表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
悪役令嬢に転生したら隣国の軍師が石田三成だった件  作者: しげみち みり


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

9/12

第9話 雷鳴の裁き

 予告どおり、雷は落ちた。

 ある朝、学園の鐘が重々しく鳴り響き、全生徒に緊急召集がかかった。

 大講堂の中央には裁きの壇が設えられ、王太子レオンハルトが玉座のごとき椅子に座していた。


「本日ここに、セシリア・ド・ルーベンを糾弾する!」


 その声は、稲妻のように場を震わせた。

 観衆の生徒たちがざわめき、恐れと期待をないまぜにした視線を私へ注ぐ。


 壇上に引き出された私は、深く一礼して扇を開いた。

 王太子の背後には、公爵夫人や取り巻きが並び、いかにも「勝利の裁き」を確信している様子だ。


「セシリア、お前は数々の非行を繰り返した。学園での不正、密偵の利用、そして――隣国の軍師と通じ、王国を危うくしている!」


 ざわめきが爆発した。

 ――そう来たか。私と三成の関係を「国家反逆」と結びつけるつもりなのだ。

 これこそ、雷の一撃。証拠も理屈も不要。ただ「裁く」という王太子の力による断罪。


 だが、私は怯まなかった。

 扇を静かに閉じ、声を張る。


「殿下。雷は一瞬の光でございます。けれど――証拠という大地に落ちなければ、ただの幻に過ぎません」


 場がざわめいたその時。

 観客席から灰色の瞳が立ち上がる。

 石田三成。


「殿下。貴方は先に“事実確認を行う”と誓われた。

 ならば、いま問います。セシリア嬢が密偵を利用したという証拠は――どこにあるのですか?」


 彼の声は冷ややかで、稲妻を鎮める雨のようだった。

 王太子は一瞬言葉に詰まり、取り巻きへと視線を送る。


 だが、公爵夫人は青ざめた顔で首を振るしかなかった。

 証拠など――存在しない。


 私はその隙を逃さず、一歩前に踏み出す。


「殿下。もし私が無実であると立証されたなら、王国の名誉を傷つけるのは――証拠なき糾弾を行った側です」


 雷鳴が逆流する。

 観衆はざわめき、やがて拍手が広がった。


 王太子の表情に亀裂が走る。退屈と傲慢に覆われた仮面が砕け、露わになったのは苛立ちと焦り。


 その夜。

 私は使節館の一室で、三成と向かい合った。

 彼は机に置かれた蝋燭の炎を見つめながら言った。


「雷を退けた。君は、刃を受けずに逆に雷を地に落とした」


 私は静かに頷いた。

 だが三成の声は続く。


「だが次は――“闇”だ」


「闇……」


「証拠も噂も必要ない。夜陰に紛れ、君を消し去ろうとする動きが必ず現れる。

 ――命を狙う者が出る」


 蝋燭の炎が揺れ、壁に二人の影が映る。

 私は唇を噛み、やがて扇を閉じた。


「ならば、その闇を照らす光を……あなたと共に探すわ」


 三成の瞳が一瞬だけ和らぎ、やがて鋼の色に戻った。


「光は、必ず設計できる」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ