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ポイント入ってるもの

馬鹿にしかできない教師

作者: 末吉

なんか思いついてしまったものです。

 ここはとある高等学校。

 特徴らしい特徴が何一つなかったこの学校だが、ある教師が赴任してきてから変わり始めた。


 その名は唐松ブレイ。身長は百七十八センチでボロボロの白衣をまとって眠たそうに毎日学校にいる、とあるクラスの担任になった二十七歳男独身教師である。

 髪はぼさぼさで寝癖を気にせず、毎日毎日だるそうに生きている彼だが、それには訳がある。


 全ての物がバカにしか見えないのだ。


 そこには一切の例外などない。見えている限り『なんでこんなのあるの? 作った奴バカじゃね?』などという気持ちが生まれるのだ。

 無論、子供の頃からそうだったわけではない。彼が世の中をそう見えるようになったのは、中学校の頃だ。


 中学二年の頃、彼は何気なく立ち寄ったリサイクルショップ等で見かけた面白そうなタイトルの本を適当に数冊買って家に帰って読むことが習慣化されていた。

 部活に入っていない彼は、色々と忙しくなっている時期に、一人だけ時間を持て余していたのだ。

 その日も帰り道に適当に見つけた古本屋に立ち寄って、面白い本ねぇかなぁと思いながら探していた。

 しかし目当てのモノはなかなか見当たらず、こりゃハズレの店引いたかぁ? と思い始めた時、一冊の本が目に留まった。

 題名は分からない。日本語でさえちゃんとした使い方が怪しい彼が、それ以外の言語を覚えてるわけがなかった。

 本来ならスルーするのだったが、この時ばかりは目を奪われた。その本の、圧倒的存在感に。

 ざっと見のページ数は百ページぐらい。しかも大分時間が経っているのか痛みがひどく、他の本の間にすっぽりと埋まっていて見つけにくい。

 にもかかわらず、その本は『俺を見てみろ』と言わんばかりに圧を放っていた。

 吸い寄せられるようにその本まで近づき、そのまま手に取り、気付いたら買っていた。

 二百円で買えたその本を鞄に入れた彼は、そのまま寄り道もせずに一刻も早く読みたいがために走って家へ帰った。

 家に戻った彼は自室へ戻り、はやる気持ちを抑えつつその本を開いた、その瞬間。

『――ようこそ、救世主』

 その言葉とともに、彼は光に包まれた。



「…………なんでモノローグなんてあるのかね。邪魔なだけだろ」

 片肘を突きながら空を眺めてそんなことを呟く男――唐松ブレイ。

 今の彼は教師という立場の中きっちりと授業を――――

「先生! いい加減面倒くさがらずに授業やってください!!」

 授業を――

「今は先生の数学じゃないですか!」

「なんでお前らそうやって叫べるの? エネルギーの無駄じゃん。それに、将来あんまり必要のないんだから教えなくてもいいだろ」

 ――――――していなかった。

 彼の担当科目は数学。そして、今教えているのは彼の担任である3-Aである。

 彼らは受験という壁を乗り越えるため授業を受けているのだが、ブレイが一切教える気がなかったため毎度抗議している。

 しかしながらブレイ本人は口八丁手八丁でその抗議を全部押さえ込んでいるため、いまだに彼はちゃんとした授業をしていない。

 と、ここでブレイが生徒たちの方を見て言った。

「数学なんて今までの復習をやって、微分と積分やれば大体の点数採れるから教える必要ないだろ」

「分からないところはどうするんだよ!?」

「他の先生に訊け。それか諦めろ」

「「「この教師最悪だ!」」」

 もうブーイングの嵐。しかしながら、誰もブレイの事をそれ以上非難することはなかった。

 反面教師になっているから……というのもあるが、彼に悩みを解決してもらった恩もあり――――。

「~~うっせぇなお前ら。そんなに勉強したいなら……」

 そう言って黒板に書きだしていくブレイ。

 左から右へサラサラと書かれていく数式の列を呆然と見ている生徒達。

 わずか三分くらいで右端まで書いたブレイは、手に付いたチョークを払い落としながら言った。

「これを残りの時間いっぱいまで解いてみろ。ちゃんと途中の計算式を書きながらな」

 ――――とてつもなく頼りになる先生だと、全員が認識しているからだ。


 授業が終わり。

「さっきの奴出来たら俺のところ持って来いよー……って、全員机に突っ伏してやがる」

 残り時間をのんびりとしていたブレイが呼びかけた時、すでに全員が頭を突っ伏しており、誰も起き上ってこない。

 頭をガシガシと掻きながら「次の授業がんばれ」と言い残し、彼は教室を出て行った。


「……しかし馬鹿な奴らだよなぁ。あんな問題解かんでも、自習すればいいだけなのに」

「あんな問題とはどういう事ですか、唐松先生」

 頭の後ろで腕を組んでそんなことを呟きながら歩いていると、後ろからそんな女性の声が聞こえた。

 しかしながら彼は振り返りもせず、歩きながら「教室見れば分かるから聞かないでくださいよ、まったく」と言った。

 面倒な上にどことなくバカにした口調で言う彼。だがその女性は全く動じておらず、むしろため息をついてこう言った。

ブレイ(・・・)。あなたは私の契約者(コマンダー)なんですから説明してくれてもいいのでは?」

 それに対しブレイは歩みを止め、思いっきり嫌そうな顔を女性に向けて言う。

「はぁ? いきなりここに拉致った挙句、無理矢理永住させるような契約結ばせたお前に説明する気なんてサラサラねぇよ。何度も言わすな、頭沸いてるのか?」

「それは悪かったと何度も謝ってるじゃないですか! だからこうして契約解除の方法を探る一環として教師をやっているんじゃないですか!!」

「テメェの人脈のなさのせいで思いっきり関係ないところでやってるけどな、教師!」

「うっ!」

 止めともいえる一言を受け地に沈む女性。

 対し彼は終わったとばかりに再び向き直って歩きながら「どうせ授業ないから昼食べるか、昼」と呟いた。


「っと、先客がいたか……場所変えよ」

「ちょっ」

 弁当を持った彼が食堂へ向かったところ人がいたのですぐさま方向転換し、それを見た男性は慌てて呼び止めた。

「待てよブレイ!」

「一緒に食事しろとか何言ってるの? 一緒に飛ばされただけで仲良しな関係じゃないだろうに」

「同郷の好だ!」

「無理無理。熱血男嫌いだし、俺」

「俺の『代償』知ってるくせに」

「だから?」

 そう言うとブレイはそのまま食堂を出ようとし

「ブレイーー!!」

「アホらし」

「妾とギャッ!」

 飛びつこうとしてきた小柄な女性を蹴りあげた。

「……相変わらず容赦ないな、お前」

「お前の契約者位しっかり管理しておけよ」

「~~~~!!」

 毎度の光景ながら驚きを隠さないでいる男性の言葉を無視し、また、壁に突き刺さっている先程の女性を無視して今度こそ食堂を出ることにした。


「……ここが一番落ち着く」

 そのまま校舎裏まで来たブレイは、地面で胡坐をかきながらその足に弁当箱を広げ、昼食をとり始めた。

 辺りに広がるは影と木々のみ。人の気配を感じさせない場所ゆえ、彼は割と好きだった。

「まぁだからといって俺の『代償』はどうしようもないんだがな……」

 そう言って彼は左腕を水平にあげ手を握る。

 すると、パァン! と空気が鳴り響き、後ろの校舎の壁が凹んだ。

「ったく。こんなもの必要ないだろ。救世主すらバカにできるこの俺に」

 ハァッとため息をつきながら弁当を食べ進めるブレイ。凹ました壁に対する罪悪感などなく、心底やってられないという気持ちだけだった。

「何を暗い顔してるのですか?」

「……なんでお前は話し掛けてくるのかね? 毎度毎度泣いて逃げかえるくせに。もしかしなくてもサル以下の記憶力?」

「んなわけあるかぁ! あんたが延々とバカにしてくるから話もできないだけだぁ!!」

「まぁ見た目太ってるお前さんはそうやって怒鳴ると痩せるだろうけど、俺からしたらうるさいしか感じない」

「っく! そうやってまた私の事を肥ってる扱いして……!!」

 プルプルと両拳を握りしめながら俯いてつぶやく少女。彼女は、ブレイが昼食を食べ終えたのを見計らって話しかけてきた。

「私はそんなに太ってないわよ!」

「まだそのネタ引っ張る? 意味もない努力続けるねェ」

「うわぁぁぁぁん!!」

「また逃げ帰ったよ……懲りない奴だな、まったく」

 逃げた少女を見送らず、空を眺めながら彼はしみじみ呟いた。







 放課後。

 居残り作業などやり残した奴が悪いというスタンスの彼は、やることを完全に終わらして意気揚々と帰ろうとしたのだが。

「あ、ブレイ先生。学園長がお呼びです」

「……あの爺さん、マジ俺に恨みでもあるの? 他の奴らでもいいじゃん」

「いや、それを言われましても」

 他の先生に呼び止められ、不機嫌そうに職員室を出た。

「あ、先生。なんか機嫌悪いっすね」

「分かるなら言うなよお前」

「いや、ちょっと提出したくて来たんですけどね」

「なら明日な」

 そう言って別れ歩いていくこと二分。

「こら爺開けやがれ。呼び出した本人が開けねぇとかどういう了見だ」

『それは暴論じゃろ?』

「ならこの部屋壊されるのと開けるのどっちがいい?」

『……』

 軽く脅したところ簡単に向こうから開けてくれた。

 ニヤリと笑いながら、ブレイは開けた本人――学園長に質問した。

「なぁ爺。なんで俺ばかり『仕事』が回ってくるんだ? 誰だろうが真っ先にバカにするこんな俺に」

 対し学園長は「偏にお主の能力の高さじゃろ」と言って自分の席へ戻った。

「まず『内容』は?」

 部屋の扉を閉めたブレイはすぐさま学園長に確認した。

 すると彼は黙って本を投げてきた。

 受け取ったブレイはペラペラを本をめくると、急に顔をしかめた。

「これ作った奴死ね」

「余程嫌なんじゃな」

「当たり前だ。何が悲しくて俺が元居た国(・・・・)で仕事しなくちゃいけない。またここに戻るのだから、完全に面倒じゃねぇか」

「でも帰れるんじゃぞ、一時的とはいえ」

「一時的じゃねぇんだよ。永久的に帰りたいんだよ。はっきり言って拉致事件で訴訟を起こさなかっただけましだと思えクソ」

「……罵倒で締めるとは」

 頭を抱える学園長に、ブレイは本を投げ返し、ぶつけた。

「イタッ!」

「うっせ馬鹿野郎。テメェのせいでロクでもねェ人生になりやがったんだ。さっさと往生しろ」

 そう言うと彼は背を向け、そのまま部屋を出た。















『救援依頼:スカウズの撃退協力

 依頼者:鴨川将也

 指名:唐松無礼


 内容:お前が姿を消して十年ぐらいたっているが、その間こっちも随分変わった。積もる話もあるが、教師をやりながら侵略者であるスカウズを倒すのを手伝ってほしい。


 場所:地球――日本』




























さぁ短編しか最近書いてませんしハーメルンに出没してますが、更新は頑張ります。

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