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アルネヴィルの動乱Ⅰ

今回から数回アルネヴィルの動乱編になります!

 辺境王国ユースベルク カーディス山地


 翌日僕たちは夜明けと共に出発した。オークたちが住むと言われる洞窟は拠点から歩いて数時間のところだった。


 盗賊(シーフ)のガイルさんの報告によると、オークたちは群れを成しており、見張り番のオーク戦士が2体。洞窟内にもあと数体はいるはずだとのことだ。リーフさんによれば、オークはどれだけ多くても10体以上で群れを組むことはないため、そこまで難しい討伐ではないとのことだ。

 僕達はガイルさんの情報をもとに、まずは洞窟周辺に拠点を作成しそれから計画を練った。

 この時に指揮を執るのはやはりリーダーであるリーフさんだ。


「まずは、開始に私が見張りのオークに遠距離の攻撃を仕掛けて二体の内最低でも一体、できたら二体両方共をしとめるわ。で、逃した奴がいればリュカくんがお願い。その後、戦士のベルドンを筆頭にリュカくん、ガイル、私、そしてミレイナの順で突入するわよ。ベルドンはいつも通り受け身役をお願い。ガイルは周囲の経過を怠らずに奇襲が来ないように見張っていて。リュカくんはベルドンと連携を取りながらオークを殲滅することに集中。そして、私が後方から援護するから、ミレイナは全員に強化魔法をかけるのと、怪我をしたら治癒をお願い。これでどう?みんな、いけそう?」


「ああ、問題ないぞ。」


「俺も問題ないね。」


「僕も大丈夫です!」


「わ、わたしも了解です!」


 皆がリーフさんの指示に納得すると、いよいよ攻撃となった。


 《翡翠》に入って教わったのは、どれだけ相手が弱くとも、絶対に準備をし計画を練って、そして意思疎通をとってから攻撃を始めるのが冒険者の基本だということだ。闇雲に向かっていっては、もし強敵が出てきたときに死ぬことになる。そしてその死はパーティーの全滅にもつながりかねないからだ。

 これは決して1人で活動していたら学べないことだった。

 それだけでもこのメンバーとパーティーを組めて本当に良かったと思う。


「リュカくん、何にやにやしているのよ。もう攻撃するわよ。」


 リーフさんにそう注意され顔を引き締める。


「皆さんに出会えてよかったなと思って……!」


 僕の返答に場に張り詰めていた緊張が一気にほどける。


「リュカ殿どうした、突然。何か悪い物でも食べたのか……?」


 ベルドンさんが心配そうにのぞき込み、その場は笑いに包まれた。


「さて、いい感じに緊張もほぐれたことだし、いくよ!みんな!」


 そのリーフさんの一声と共に、僕達は行動を開始した。


 ◆


 やはりオークの群れの練度は低い様であった。

 開始と同時のリーフさんの魔術で見張り番の一体は体が真っ二つになり、もう一方は重傷こそ負ったがその場からかろうじて逃げ出した。


 僕はすかさず、逃げようとするオークに剣を振るいその体を切断した。


「やはり、リュカ殿の剣技は本当に目を見張るものがあるな」


 ベルドンさんはそう言って、感心したように頷いてから洞窟へと突入していった。

 するとすぐさま中で激しい金属音がなり始め、僕も慌てて中へと向かった。


 ベルドンさんは先ほどの見張り番のオークよりもさらに一回り大きな個体と戦っていた。


「オーク・ソルジャー、珍しいわ、こんな個体がいるのは……ベルドン魔術を打つから気を付けて!」


 リーフさんがそう叫び、風魔術を展開した。


「第三位階風魔術 〈鎌鼬(かまいたち)〉」


 リーフさんが詠唱をすると同時に、彼女の手から鋭い風の鎌が飛び出し、オーク・ソルジャーの腹を切り裂いた。


「あとは任せたまえ!」


 ベルドンさんはそう叫ぶと、弱ったオーク・ソルジャーにその大剣を突き刺し、倒すことに成功した。


「リーフさん、今のは?」


「オーク・ソルジャーと言われるもので、通常のオーク戦士の進化系なの。オーク戦士よりも一回り大きくて、その分力も強いの。でも珍しいよ。オーク・ソルジャーがいるなんて。ラッキーだね。オーク戦士とソルジャーじゃ討伐報奨金がまるで違うもの!」


「なるほど!ならよかったですね!」


 僕達がそう言っているところへ、ガイルさんが怪訝な顔をしながら近づいてきた。


「喜んでるところ悪いが、もしかしたら今すぐに街に戻ったほういいかもしんねえ」


 そういうガイルさんにリーフさんは不思議そうな目を向けた。


「どういうことガイル?」


「この奥の部屋に80体くらいの死体が山のように転がってやがる。オークも、ゴブリンも、コボルトも……そして人も。見事に食い荒らされてやがる。で、その中にはゴブリン・メイジとゴブリン・キング、オーク・キングの死体まで混ざってやがった。」


 ここで2人は苦虫を嚙み潰したような顔をして見つめあう。


「それってつまり……?」


 僕は思わずそこに口をはさんでしまった。そこに後ろで話を聞いていた、ベルドンさんが口話開いた。


「オーク・ロードがいるかもしれないということだよ。リュカ殿。いくら体格の大きいオークであっても魔術を使えるゴブリン・メイジやゴブリン・キング、そして何よりもオーク・キングを倒せるのはオーク・ロードしか考えられないのだよ。」


 オーク・ロードその名はこの世界に来て二月ほどの僕でも知っていた。

 災害級魔物に相当し、人語を操る魔人。その戦力は都市をそして国家を滅ぼすとまでされる災厄だ。


「そいつは今一体どこに!?」


「それが問題だ。この感じだともうすでに豪華な一回目の食事を終えて、ここを後にしたっぽいぜ。となると……」


「となると……新たな餌を探しに場所移した可能性があるわね。」


「そーゆーことさ。そしてここから向かえる最高の餌場はアルネヴィル大草原、若しくはムクの大森林の二択。ほんとうに奴がそのどちらかに移動したとなると、当然餌となる魔物達は逃げ出していく。彼らが逃げるのはアルネヴィルの方だ。これは……魔獣嵐(まじゅうらん)が起こるぞ。」


 その言葉が合図となったように、リーフさんを筆頭に全員が急いで帰路につき始めた。


魔獣嵐(まじゅうらん)となれば、アルネヴィルへの大規模な魔物の侵攻は疑いようがない。前回は20年程前だとは聞いてるが、その時はゴブリン・ロードの出現で大体魔物が4000匹くらい街へ向かってきた。オーク・ロードとなると……」


「その倍、いえ3倍は来てもおかしくない。本格的にまずいわ、これは」


 いつになく真剣なリーフさんの言葉に、僕も気を引き締めた。

『早く街に知らせなくては』その思いと同時に浮かんだのは、セルマさんの顔だった。

もし少しでも”いいな”と思ってくださった方がいれば、評価・コメントよろしくお願いします(^^)/


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