第2章 第4話 【団長】
すごいな•••ゴウの構えに、隙という隙は無い。
みんながスキルを授かって6年。ゴウはこの6年間本当に努力をしたのだろう。
『スキルがあっても持ち腐れてるやつはいるでござるからな。この者は体捌きといい、目線や重心の移動による戦闘の誘導といい、確実に戦士の能力だけでも上位層でござる。絶え間ない努力を続けてきたことがわかるでござるな』
ね。だってそもそもこの歳で中央騎士団の副団長だもん。普通ありえないよ。ゴウの性格が良くて周りに受けいられやすいっていうのもあるかもしれないけど、やっぱり実力でわからせたんだろうね。
『傑物ですな。だからこそセイバー氏、手を抜いたらダメでござるよ』
もちろん。僕だって示さないといけない。あの頃の、根拠のない自身に満ち溢れた、どうしようもないバカでまっすぐな英雄が戻ってきたんだって。
僕は闘気を解放する。
「!?」
僕の闘気の開放にゴウがぐらつく。
「おいおいセイバー!んだよこのプレッシャー!!本当にスキル『なし』か!?」
闘気を体に圧縮させていく。
「そうだよ。でも、今はゴウに力を見せたいと思って躍起になってるだけさ。昔から英雄を夢見た、少年の力をね」
僕は構える。
「ハッ!そんなプレッシャー放ってよく言うぜ!しかも素手かよッ!こっちは使い慣れた真剣だって言うのによ•••大口だけならまだしも、舐めた真似してると怪我するぞ」
「舐めてないよ。僕、武器使うのがちょっと苦手なんだ」
力の加減がよくわかってないと、剣神様によく言われるからね•••。
「ただ、ゴウだって気を抜かない方がいんじゃない?」
瞬間、僕はゴウとの間合いを無くし、拳をゴウの顔面の前に静止させる。
「ゴウは中央騎士団なんでしょ?相手は合図なんて待たないんじゃないの?」
「セイバー•••!!本当に、本当にお前は俺をワクワクさせるぜ!!」
それを皮切りに、僕とゴウの戦闘がはじまる。
ゴウは身を捩り、そのままの推進力を回転に変え、僕の懐にさらに入りこみ、その剣で僕の首を刎ねんとする。
側から見たら一瞬の身のこなし。瞬きをする暇もないほどの速さとはこのことだ。もはや、瞬きをしなくてもこの速さを捉えれる人はどんだけいるかといったレベルだろう。
でもゴウ、僕はその上をいかしてもらうよ。
僕の首を刎ねようと目に見えない速さで突き進むその剣の腹を右肘で小突き、最小限の動きでその軌道をズラす。
極限に自然に滑らか故に、ゴウは剣の軌道を瞬時に修正することができない。
そして僕は、右肘で小突くことによって右手の位置は————正拳突きの構えになっている。
僕は闘気を右拳に集中。
剣の軌道修正を無理やりに行おうとしたことで空いたゴウの腹に、その拳を全力で振るう。
瞬間、ゴウの後ろにある木々が弾け飛ぶ。
「な••••」
ゴウに振るった拳はゴウには一切ダメージを与えていない。闘気を集中させ、その闘気を拳圧に乗せてその後ろの木に流したからだ。
ゴウに力を見せるって言うのもあるけど、ゴウと戦ったあたりからチラチラと気配が漏れてるんだよね。そこの木ら辺から。
まあでもこれで、ゴウとの勝負の勝敗もわかりやすくなった。
「ゴウ、僕の一本だと思うんだけどどうだろう。満足してくれたかな?」
「いや、満足どころか半端ないぜセイバー•••!!負けたってのによ、負けたってのに心が熱くなることを止まらないぜ!!」
「それはよかった。ただ、ずっと僕らの勝負をそこの木からコソコソ見てるあなたは誰だ」
粉砕した木々の粉煙がはれ、隠れていた人物の姿が見える。
「おやおや、よく気づいたね。私は隠れるのがそんなに下手だったかな?」
「団長!?なぜここに!?」
そこに佇んでいたのは金髪の髪を分けた、年齢は30代前半のような、木が粉々になっても顔色を変えていない落ち着きのある人だった。
ゴウが団長って言っているということは————
「すまないね、盗み見するような姑息なことをして。ただ、ゴウ副団長、君のその行為は手順を追ってしなければならない行為だ。本来なら越権行為として報告しなければならないが•••しかし、いいものを見せてもらった。ここは不問としておこう。ところで」
僕の方に向き直る団長。
「セイバー君と言ったかな。申し訳ない、名乗るのが遅れたね。私の名前はユーゼリア・ヴァルデン・ベルアルージュ。僭越ながらゴウ副団長がいる中央騎士団第7組団長を受け持たせてもらっている者だ」
中央騎士団の団長•••。しかもミドルネーム持ち。複妻がいる、大家庭をもつ有権者のご子息ということもわかる。そしてなんだか謙虚。完璧超人か?
『なんだかうさんくさい感じがぷんぷんするわね』
そうですか?いい人に見えますよ?
『セイバーは純粋すぎるのよ。もっと人を疑うことを知りなさい』
神様がそれを言います?
『ただ、只者ではないでござるな』
団長だからね•••でも僕も同じことを思います。ただ立っているだけなのに、構えてすらいないのに、自然と隙がないし、その立ち位置は自然と僕とゴウの死角をいつでも取れるような位置にいる。しかも恐らくこれは無意識下。それだけこの人は戦いに浸っていた濃さが段違いだとわかる。
「ほう?君は不思議な人だね。あんまり会ったことがないような人だ。なんだか、仙人のような風格まである人だね」
ど、どういうことだってばよ。
「じ、時代遅れってことですか?」
時が、止まる。
ユーゼリアはぽかんとした表情をし、ゴウはお前何言ってんだよ的な焦った顔をしている。
一瞬の静寂。
ちょ、待って、僕、変なこと言っちゃった?
『はあ、セイバーは5年ほとんど誰とも喋ってなかったら少し世間とのズレが生じちゃってるわねえ•••天然なところも可愛いんだけどね』
『世間とズレた感覚というのも、それもまた強者のアジでありますよ』
なんか褒められてはないよね?
「ははははは!」
静寂はユーゼリアの爆笑によって破られる。
こんなに笑ってる団長は見たことがねえ•••とゴウが驚いている。いや、僕も突然笑い出してびっくりだよ。
「いやあ、セイバー君。君は面白いね。失敬失敬、ごほん。さっきのゴウ副団長との勝負を見たって言うのもあるけど、そんな面白いセイバー君と仕事をしてみたくなった」
「団長引き抜くんですか!?」
『え!!これスカウトじゃない!?』
『中央騎士団は正真正銘の大手!安泰は確実ですぞ!』
いや、僕ダンジョン攻略したくて冒険者してるんですよ?不安定よりも安定をとる親の気持ちに引っ張られないでください。
「ゴウ副団長、違うよ。セイバー君は強いのはわかったけど、断片的なあんな試合じゃ実力はわからない。そして強いだけで中央騎士団に入れるわけでもない。そう言うことじゃなく、今回のワイバーンの群れの原因を見に行こうと言う話さ」
「ワイバーンの群れの原因?」
確かに、ワイバーンがこんな村にまで来るのは不思議だなって思ってたんだよね。
「ワイバーンの群れが村にまで来るなんて普通はありえない。するとだね、ワイバーンの群れを追い出した原因があると思うのが筋だよね。それを同時に私たちも探していてね、そして遂にそれがさっきわかったんだ。ゴウ副団長のなぜここに、の今更ながらの返事だけど、それを伝えようとゴウ副団長を追って来たんだよ。そしたらこんな楽しいことをしていたってわけだ」
ワイバーンの群れが村に来た原因、なんなんだろうか。
「団長、その原因ってなんだったんですか?」
「それはね、”ドラゴン”だよ」




