第2章 第8話 【初めての】
「セイバー君、ありがとう•••。ただ、君の力は一体•••!」
団長も回復して立ち上がり、それよりも、といった風に僕に迫り来る。
「神様からの思し召しです」
「何言ってんだセイバー?」
ほら、だから言いたくなかったんだって。
「ぐぅ•••」
ドラゴンはデバフに逆らえなくなったのか現在地に伏している。ドラゴンの魔法も途切れ、他のみんなが徐々に回復してきて騎士団の機能が戻る。回復は必要なさそうだね。さすが騎士団だ。
「さて、このドラゴンをどうするか。ゴウ副団長はどう思う?」
「正直何も思い浮かばないですね。俺は手も足も出なかった•••このドラゴンをどうにかしようっていう発想がまるで思い浮かびません」
ゴウは清々しく言う。ここまで言い切ると本当に清々しいね。ただ、ゴウの手は強く握られている。ゴウはカッコつけがちだけど、誰よりも負けず嫌いだ。恐らくゴウの心のうちは自分の不甲斐なさにぐつぐつと煮えたきっているだろう。ゴウは弱い自分を超えるためにまた強くなる。ゴウは、昔からそうだもんね————そんな気持ちは、自分の弱さに悔しいのは、僕も1番知っている。
みんなの元気が戻ったところで、このドラゴン、ちょっと聞きたいことがある。
「僕がお話してもいいですか?」
「セイバー君が?いや、そうだね。私たちが不覚をとったにも関わらずドラゴンをここまで沈静化できているのは他でもないセイバー君だ。いいだろう。騎士団も本調子ではない、私たちは少し下がっておくよ」
気を利かせてくれてありがとう、団長。
早速僕はドラゴンの元へ寄る。
「じゃあ•••えーと」
「ちぇっ。なんでも聞いてくれていいよ。正直今は体調が悪くて何も考えれそうにないからね。聞いたらほいほい反射でなんでも出てくるよ。本当になんなのさ。ぼくの回復魔法でも間に合わない君のデバフは」
ドラゴンはもはや地に伏していると言うか、ぐったりとしてるといった状態だ。反抗する態度もない。
ふっふっふ。これが神様仕込みの弱体化の加護さ。ではお言葉に甘えて色々聞いてみよう。
「君なんでここにきたの?」
「だから言ったじゃん。里の奴らがねちっこくて偉そうでキショくて全然面白くないから出てきたんだよ」
何か色々な悪口が加わっているのは気のせいだろうか。うん。たぶん気のせいだろう。
「なるほど。そりゃ大変だ。でも天下の龍種がそれで表舞台に出てきて私利私欲で世の中を混乱さしちゃだめじゃないの?」
「なに?説教?ぼくだってぼくの人生があるんだ。なーにが天下の龍種さ。ただの1生物にしか過ぎないよ」
ほう!興味深い意見だ!•••ではなく、自分の好奇心をグッと抑える。
このドラゴンは面白さを求めてこっち側に来たのか?我が強いというか、龍種ってそんなもんなんですか?
『うーん、普通は天啓によって出てくるのが龍種の役目なんだけどね•••時々こうやって自我が強い子が出てくるのかしら。龍種は私たちの使徒ではあるけど、この子の言うとおり世の中の1生物に位置はしてるからね。神聖ではあるけど、意思が無いわけじゃないわ』
なるほど。
「ん?なんか懐かしい匂いがするというか•••君はやっぱり面白いね。なんというか、存在自体が?いや、やっぱりわかんないや。体調悪すぎるよお」
ドラゴンはどんどんとぐったりしていく。答える気力が無くなる前に本題といこう。
「ねえ。君はさ、弱体魔法をこんなに綺麗に扱えるんならさ、回復魔法もつかえるんじゃないの?」
「もちろん。そりゃ人よりも魔族よりも誰よりも上手く使えるよ。ってさっきまでは思ってたねえ。君の弱体化を受ける前は」
なんでぼくの回復魔法を上回れるんだよおお、と声だけで悶絶している。
この世には、スキルと魔法がある。僕ら人族は神からの恩恵であるスキルを扱う。普通、僕ら人族は何かしらのスキルを与えられる、とされている。僕は与えられなかったけど。
『そう言うこともあるわ』
他人事みたいにフォトゥナ様が言う。たぶん長い目で見たらスキル無しは普通にいたんだろう。生活する上でスキルが無くても別に生活はできるし。ただ、僕は運悪く誰よりも”英雄”という夢を見ていた子供だったって話なだけで•••うん、止めよう。なんだか悲しくなってきた。
僕はいいとして、もうひとつスキルがない種族がいる。それが魔族である。
魔族は僕達と違って膨大な魔力を要する。それは膨大な魔力が人体外面にツノとして現れる、僕達とは違った人体器官があるほどだ。だから神様は魔族にはスキルを授けなかった。
『授けなかったわけじゃないわよ?悪魔をダンジョンに封印する際にできた魔力の余波であなたたちにスキルを授けたわけだけど、魔族は魔力の量が多くて反発したのよ』
どうやら真実はということらしい。と、そんな感じで魔族はスキルでは無く魔法を扱う。スキルと魔法どちらが良いかというと五分五分らしい。魔法は自由度が高く、魔力量も多く上手く扱えることもできればスキルよりも強い。ただスキルだってスキル自体の能力、加えてスキル補助など色々と特典があるためにそれは魔法ほど自由度は高くないが、魔法を十分に超えるだけの能力がある。だからまあ、どちらも使い方次第なのだ。
『そもそも魔法もスキルも魔力を元にしてるからね〜。質は変わらないんだけれど、ただ、スキルは私たちの補正が入ってるからスキルの強さは個人の魔力量には依存しないってことかしら〜』
このドラゴンはあの天下の龍種。龍種は無尽蔵の魔力の持ち主だ。その無尽蔵の魔力の持ち主の魔法がしょぼいわけがない。それこそ人類なんか比べ物にならないほど。
でも、その魔法が今は効かない。
神様仕込みのデバフ加護は龍種をも超えるということだ。ふう、あの地獄の試練を乗り越えた甲斐があるということだ•••。
そして、このドラゴンから良いことも聞けた。
「ねえ。僕についてこない?」
「はあ?」
「僕、ヒーラーを探してたんだよ。僕はこれからダンジョンをどんどんと攻略していく。そしてダンジョンじゃない困難も乗り越えていく。僕についてきたらたぶん面白いよ。それに」
君だって僕のこと面白いって言ってたよね、と言い加えてみる。
「あは、アハハハハ!はあぁ、君は面白いねえ。ぼくが、龍種が人についていくだって?本当に面白い話だよ。龍種が人を導くことはあれど、人についていく、あっはっはっは。いつもなら笑い話で終わらしてたけど、普通なら冗談と思うだろうだろうねえ。そしてそこで終わりさ。面白い話をありがとうって。ただ————確かに君についていくのは面白そうだねえ」
おや、好感触。
「じゃあ君の名前を教えてよ」
「それ本気で言ってる?」
『ちょっとセイバー、私が教えなかったのも悪いけどあんまりふかいったことを聞いてはダメよ、だってその子は』
いや、名前わからないと不便じゃないです?今さっきだって龍種は普通は人についていかんとか言ってたんで不敬は今更じゃないですかね?
「アッハッハッハッハッハ!!あぁ、そうだねえ。君になら教えようかあ。ぼくの名前、特別に教えてあげる。ぼくはアイシス。”調和の龍”と呼ばれるアイシスだよ」
おおー。調和の龍、かっこいい響きだ。
『あーあ、セイバー』
『セイバーちゃん龍のふたつ名まで教えてもらって〜。相当気に入れられたみたいね〜。もう、このいけずっ』
ん?どういうことですか?
「あはは。なんだかふたつ名まで答えちゃった。ぼくたちの風習だし君は知らないとは思うけど、これは責任とってもらわなきゃねえ」
ど、どいうこと?
『あのねえ。龍種間同士での話だけど、相手の名前を聞くのは好意の表れなのよ。それでね、相手が相当の好意を持っていたら自分の与えらた龍の名前まで答えるの。それがさっき言ってた”調和”の部分ね』
『そこまで答えたりとか、そこまで要求するのは求婚の意味になるのよ〜』
え。
『もー。セイバー本当に•••。まあ仕方ないわね。私たち女神だってセイバーに夢中なんだから』
『英雄色を好むってことだよね〜』
『ちなみにその子はちゃんと女の子よ』
え。
と、とりあえず、これはちゃんと話をした方が良さそうだ。
「と、とりあえず、今後のことについて話そうアイシス」
僕はぐったり倒れているアイシスに触れ、状態異常を全て回復する。
淡い光がアイシスを包み込む。
「ええぇ!すごおい!今さっきまでの体調不良が嘘みたいにすっきりしてるんだけど!疲労感は残ってるけど、それ以外は完璧だあ•••ねえ、これぼくいる?」
「回復系を使っていると他のことができないんだ。だからとっても必要だよ」
「君は本当に面白いねえ。着いていくのが楽しみになってきたよ。ねえ、君の名前も教えてよ」
「僕はセイバー。スキル『なし』のただのセイバーだよ」
こうして、僕に新しい、そして初めてのパーティ仲間ができた。




