第12話 影を超えて
予告どおり、「影」は私の背後に潜んでいた。
裏切ったのは――学園で親しくしていた令嬢仲間。王太子派に弱みを握られ、私の行動を逐一流していたのだ。
「ごめんなさい……でも、私は家を守らなくちゃならなかったの!」
涙に濡れる彼女を前に、私は扇を閉じて静かに言った。
「裏切りを責めるつもりはありません。ただ、これからは――真実だけを選んでほしい」
その言葉に、彼女は嗚咽しながら頷いた。
影を暴くことで、王太子派の最後の駒は消えた。
第13話 最後の舞台
そして、決戦の場は再び大講堂に整えられた。
王太子レオンハルトは、最後の権威を振りかざして宣言する。
「セシリア! お前との婚約を正式に破棄する!」
だが私は一歩も退かない。
既に群衆も学園の生徒も、私と三成の歩みを見てきた。
「殿下。破棄はご自由ですわ。けれど――正義なき破棄は、ただの退屈」
会場がざわめき、誰もが王太子を見つめた。
その瞬間、三成が進み出て、静かに言い放つ。
「この国に必要なのは退屈を晴らす王ではなく、秩序を護る君主だ」
雷鳴のような拍手が広がった。
王太子は言葉を失い、その権威は実質的に瓦解した。
終章 未来の設計図
季節は巡り、私は学園を無事に卒業した。
悪役令嬢としての破滅ルートは、もはや跡形もない。
残されたのは――新しい未来を描く白紙の地図。
城壁の上、春風が吹く中で私は三成に問いかける。
「ねえ、これから私たちはどんな未来を設計するのかしら?」
彼は空を仰ぎ、灰色の瞳を細めた。
「歴史に“もし”はない。だが――共にあれば、幾度でも描き直せる」
私は扇を開き、笑った。
悪役令嬢と戦国の軍師。
奇妙な出会いから始まった私たちの物語は、今や“国を救う設計図”へと変わっていた。
――そして未来はまだ、無限の余白を残している。