第2章 第6話 【ドラゴン】
ドラゴンがいるであろう山の麓に近づく。しかし、近づくにつれ大型の魔物や野獣に遭遇する率が増えて行く。
「なかなか、骨が折れますな!」
「ロウク、すまないね。さらにすまない頼み事なんだけど、ここから先はロウクと騎士団のみんなに魔物たちの排除を頼んでもいいかな?」
「なんでえ!?」
ロウクさんがあまりにものことに敬語がなくなってしまっている。
「山の麓の近くにもかかわらずこの魔物と野獣のレベルだ。山の麓からは恐らく数が増してくる。そしてそれよりもこのレベルとこの数の魔物や野獣が逃げ出してくるほどのドラゴンがいると言う事実が不気味すぎる。ドラゴンともしもの戦闘に備えて私とゴウ副団長は温存しておく」
「帰りたいと言いたいところですが、このレベルの後にドラゴンの対処を考えると団長と副団長の戦力の温存も悲しいことに真!この規模の魔物や野獣たちが野に解き離れつつあるのも重大•••団長のドラゴンを見に行くって言うのも仕方ないって実感できてきました!やるしかないですな!ええ、やってやりましょう!」
ロウクさんはやっぱり苦労人だ•••。
「ありがとうロウク。すまないがセイバー君もロウクのフォローに回ってはくれないか?そしてロウクがやばそうなら助けて欲しい」
「もちろんです。できる限りのことはさせていただきます」
今は騎士団に僕が組み込まれている形。ロウクさんが先頭をきって騎士団に指示を出しながら戦って行くはずだ。尚且つ、騎士団なら騎士団の動きがあるはずだから僕が遊撃の役目を担うのも混乱を引き起こし得ない。なら、僕がやるのは後衛でのみんなのカバー。この騎士団の統率を崩さずに僕が関与できるとしたら、バフが今のところは最善かな。
師匠、ごめんけどアスクレピオス様と交代してもらいます。『治癒の女神の加護』で後方支援に回ります。
『セイバー殿の考えは正しいと思うでござるよ。しっかりと皆のフォロー頼みますぞ』
『アスクレピオスかー。セイバーに色目使って集中が切れなければいいけどねー』
ありがとう師匠。フォトゥナ様もそんなこと言わないでください。さぁ、『治癒の女神の加護』を授かりますよ。
僕は両手で祈り、加護を受け入れる。
『セイバーちゃん久しぶり〜。まあまあな規模の後方支援ね。頑張っていきましょうか〜』
はい!よろしくお願いします。
『バフは別にみんなに触れなくていいわよ。ただ、距離が離れて行くとその効果も薄くなるから注意してね。そして、身体自体の回復はその人に触れないとダメだからね〜』
慈しみと愛ですもんね。わかりました。
『さすがセイバーちゃんっ。よくわかってるわね〜』
「さあみんな、山の麓に入るぞ。日も暮れてくる時間帯だ。ここから先は迅速にドラゴンがいるところまで行くのが目標だ。ドラゴンまで指揮はロウクに任せる!!では進行!!!」
団長の掛け声で騎士団のスイッチが入り、熟練された統率力で凄まじい進行に入る。
なんて、速さだ•••。統率を取るロウクさんの無駄のなさはもちろん、それに応える騎士団の面々の実力は半端ない。これが一流の団としての動き————どれほどいつもから訓練されているかわかる。
でもこれを率いているロウクさんがやはりすごい。団員みんなの実力と役割分担をしっかりと把握している。指示も隙なく行われている。
ロウクさんの実力は相当だ。そもそもこの緊急事態に団長に任されるくらいだ。実際に目の当たりにしてその兵士としての強さをさらに実感する。
これはあれだな、団長とゴウはこの騎士団の中で戦闘の役割だ。団の中で強さ自体は団長とゴウは桁違いなのだろうが、段違い故にそれは戦力の1つでしかない。団長が前に立つ時は団長が指揮を取ると見られるが、それ以外はロウクさんが指揮を取るに違いない。ロウクさんは知略担当、団長の本当の懐刀はロウクさんだ。
まあでも、それゆえにやっぱり苦労ごとはロウクさんに降りかかっている気がするけど•••。
もうすでに山の麓から山の中まで入り込んでいる。異常な早さの進行具合だけど、魔物や野獣の量も増えて来ている。
それでも騎士団の進行は止まることはない。
いやあ、本気になった騎士団を目の前で見れるのは貴重な経験だなあ。しかし、いつこの局面が落ち着くかもわからない。貴重な経験をさせてくれた騎士団と、苦労人のロウクさんのためにもちゃんとしっかりとフォローをしよう。
「みなさん!魔物や野獣の量が増えて来てます!僕がバフをかけるのでそのままの勢いでいつも通りに行ってください!」
『治癒の女神の加護』を身に宿す。全ての味方を視認、その対象に『身体強化』、『疲労軽減』、『精神力強化』を施す。
「なん、だこれ!」「体が軽すぎる!!」「いくらでも!いくらでも走り続けれるぞ!」
「せ、セイバー殿!!あなたの実力を疑ってすみませんでした!!今はあなたの力、借りさせていただきます!!」
「セイバー君、君は一体•••」
「セイバーお前•••!!」
もちろん団長やゴウにもバフをかけている。反応を見る限り効果がしっかりと付与されてるね。うむ、なによりだ。
「みなさん僕から離れすぎると効果も薄まります!それだけ気をつけてください!」
呼応するかのように騎士団のみんなが声を上げる。騎士団の士気がさらに上がる。
そこからの攻略は凄まじかった。山の上層まで疾風迅雷の如く進行していった。その間に襲って来た魔物や野獣は埃を祓うかのように威にも介さなかった。
ただ、戦って来た騎士団の体力はフォトゥナ様の加護のバフであろうともこれだけやれば中々に消耗している。
「さて、どうしたものか」
今騎士団の状態は掃討役に回っていたロウクさんたちはまあまあの疲労、その代わり団長とゴウはほとんど体力は満タン。しかし、日は暮れ始めている。
ドラゴンが見当たらなければ、日を改めるならここら辺が区切りのいいところではある。
「でも団長、だいぶ魔物とかは減りましたね。今さっきまでまあまあいたのにここら辺は全然いませんね」
怖いくらい、とロウクさんは言う。
瞬間、嫌な予感が全身を駆け巡る。
咄嗟に僕は身構える。団長とゴウも同じく腰に帯剣している剣に手をかける。
急に空気がズシンと、重くなる。
質量的な重さだ。
「な、なにが」「こ、これはなんなんだ」「か、体が、動かない•••」
周りを見ると騎士たちが膝をついている。ロウクさんですらなんとか立っているといった状況。団長とゴウは構えているまんまだが、冷や汗を垂らししんどそうだ。
これは、質量を感じさせるほどの魔力が空気に乗っている。
それほどの、魔力量を持った生物がいる。
「ぼくの住処でちょろちょろしているのは君たちかなあ?」
魔力的な威圧感だけでなく、生命的危機感をも感じさせる圧倒的な威圧感が空から降ってくる。
僕たちの目の前に、巨翼を広げた、ドラゴンが地に降り立った。




