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第1章 第5話 【辺境のへ、の街】

 かつて、この大陸には帝国、連合王国、魔族の国があった。神話の時代、それぞれが争い、奪い合う戦の時代であったが、神の試練を乗り越えたことにより、人の隔たりはなくなり、それぞれが統合し、その大きさから東と西の大国となった。

 この広い大陸でその大国を築いているのは、

西の大国アルセォドワ王国、東の国キアテレス魔導国。


 今僕がいる『奈落』のある位置は、アルセォドワ王国の辺境の辺境の辺境である。

 そう言えば、『祈祷のダンジョン』巡りの時でも都市には近づいたことないなあ。なんだか都市の周りをぐるぐる回っていたような気がする。


 そんな僕は現在、『奈落』から地上に上がっている最中だ。


「そもそも都市にダンジョンがないんですよね?」


『そうよ。というより難易度の高いダンジョンが周りにあるから、そこを攻略しようとして駐屯地を作っていったら合わさっていって都市として発展していったと言うような感じね』


 都市の周りにある高難易度ダンジョ•••。どんなところなのだろうか。少し、楽しみだ。


『ふふ、いい顔ね』


『セイバー氏、すっかり冒険者の顔つきですな』


 あら、そんないい顔してました?

 と、まずはケルベロスの半身の換金ですね。

 ていうか本当にすごいですね、この巾着袋。半身といえどあんなでっかいものが入るなんて。なんか不思議な感覚でした。

 

『しかも中身は時間固定の効果もあるから保存状態は入れた時のままよ。質が入れる時より落ちることはないわ』


 え、すごい


『ただし、持ち運びの便利さで生きたものを入れることはあまりお勧めしないわ』

 

 なんでです?


『時間固定された生きものが外に出された時に、現在の時間軸に引っ張られて爆発するからよ』


 え?とんでもなくないですか??


『とんでもないでござるよ。だから拙者たちの間でも悪魔の間でも生きものは無限収納があるものには入れれないように、無限収納を作る鍛冶師をしぼってすべてに規制をかけてるでござるよ』


 おお、流通を絞るということですね。でもそれ脱法というか、違反してとんでも無限収納とか作られたことないんですか?


『ないわね』『ないでごさるな』


 即答!


「なんでですか?」


()()()()()()()からね』


 なるほど、神様たちの監視からはさすがに逃れなさそうですね。


『そういうこと』


 さて、そんな無限収納付き巾着袋に入ってるケルベロスくん(半身)であるが、どこで売ろうか。都市からも離れているし、売り場が限られてくるなあ。


 僕は今まで回ってきた街のことを思い出す。

 『祈祷のダンジョン』は公の場所にあったり、時には山奥、谷中、など秘境にあったりするために情報収集のために表立った人から、日の目を浴びない人たちにも情報を聞き回ったりしていた。


 神様たちは祈祷のダンジョンの場所は大まかにわかってはいて導いてはくれるが、そのダンジョン自体の詳細はわからないらしい。だから実際に行くためには現地の人に聞かなければならないのだ。辿り着くのもまた試練の一環なのだとか。たぶん、わからないだけだと思うけど。


『セイバーなんか不敬なことを考えているわね?』


「そんなことないよフォトゥナ様。いつも神様のことを思ってます」


 もう口がうまいんだから!とフォトゥナ様はご機嫌になってくれた。可愛い。


『ちょろいですなあ』


 フォトゥナ様、ちょろ可愛い。

 神様たちと戯れながら、換金場所を考える。その情報収集の経験もあってか、色々と裏で捌けるところも知ってはいたりするのだが、どうしようか。

 幸いにも、今ここは僕の出身の村から近く、比較的土地勘がわかる。そうだなあ。僕の村を超えて、もうちょい行ったところにあるあそこら辺では大きな街で換金しようかな。あそこだと、ちゃんとした鑑定スキルをもっててしっかりした人もいるし。うんそうしよう。極貧時代によくお世話にもなったこともある人だし、そこの街に行こう。


「よし、僕の村を超えたところの街に行こうと思う」


『セイバーの村を超えたところの街って、ああ、あそこね。いいんじゃない?あそこら辺にしては大きい街だし、流通もしっかりしてるし、ちゃんとした査定もしてくれそうね。ついでに冒険者ギルドで冒険者登録したら?』


 あ、そうか。僕はまだ冒険者ギルドに登録して無かったのか。いろんなダンジョンを回っていたせいで冒険者ギルドに属していたと思っていたけど、そう言えばまだだった。フォトゥナ様の言う通りついでにしておこうかな。


 そうこうしていると、『奈落』から地上に出る。

 

 『奈落』はその名の通り地下型のダンジョンだ。『奈落』にいる間は地上のことはわからずに時間感覚もよくわからないことになっていた。


 地上に出ると、朝日に迎えらる。


 うん、すごく綺麗だ。旅立ちには丁度いい。

 

 と言っても今日という日は始まったばかりのようで、時間はありそうなのでまあゆったりと、定期便の馬車に揺られながら行きますか。



 始発と思われる馬車に乗り、ごとごと揺られる。


 僕の出身の村は都市から辺境の辺境くらいだ。向かっている街はそれを超えたところなので辺境のへ、くらいに位置する。

 

 着くのは夕方かなあ。


 朝日を見ていると、自分が寝ずに攻略していたのだと認識し、体が休息を求めることに気づく。うーん、すごい眠くなってきたぞ。


 僕はそのまま馬車の中で眠りについた。



「お客さん、お客さん」


「んぁ?」


「つきやしたぜ。他のお客さんもいるんで早く降りてくだせえ」


 うーーん、と伸びをして外を見る。どうやら目的地に着いたらしい。

 おっと。周りの目が早くおりないのこの人と訴えかけておられる。これは失敬失敬。

 申し訳ない気持ちで馬車を降りる。その際になけなしの代金を払う。懐も冷たくなってしまったね。とほほ。まぁでも、まずはダンジョン巡りの纏まったお金を作りにきたのだ。

 

 そんな未来ある懐の暖かさに期待を込め、よし、と前を向いて街を見る。


「やー、何気に久しぶりだなあ」


 心地よい風が吹く。ここは風がよく通る街。それゆえにところかしこに風車が立っている。そして見応えのあるのは街のど真ん中にある大時計台だ。風車から生まれた力を元に、大時計台を含めこの街は動いている。そして街の中もそのエネルギーをもらっているのか、活気ある賑わいを見せている。

 

 ここは、そんな心地よい風と大時計台、そして人々の活気ある賑わいを見せる、街ウィンダービンである。


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