一人の賢臣 後の『魔王の左腕』
さて、異世界転移から一年。
大体状況を理解した。
とりあえずここは剣と魔法の異世界。
魔力というエネルギーがある世界。
魔法使えてラッキーだと思うだろう。だが俺は魔法を使えない。
何でも、俺は死にかけだったらしくそのせいで魔法を司るナニカがズタズタになり、さらに瀕死状態で服用した薬品が著しく影響した。
だが、いろいろ試してみた結果、魔法は使えるが微量もいいとこだろう。メリットが少なく、デメリットが多すぎる。さらに、一度使えば、直接命を削ってくる。使う理由がなさすぎる。
転移した家は中華と西洋を織り交ぜたような様式。いわゆる中華ファンタジー。
だが、この世界全てが中華ファンタジーではないらしく、家の外、もっと言えば国の外に行けば中東っぽい国もあれば、ザ・中世西洋の国もあるらしい。
そして、転移した家は公爵家。名はエヴィル家。この家は世界中に散らばっているらしい。この家は本家で俺はそこの長子。
中華風ではあるが、身分は西洋という変なマッチ。
ちなみに俺が死にかけた理由は結構簡単だった。
この公爵家を裏から操ろうとした愚者がいたようだ。
俺が飛び起きたときにほかの奴らとは違った顔をしたやつを覚え、奴から間接的に言質もとった。
どうやってとったかって?それはある一人の賢臣からなのだが、まずはそいつを取り込んだ時の話をしよう。
この家には侍女がいる。まぁ、だろうなとは思った。
その中で、元侍女頭のエルフの御婆さんがいた。今は俺の世話係だ。御年394歳・・・スゲェ!!
しかも先天的な盲目・・・どうやって生きてきたのか今度聞くと決めている。
まぁ、この御婆さんにはいろいろと助けられた・・・特に愚者を俺から遠ざけることに・・・そのため、絶対に『お返し』すると決めた。
そんで、この婆さんには孫のハーフエルフがいた。俺より二歳下だ。つまり、あのとき五歳。幼すぎると思ったが、侍女たちの中では珍しくもないらしい。
それがさっき言った賢臣。俺は年齢種族など気にしない。でもさすがに6歳で賢臣はやりすぎだと思う。
あの婆さんの『侍女としての英才教育』を受けてか途轍もなく賢く、忠臣中の忠臣のような子だった。
でも、周りはその子を蔑んだ。ハーフエルフである点も気に食わなかったようだ。
特に、俺の弟が彼女をいたぶった。
俺の一歳下の弟はデブで粗暴。典型的なガキ大将まっしぐら。もろジャイ〇ンだ。
そんな彼女に俺は優しくした。
お菓子あげたり、慰めたり、守ったり、まぁ色々した。
そんなことを一年続けたら、なんか俺の忠臣になった。
「ちゅうせいをしゃさげます」なんて言われた。
まぁ、捧げるといったならそれなりのしごとをしてもらう。俺は年齢など気にしない。
というわけで、俺の中で黒かった奴に聞いてもらった。
どうせ何もできないとでも思ったのだろう。べらべらと饒舌に喋った。
目の前のハーフエルフの小娘がどれだけ賢いか、そしてその小娘が誰に忠誠を誓っているのかも知らずに・・・
奴の計画はこうだ。
俺を殺し、弟が長子・・・つまり跡取りになる。
そのうえで自分が弟の教育係に立候補し、こじつけを使ってでも教育係なる。
そして、自分の主義主張を刷り込ませる。その間に俺の両親を殺す。
弟が成人し、晴れてエヴィル家当代になった暁には補佐官になり、権力を振りかざす気だったようだ。
聞いた俺の感想は、「ソレどこの宦官?」
いや、陰茎ついてるか・・・
この計画の全貌を理解した俺が真っ先に考えたことは「これ使える!!」だ。
俺はさっそく行動に移し、父親に「愚者を弟の教育係にする案」を訴えた。
父親は理由を聞いてきたので。「それが、エヴィル家にとって利益になるから」と力説した。
父は俺の熱意に押されたのか、愚者に「弟の教育係」の地位を与えた。
俺の計画としては、{見るからに『賢者』である兄と見るからに『愚者』である弟見たら絶対に兄を選ぶ。弟のバカさを利用して、エヴィル家次期当主の座を完璧なものとする}というものだ
フハハハハハ!!完璧だ。
まぁ、問題なのは兄の殺害計画なんだけども・・・・それに関しては賢臣がいるから大丈夫だ。