おお、山手線だ。6ドア車(一両の片側にドアが6か所ある車両)は無くなってるな。ホームドアが出来てきたんだな。」
僕は久しぶりに山手線を見てその変化に少し驚いた。
「そう言えば僕がタマデンと初めて話した時、山手線のホームドアの話をしたよな。」
「そうだったな。もう三年も前かあ。時が経つのは早いな。」
「タマデン、お年寄りっぽいこと言ってるぞ。」
僕らがそんな会話をしているうちに列車は定刻通り、4時57分に品川駅に到着した。
ついに東京都に入りました。
僕も「ながら」に初めて乗ったとき新幹線とは違う上京感があって胸が高鳴ったのを覚えています。
当時中学二年生ながら、これが「旅情」なのかとしみじみと感じました。




