表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
レールウェイボーイズ  作者: 王將 モリオ
1/5

ムーンライトながらの旅 その1 (豊橋~浜松)

どうも。王將おうしょうモリオです。

この作品は完全に僕の趣味です。

「汐留中学探偵部」で鉄道ファンのカイジを出しましたがちょっと物足りないと思って、どっぷり鉄道の話を書こうと思いました。

実際に取材をしてから書いているので更新は遅めですがよろしくお願いします。

ある冬の日の豊橋駅。路面電車の終電ももう出てしまった。飲み会帰りのサラリーマンが千鳥足で歩いている。中二には肩身が狭い。そんな時刻の0時18分。僕らはそれに乗った。

ムーンライトながら。大垣~東京間を走る鉄道ファンの間では有名な列車だ。特に僕ら18キッパーには。(18キッパーとは青春18きっぷを使いこなす人のことである。)一か月前に指定席券を取っておかないとすぐに完売してしまうといわれているので、僕も一か月前に学校が終わってから急いで買いに行ったが上り列車はまだ余裕があったのであいつと隣同士の席をとれた。

あいつ、とは今回旅を共にするコクテツという奴だ。尤もコクテツとはあだ名で僕が勝手に付けた。彼と話をすると必ず、「コクテツ型は…」とか「コクテツ時代は…」と言うのでコクテツと呼んでいる。さっきまで路面電車をパシャパシャとカメラで撮っていた。お互い鉄道ファンなのだが同業者から見てもがっつき具合が半端なくて一緒にいると少々恥ずかしくなる。だがそういう恥を知らないコクテツの姿勢に憧れる自分もいるが理性と羞恥心が心に黄色信号を送る。

「おい、コクテツ。185系だぞ。これはいつの車両だ。」

「国鉄時代に決まってるでしょ。あまぎや踊り子、草津で有名なんだよ。江戸っ子の君なら見覚えあるんじゃないかい?タマデン。」

タマデンとはコクテツが呼ぶ僕のあだ名だ。僕はちょうど3年前、小5の冬に家の事情で東京の汐留市というところから愛知県に引っ越してきた。初めて会ったとき

「君は汐留市から来たんだって!?じゃあ玉電(ここでは東急世田谷線のこと)が走ってるとこだよね!ね!」

「いや、それは隣の世田谷区っていうところで…」

「君は玉電に乗ったことあるのかい?」

「まあ、何回かはあるけど…。」

「じゃあ君のあだ名はタマデンでいいかい?」

「え、まあ。」

「よろしく、タマデン。東京の列車のこと教えてくれないかい?」

「や、別に僕、鉄道オタクじゃないし。」

「山手線にホームドアがあるって本当?」

「え…」

というやりとりがあり僕はやむなくタマデンと呼ばれ、彼の影響で鉄道ファンになってしまった。

今回は僕の故郷へ行くための旅だ。しかしコクテツの方がテンションが高い。

「すごいや。東日本の車両が愛知県内で乗れるなんて。」

「コクテツ。車内では静かにしろ。一応夜行列車なんだから。」

「あ、ごめん。」

しかしコクテツの興奮は収まらない。

「ちょっと車両のプレート見てくる。」

と言ってどたどたとデッキの方へ走って行ってしまった。

「おい、君!うるさいぞ!」

「あ、すいません。」

言わんこっちゃない。発車からまだ2分しか経ってないのに。

列車はスピードを上げて夜の町がぐんぐん流れていく。なんだか気持ちが切なくなる。

「これが旅情というやつか…。」

30分もすると浜名湖を通り過ぎ浜松駅に着いた。するとさっき戻ったばかりのコクテツはデジカメを取り出して

「ここの停車時間ちょっとあるから列車の先頭撮ってくる。」

と言ってまた席を立って行ってしまった。他の乗客もコクテツと同じように外に出ていく。後ろの座席の父子の父の方が一眼レフを持ってホームへ走って行った。

やれやれ、いい歳して息子そっちのけで列車撮りに行くなんて。こういう大人にはなりたくない。まだ小学校に入るか入らないかの子にこの列車はハードだと思うんだが。それにこの子、妙に顔が赤いな。風邪でもひいてるんじゃないか?だとしたらけしからん親だ。

その時

「坊や、大丈夫かい。お父さんが帰って来るまでこれでもなめてなさい。」

とその子の隣のボックスに座っていた老夫婦の奥さんが状況を察してのど飴を渡した。

「…ありがとう。」

男の子は嬉しそうに飴をなめていた。

僕はこのやりとりにとても感動した。あの子の父に対する怒りも吹っ飛ぶくらいだった。これもまた旅情かな。

「前の表示幕、臨時快速になってたぞ。」

コクテツが満足そうにデジカメの画面を見せてくる。そのころ後ろの席では、

「ほら、売店でのど飴と冷えピタ買ってきたから辛抱しろよ。」

「だいじょうぶ。ボク電車好きだからがまんできるよ。」

「えらいな。だがな電車じゃなくて列車と呼べよ。」

「うん。列車大好き。」

なるほど。父親は息子のために走って売店に行ってたんだな。どんだ誤解をしていたようだ。息子もいい子だな。ちゃんと列車って訂正されても列車って言うし、あの父親にとったら最高の息子だろうな。僕もいつか息子と旅をしてみたいな。

ムーンライトながら号は夜の帳の中を貫いて行く。

更新は月に2,3回位になると思います。

「探偵部」シリーズもよろしくお願いします。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ