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冒険者パーティー《翡翠》

 そこから2月、僕は死ぬ気で冒険者活動をした。

 最初はいわゆる雑用のような仕事がほとんどだった。

 例えば『薬草採取』であったり、『人探し』そして『下級魔物の討伐など』


 この世界では魔物は『下級』『中級』『上級』『災害級』に分類され、さらにその中でも高位・低位に分かれるそうだ。

『下級・低位魔物』の代表例が、スライムであったり、大規模な群れを成していないゴブリン、大規模な群れを成していないコボルト、スケルトン。『下級・高位魔物』の例が、オーク、トロール、ウルフなど。『中級・低位』になると、オーク戦士、トレント、ハーピーなどで、『中級・高位』はサラマンダー、ガーゴイル、オーガ。そして『上級・低位』はミノタウルス、飛竜(ワイバーン)、グリフォンなど。『上級・高位』がリッチ、キメラなど。

そして『災害級』は低位高位の分類がなく、龍種、ベヒモスなどの古代種、若しくは人語を離すことができる魔物である”魔人”のどちらかである。


 僕はそういった下級冒険者用の依頼の数をひたすらこなしていった。


 やっぱり【剣聖】というだけあって、僕は今まで剣なんて握ったことなかった―――それどころか前世では、ほぼほぼ運動すらできていなかったにもかかわらず、剣の握り方、魔物の倒し方、そして身のこなし方が面白ようにわかった。

 次にどこに攻撃を加えるべきなのか。どのように相手の攻撃が来るか。それをどう回避すべきか。

 まるで何十年、いや何百年剣の修行を積んだ者が僕の中に宿っているようだった。

 さらに、剣以外にも基礎的な運動能力も劇的に向上しており、周りの中級冒険者よりも軽やかに動くことができた。


 そんなこんなで依頼をひたすらこなしていると、1月前には『グレイム級』からその1つ上の『プルーム級』へと僕の冒険者ランクが上がり、中級冒険者の仲間入りを果たした。

 その際に、アーカルドさんから”パーティー”を組んでみてはどうかとの話を貰った。

 どうやら、この世界の冒険者は一般的に自分と似たランク帯の冒険者とパーティーと呼ばれるチームを組むそうだ。

 それによってそれぞれの能力を補完しあえるそうだ。

 確かに僕も、近距離戦にはめっぽう強いが遠距離の魔術師相手となるとどうにも分が悪そうな気がした。

 そこでアーカルドさんの紹介を貰って、同じ中級冒険者でちょうど剣士が不在だった《翡翠》という冒険者パーティーに入れてもらうことになったのだ。


 《翡翠》は魔術師のリーフさん、戦士のベルドンさん、盗賊(シーフ)のガイルさん、そして神官のミレイナさんの4人で構成されるパーティーだ。リーフさんだけが『グレイス級』の冒険者でそれ以外は皆『プルーム級』だった。


 そのような経緯で僕は、《翡翠》のメンバーとなり、今もこうして《翡翠》の皆さんと一緒に日々依頼をこなしている。

 もちろん、単独で依頼を受けるときもあるが基本的にはパーティーで同じ依頼をこなす。


 そうして今は《翡翠》のメンバーで、アルネヴィルから西へ4日ほど行ったところにある、カーディス山地の中に生息するというオークの群れの討伐へと向かっている。


 ◆


「リュカくん!何ぼーっとしてるの?」


 夜、見張りをしているとリーフさんが話しかけてきた。


「いえ、大したことじゃないです!少しこの街に来てからの思い出を振り返ってました」


 リーフさんは僕たちの中で最年長―――っていってもまだ28歳だけど―――であり、《翡翠》のリーダーだ。

 風魔術の使い手で、風魔術だけで見たら王国の中でも10本の指に入るのではないだろうか。

 しかも、普段は優しいけど戦闘の時には冷静沈着で本当に頼れる存在だ。


「そっかそっか!リュカくんはここに来る前は東の国の方にいたんだもんね。」


「ええ、そうなんです。そこからつい2月前くらいにここへやってきました。」


 《翡翠》の面々には僕が別の世界から来たことは言っていない。信頼関係のために本来はいうべきなのだろうが……まだ何か言わない方がいいような気がして言えていない。この世界での転移・転生者の扱いは悪くはなさそうだが、それでも不用意に言わないのが吉だろう。


「もう、新天地での生活には慣れた?」


「はい!まだ慣れないこともあるんですけど、《翡翠》の皆さんやアーカルドさん、そしてセルマさんのおかげで何とかやれてます!」


「優秀なのに謙虚だね~、でもセルマさんがいたらリュカくんもがんばれるね」


 そう言ってリーフさんはにやりと笑った。普段とは違ういたずら心のあるその笑顔はすごくかわいかった。


「そんなことないですよ……!」


 口ではそう言いながらも、自分の頬が火照っているように感じた。

 やっぱりまだ優しく手を握ってくれた時のセルマさんの顔は忘れられなかった。


「ふん!若いっていいねえ~、私はもう少し寝させてもらうよ~」


 リーフさんはそう言い残すと、拠点のある方へと歩いていった。


「セルマさん……」


 言われるとどうしても意識してしまう。最近は忙しくてあまりセルマさんに会えていなかった。


「会いたいな……」


 そんな僕の小さな呟きは、雄大なカーディスの山々へ消えていった。


もし少しでも”いいな”と思ってくださった方がいれば、評価・コメントよろしくお願いします(^^)/

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