第2章 第2話 【ほとんど尋問】
「木の枝でズバッとって、君は武器系統の何かのスキル持ちなのかね?」
「あの、ですからスキルは『なし』なんですって」
「君ねえ。ワイバーンの群れを倒してくれたのは感謝する。しかし、どうやって倒したか言ってもらわないとこちらも報告のしようがないんだ。それとも何か隠さなければならないことがあるのかい?」
何度同じやりとりをしただろうか。
僕を連れて行った壮年の騎士団の方が、ワイバーンの群れをどうやって倒したかを聞くのだが正直に木の枝でズバッとというと信じてもらえずこのスキルありなしの問答を何度も行っている。優しい問答ではあるが、村の部屋を借りて、一室で行なっているためにその光景は尋問みたいに映る。
「隠さなければならないというか、事実なんですって。僕にはスキルがないんです」
「じゃあどうやって木の枝であんな大量のワイバーンを倒したんだい?その木の枝が凄かったのかい?」
「いえ、木の枝は粉々になりました」
「•••まあ冒険者業をしていると、自分の強さも仕事の売りだ。商売道具として色々なことを秘密にすることもあるだろう。私の書類は適当に報告しておこう」
もう、最初からそうしてよ。どうもお国の方というのは融通が効かないというか、マニュアル人間寄りな人がいる気がするなあ。でも、そうやらないと報告することが多いだろうし、そうやって僕らを守ってくれているのも事実だし、マニュアル化されるのもわからないことはないけど、素直にありがたいんですけど•••もう少しなんとななりませんかね?
「ただし、これから副団長がくる。副団長は少し強さにはうるさい方だ。もう少しまともな答えを用意してないとちょっとめんどくさいかもしれんぞ」
あららー?そういうことー?
最後の方は少し小声で言う壮年の騎士。どうやらちょっと厄介そうな人がこの後に待ち構えてるらしい。そのために僕に乗り切れるような答えがでるように手助けしてくれたのだろうか。えー、でも事実は事実だし、どうすればいいの?神様の力をもらってますなんて言ったらまた変な顔されるし、あのあーまた適当なこと言って誤魔化すーみたいな顔結構辛いんだよね。えー、ちょっともう面倒事は嫌よ?
そんな話をしていると、ドアがノックされる。
「入っていいか?」
「はっ!副団長、どうぞお入りください!」
噂をすればなんとやら、副団長のご到着である。
ってあれ?
「ゴウ?」
「お前セイバーか?」
そこいたのは僕の村の村長の息子、そして僕の友達、ゴウだった。
あの少年だったゴウは今は騎士団の甲冑を見に纏い、堂々たる風格があり、実年齢よりも逞しく見える。団を率いる強さが醸し出されている。なんというか、カッコよくなったなあゴウ!
そう言えば、ロイがゴウは中央騎士団のどっかの団の副団長になったって言ってたなあ。まさかそれがここに来る副団長様だったなんて•••。
『運命ね』
フォトゥナ様に言われると言葉の重みが違いますね。
『幸運の女神でござるからなあ』
師匠からもお墨付きを貰うフォトゥナ様。
戦いが終わってからいつもの編成に戻っている神様たち。いつもの編成に戻ってる神様たちってなんだかすごい言葉の並びだ。
「副団長、お知り合いなんですか?」
「ああ、昔の馴染みだ•••」
本当に、昔馴染みだよね。
「お前がやったのか?あのワイバーンの群れを?」
「副団長、木の枝ってズバッとやったらしいんですが、スキル『なし』って言うんですよ。本当ですか?」
「それについては本当だが•••木の枝ってズバッと?」
「そうだよ。木の枝ってズバッとね」
壮年の騎士の方が、ダメだこりゃみたいな顔をして、私は言いましからねって雰囲気を出す。だから事実なんですって。
ていうか若いゴウと壮年の騎士のやり取りの違和感がすごい。本当ならゴウが敬意を表するはずの位のはずなのに、全く逆の対応でなんだか頭が困惑する。でもそれは裏返しに言うと、ゴウはこの若さで騎士団に認められていて実力があるということだ。
偉くなったなー•••なんだか友達の凄さが世間に見つかったのが目に見えてわかって感慨深いぞ。
「木の枝ってお前•••もっと言い訳があるだろ。でも本当にどうやったんだ?スキル『なし』は変わらないだろ?」
「だからズバッとやったんだって。スキル『なし』なのも変わらないよ」
おい、副団長様が来ても永遠ループじゃないか。感慨深さを返してくれ。
「はあ?でも待てよ•••」
ゴウがなんかぶつぶつ言ってるぞ。
「わかったわかった、そういうことか•••!ハッ!ハッハッハッハッハ!」
ゴウが壊れた!
「よーしよしわかったセイバー。まあ強さの秘訣はあるんだろう。だが、こっちも役所仕事でな。ちゃんと報告はしなきゃならないんだ。報告書はなんとでも書ける。だがな、説得力がいるんだよ。だからお前の力を見せてほしい。ワイバーンの群れから村を救った英雄の力をな」
ゴウさん?




