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レールウェイボーイズ  作者: 王將 モリオ
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ムーンライトながらの旅 その2 (浜松~静岡)

旅。

僕は鉄道のことより旅をすることの方が好きだ。

コクテツは列車の形式や歴史を調べるのが好きなようだが僕はそちらの方にはあまり興味が無い。

何といっても旅の旅情を味わうことが僕が一番好きなことだ。

そんなことを考えていた時、ベージュとワインレッドの列車とすれ違った。サンライズエクスプレス(東京~出雲市・高松へ行く夜行列車。夜行列車は客車が多いがこの列車は電車なのが特徴)である。

「おっ。コクテツ。サンライズが通ったぞ。あの乗客たち、出雲大社にお詣りしに行くんだろうか。」

「行くんだろうか、じゃないよ。通過した瞬間に教えてくれよ。撮り損ねちゃったじゃないか。」

「おいおい、車内では写真撮るなって言っただろ。マナーは守れ。旅情が崩れる。」

「タマデンはすぐ「旅情」って言うよな。」

「もちろん。だって僕は鉄道マニアと言うより旅マニアですから。」

「ロマンチストの間違いじゃないか?」

「そりゃロマンは感じるけど女々しい感じの「ロマン」ではないから。」

おとこの浪漫ってやつか。」

「そう!そういう感じの「浪漫」だよ。」

やっとコクテツに僕の考え方が伝わっただろうか。まあ、すぐ忘れるか。コクテツは自分のことで精いっぱいだからな。

よく野球とかのスポーツに人生を懸ける人がいるが、コクテツはまさにそれの鉄道版だ。鉄道に人生投げ打ってると言っても過言じゃないだろう。マナーは悪いが鉄道への愛は誰にも負けないんじゃないだろうか。

そんなことを考えているうちに僕は寝てしまった。車輪が軽快にレールを刻む音が良い子守唄になる。

「コトトン、コトトン」

(列車の中で一晩過ごすなんて最高だな。)

そんなことを思いながら眠りについた。しかし、僕の至福の睡眠時間はそう長くは続かなかった。

「おい、タマデン、起きろ。」

「ふぁあ。なんだよ、急に。気持ちよく寝てたのに。」

「スーパーレールカーゴ(貨物列車だが、機関車が貨車を引っ張るのではなく電車のように編成の両側に運転台が付いていて速度が速いのが特徴)がもうすぐすれ違うみたいだぞ。」

「どっからその情報入手したんだ?」

「前のシートの高校生が貨物列車のスジ(時刻表をグラフのようにしたもの。一般にはダイヤグラムという)持ってて知ってたんだよ。もうすぐ見れるらしい。」

「カメラは出すなよ。」

「分かってるって。」

二人で窓にへばりついていると明るいヘッドライトが見えてきた。

「あれだ。」

コクテツがわくわくした調子で言った。

青い車体に専用の銀と青コンテナを積んでいる。まるで青い流星のようだ。

「かっけ~。」

と思わず言ってしまった。僕はあまり貨物列車には興味無い。しかし、今のは一瞬すれ違っただけだがかっこいいと思ってしまった。やはり僕も鉄道マニアなのか。

それから僕とコクテツは前の高校生と少し談笑した。大阪から来たらしくとてもしゃべり上手だった。こういう一期一会も旅情を感じる。

そのあと静岡駅に着き、発車して何十分か経ったがさっきの興奮で眠れなかった。

「スーパーレールカーゴ、かっこよかったな。」

とついコクテツに言ってしまった。するとコクテツは、

「やっと僕の考え方を分かってくれたか。」

と言った。

やっぱり考え方を共感できるって素晴らしいことなんだな。僕はしみじみそう思った。

ムーンライトながら号は深夜の東海道を走り抜ける。

この物語は取材を元にして書いていますが列車の通過時間は間違っている可能性があるのでご承知下さい。

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