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第1章 第3話 【ダンジョン攻略】

『セイバー、さあ最終階層主よ。それ倒してちゃっちゃっとお宝とりなさい』


「え、これ倒せるかな!?」


『あなたこれまで頑張ってきたじゃない!しかもここまでも1人で難なく来たんだから”ケルベロス”くらい大丈夫よ!』


『そうでござるよ。拙者の試練にも耐えれたのですから自信を持つでござる』


「そうかな?そうな気もするかも?なんだか、いける気がしてきた!ありがとうみんな!!」


 僕は全身に『闘気』を開放する。『闘気』は生命力の具現化だ。生命力が高ければ高いほど、その効果は比例して高くなる。その効果は、主に身体強化だ。


 今、目の前にはダンジョンの最下層である階層主、ダンジョンボスである頭3頭の地獄の番犬、僕の何倍も図体がでかいケルベロスが前にいる。


 ケルベロスは階層に入ってきた外敵を駆逐せんとばかりに、涎を乱れ散らし、叫び、体を暴れながら獰猛化している。今まさに襲ってこんとす、だ。


 僕はその状況でも気を乱さず、散漫になる闘気を集中させ、さらに凝縮する。


 そんなのはお構い無しに暴発的に突進してくるケルベロス。


 僕はぎりぎりまで闘気をするどく練る。


 ケルベロスが地面を揺らし、目と鼻の先まで迫ってくる。殺気が肌を刺すように伝わってくる。その迫力の重圧に、押しつぶされそうだ。


 でも、まだ•••まだぎりぎりまで、闘気を集中させる。


 ケルベロスに食われんとする、今まさにその瞬間————ここだ。


 僕は凝縮させた闘気を右手の拳に限界まで集中。そして、それを耐えれるように両足にも闘気を集中。


 思いっきりの左足の踏み込み。


 地面に亀裂が入るほどの踏み込み、重心の流れを最大限に利用し、すべての体の力の流れを右手に移動する。


 ケルベロスに拳がめり込む、力の流れのその最高点で————凝縮させた闘気を全解放する!!


「ッ!!!!!!」

 

 大気が破裂するほどの大爆発音と共に、ケルベロスの頭から体半分が無くなった、結果が場に残る。


「———ふぅ。よし、なんとかなってよかったあ」


『•••まあ、頭3つあるのがケルベロスの特徴でそれが無くなったら証明するものがないけど、でもよくやったわ!さすが私のセイバーよ!』


『重心の移動の仕方の滑らかさ、そして何よりも、『闘気』の開放、凝縮、そして解放の『闘気』の使い方のうまさ。『武神の加護』があるといえど、もはや拙者レベルの洗練さでござるな•••いやはや感服感服。鍛えた甲斐があったでござる』


「そんな、武神様に言われると嬉しいですけど、さすがに武神様には程遠いですよ。でも、ここまで強くなれたのはみんなのおかげです」


 あれから1年。運命の女神、フォトゥナ様の加護を貰ってから1年。

 フォトゥナ様の導きのもと、色んなダンジョンを見て回った。

 

 そのダンジョンの種類は『祈祷のダンジョン』。


 このダンジョンは他のダンジョンと比べて魔道具などや魔物など何もない、それこそ、僕の村にあったフォトゥナ様と出会ったダンジョンと一緒なのだけど、違うのは()()()()があることだ。

 普通のダンジョンにある祭壇は宝物庫のような役目をしていたり、最終階層主が冒険者が来るまでに封印されていたりとした役割があることがわかっている。

 しかしこの『祈祷のダンジョン』の祭壇は神に祈りを捧げることができる、と言った役割の祭壇である。しかし、この役割は周知されていない。なぜならダンジョンの祭壇に祈祷を捧げるものもいないし、そしてダンジョンの奥まで行って何もなければそれ以上の価値を冒険者は見出さない。

 だから3()()()()()()()()()()()()()しか、その役割の導きはこなかったのだ。

 

 それから、1年で色んな『祈祷のダンジョン』を回った。そこで出会った1人の神が、武神アレス様だ。武神の如き、武に纏わることを全て叩き込まれた。そしてそれを乗り越えるのが武神アレス様の試練だった。無事、その試練を乗り越え、僕も一丁前に戦えるようになったってわけだ。そしてそんな武神アレス様は僕の師匠様ってわけだ。


「これで、他のダンジョンに行っても良さそうだね」


『他のダンジョンなんて多分余裕よ。だって今回のこのダンジョンはエクストラダンジョン、通常では出会えないダンジョンよ。人類が使うランクというやつで言えばゴッドとは異なるヘル級、と言ったところかしらね』


 そう、僕がこの1年鍛え、その集大成としてダンジョン攻略をすることとなった。そして見つけたのが今回のダンジョン、『奈落アビス』だ。エンカウント条件としては、()。たまたま見つけることが、このダンジョンの参加条件となる。それが運が良いか悪いかはわからない。なぜなら普通なら、たまたま見つけたダンジョンを人は攻略できるだろうか?またしてや、女神様が言うようにゴッドとは異なる難易度だ。ヘル級って言う時点でまともなダンジョンではないことがわかる。かくいう僕も、難なくとは女神様は言ってたけど何回も死にそうになった記憶がある•••。うん、終わりよければすべてよしとしよう。

 

 でも、僕にとってこのダンジョンに出会えたのはとても運が良いことだった。なぜなら自分の強さがわからないから。他のダンジョンでは誰かに迷惑をかけるかもしれないから。だから、()1()()()()()()()()()()()()()があればいいなと思っていたから。


『ふふん、そ!れ!は!私の加護に感謝することね』


「ありがとうフォトゥナ様。さすが『幸運の女神の加護』だよ。すごい助けられてる」


 『幸運の女神の加護』、これは運が良くなる加護だ。しかも、全ての運がだ。今さっきのケルベロス戦での『闘気』の解放のタイミングも、全ての力が乗った、ここぞっていうタイミングで解放できたのも、フォトゥナ様の加護のおかげだ。ありとあらゆる運が味方につく。それは戦闘だけでなく、その他のタイミングでもだ。

 故に、今回の『奈落』に出会えたのも、フォトゥナ様の加護のおかげなところがある。

 本当に、僕がここまで来れたのは神様たちのおかけだよ。


「本当にありがとうね、みんな」


『ふふ。どう?私のこともっと好きになった?』


「もちろんだよ。いつもみんなのこと大好きだよ」


 みんなじゃなくて私だけにして!と少しわがままを言うフォトゥナ様。とても可愛い。僕は可愛いを全て受け入れる愛の戦士でもあるために、可愛いには素直になると決めているのだ。


『セイバー氏よ、人はそれを変態というのではないのですかな?』


「武神様、変態ではないです。僕は紳士なだけです」


『では、変態紳士ですな!』


 なん、だが•••かっこいい響きだ!!


『もう何言ってるのよあなたたち。でも、セイバーの強さもだいぶ仕上がったわね。ヘル級の最終階層主を単体で倒せる冒険者なんて存在しないんじゃないかしら?』


「それは言い過ぎじゃないですか?」


『まあ、普通ならありえんですな。もはやセイバー氏は半神化してると思うような気もしますな、拙者は』


「いやいや、まだまだですよ。もっと、もっと精進できるように頑張ります」


『ふふ、でもセイバーの夢にはまずは近づけたんじゃないの?』


 僕の夢•••それは英雄になること。

 ヘル級を単体攻略できたのなら、まずは僕の夢への走り出しとしては及第点ではないだろうか。


「ここから、だね。ここから更に夢に近づけるように頑張らなきゃね。だからこれからもみんな、よろしくね」


 僕は祭壇に手を合わせる。神様達への感謝と、そしていつものみんなの躍進と無事と世界の平和を祈って。



「さて、これからどうしようかな。ていうかこれどうしよう?」


 横たわっているケルベロスの半身みて、どうするか考える。


『半身でも尻尾が3つあるからケルベロスってわかると思うわ。鑑定スキル持っている鑑定屋のところに持って行って換金したら?ケルベロスなら高値で取引してくれるでしょ。セイバーこの1年は『祈祷のダンジョン』巡りでお金全然稼げてないんだから、まずは生活費をそろそろ作らなきゃ』


 ぎく。


 まあ、そうなんだよね•••。ここ1年はとりあえず修行の1年だったから、お金のことは考えずで全然お金がないんだよね•••。おかげでそこら辺に生えている食べれる草とかすごい詳しくなったよ。とほほ。

 しかし逞しくはなったね。どこでも生きていけるという度量はついたぜ。うん、結果オーライだ。


『セイバーのそのポジティブ精神、嫌いじゃないわよ』


 よし、じゃあまずはケルベロスの素材を換金しに地上へ••••


『その前に、そこの祭壇の下の魔道具、とらないの?』


 そう言えば!

 いつも祭壇に祈りを捧げて終わるのでこのまま帰るところだった。そうそう、ダンジョンと言えば最終階層主を倒した後のダンジョンアイテム!

 はあ、長かったなあ。初めてのダンジョンアイテムだ•••。

 

 僕は祭壇の方に向かう。祭壇の下の部分には、何かをしまってあるような両開きの引き戸がついている。僕はその戸を引く。


 初めてのダンジョンアイテムの出会いは、子供のときにプレゼントを受け取るときの胸の弾みのような高揚感、そして今まで待ち望んでいた瞬間に立ち会える緊張感があった。

 その思いもあってか、扉は重く感じられ、また、扉を引く時間は長く感じられた。


 そしてその扉の中にあったのは、手のひら2つ分くらいの真黒な巾着袋だった。


「なんだろうこれ?」


 拍子抜け、といえば拍子抜けだけど、なんか禍々しいぞこれ。


『これは•••』


『やはり、最悪の事態も考えなくてはですな』


 え?そんなにやばいものなの?


『これ自体はやばくないわ。これはねセイバー、無限収納効果付きの巾着袋よ。こんな大きさだけど、なんでもどんな大きさでもどんな量でも無限に入る優れものよ』


「おお!めっちゃすごいじゃん!聞く限りではすごい当たりのように思うけど、何がダメなの?」


『そのアイテムはね、”冥王ハーデスの黒巾着”よ』


 め、冥王?


『この世界には神が与えた『スキル』がありますな?それは最初の神の試練を乗り越え、神が『スキル』を与えたと。その時にですな、この世界は同時に魔界と繋がってしまったんですぞ』


 ちょちょちょ、待って。え、魔界?魔界って何?なんか、全然話が見えてこないよ。


『魔界はねセイバー。悪魔がいる場所と言われているわ。悪魔とは神と対をなす存在。神が世の中の”正”を司るなら、悪魔は”負”を司る存在よ』


『悪魔は理のためなら負を撒き散らす。でもそれは大義名分であって、やることは愉快犯みたいなものよ。悲しみ、苦しむ姿を見て愉悦に浸る•••それが奴らの性ってやつ』


 とんでもなくやばいじゃん。それ放っておいて大丈夫なの?てか最初の神様大戦犯じゃないの?


『それがですな。そもそもなぜ神が人類に干渉したかと言うとですな、最初にどうやってか悪魔が人類に干渉し、負を撒き散らして、世を混沌に陥れたんですぞ』


『そのために、こっちも干渉して試練という形を使って『スキル』を授けたの』


 ふむふむ。あれ?


「でも、それで魔界と繋がったら本末転倒じゃない?」


『もちろん、こちらが干渉すればあちらの世界も干渉できるのは目に見えていたわ。だから、私たちもその瞬間を狙って、ありったけの魔力を使って悪魔どもを『ダンジョン』に封じ込めたの』


 え?え?つ、つまり『ダンジョン』攻略というのは•••。


『『悪魔』退治よ』


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