第2章 第1話 【片鱗】
さて、僕は今現在、歩いてとウィンダービンの街からアルセドォワ王国の都市部へ向かっている。
ここから何個か街を越えないと行けないが、まあゆっくりと旅も楽しもうじゃないか。祈祷のダンジョン巡りはがむしゃらにあっちこっち行ってあまりゆっくりすることはなかったからねえ。
『あの頃は怒涛だったわよねー』
でもそのおかげで強くなれました。強くはなれたんですが、ただ、今回思ったのはやっぱり仲間は欲しいですね。
『そうよねえ』
『拙者も、今回のダンジョン攻略でも悪魔戦でも仲間を入れた方がいいと思ったでござるな』
ですよね•••状態異常をくらったとき思いました。もちろん、アスクレピオス様がいれば大丈夫なのですが、回復していたらそれが隙になるのもまた事実ですからね•••。あの時に同時に回復できたらなと思ったんですが制約もありますし。
そう思うと今1番考えられるのは回復師ですかね?
『セイバーはあなた自身が強いし、支援といっても全部自分でバフをかけようと思えばかけれるし•••そう思うとあなたの言うとおりヒーラーがいいかもしれないわね』
『状態異常や回復については、それもまた人の成長といって、アスクレピオスはうるさいでござるからな。例えセイバー氏であっても喰らわないようにするなんてことは相当なことがないとしない気がするでござるな。そこは揺るがないのが神たる所以でもござろう。だから、セイバー氏のいうヒーラーを仲間にするのは良い案と思うでござるよ』
よーし、じゃあとりあえずはヒーラーを探しながらダンジョン攻略しつつ都市に向かいますか!
とは言っても、もうウィンダービンの街からはだいぶ離れており、小さな街のような場所に着く。
とりあえず、ここで次の場所にあたりをつけていこうかな————
「号令!!号令!!ワイバーンの群れがこの先の村を襲っている!!行けるものは直ちに向かうようにいいいいいい!!!」
ワインバーンの群れ!?
僕は考えるまでもなく、『武神の加護』の恩恵を受け取り、闘気を身にまとい走り出す。
ここでゆっくりするのも一瞬だったなあ。しかし遠くなっていくその街も慌ただしく、武装している人たちがこちらに向かおうとしている。
緊急事態なのは確かだ。
ワイバーンの群れが人里を襲うなんてとんでもなく大事だ。
『武神の加護』による気配察知でワイバーンの群れがどこにいるかを把握する。
ここら辺ではなく、もう少し先か————。
ワイバーン、それは龍種の一種。別名は二足龍。二足龍と言われるように一般でいう龍種に比べて2本の足しかない。また、龍種は神性であるが、ワイバーンは魔力汚染された龍の一種であるとされており、魔物の位置付けである。神性の龍は言葉を紡ぎ、時に人を発展させ、時に災厄にもなり得る。しかし、ワイバーンは言葉は紡がなく、その動物本能だけを残し狩に特化している。狩の時には群れで過ごすのが多いが、人を食べて満足するような体格ではないからあまり人里には来ないはずだが•••来てしまったら仕方ないし、とんでもない被害にもなり得るのも確かだ。村が無くなるなんてこともなくない、早く、急がなきゃ————。
魔物はダンジョンモンスターとは少し違う。
この世の中は魔力に満ち溢れている。魔力で成り立っていると言っても過言ではない。それ故に魔力のしこりによって地上では魔力汚染される生物がいる。そういった生物の派生が魔物である。
ダンジョンモンスターはその名の通りダンジョンのモンスターであり、ダンジョンで生成されたモンスターである。
どちらにも各地で似たような種類がいるために系統立てられている種もいるが、ダンジョン自体の性質に左右されるダンジョンモンスターの方が系統の中でも秀でた特殊な個体が多いのがダンジョンモンスターの特徴である。
ウィンダービンで倒したリーパーなんかも幽体系の一種であるが、その中でも強い個体と言った感じだ。
その点、魔物は地上の生物を軸に置かれているために突飛した個体は少なく種類として括りやすい。しかし、突然変異で群を抜いた個体が現れることがあり、それを”名前付き”として区別している。ダンジョンモンスターと違うのは魔力汚染されている故に、ダンジョンモンスターよりも魔法を豊富に使えることだ。
ワイバーンはネームドではないが、ベースがベース故に魔物の中でもネームドレベルの強さ。そこにさらに魔法的咆哮の脅威もある。
さらに足に力をいれ、速度を増す。
気配察知で一直線に目的地まで向かう。
全速力でその村に着いた時、ワイバーンの群れは確かにいた。空中にのさばるワイバーン•••その数はぱっと見でも10どころじゃない、20近くはいる。
そして、その場は悲惨になりつつある場面だ。
村の戦える者たちのワイバーンに対する抵抗。増援も来ているがワイバーンの数に対しては全然足りていない。
ところどころでワイバーンに連れ去られ、捕食されている者もいる。
ブレスで焼き払われてないのが不幸中の幸いであるが、血の海になる一歩手前の状況だ。
『セイバーどうするの!?』
まずは闘気を開放してこちらに全部敵意を集中させます!その後は、”剣神・タケミカヅチ”様の加護、【剣神の加護】を頂きます!!
『では拙者と交代でござるな!』
はい!!では行きます!!
闘気————全開放————!!!
大気が揺れるかと錯覚するような圧力。今まで悲惨だった現場の時が止まったかのように動かなくなる。
しかし、脅威だと認識したワイバーンは村に見向きもせず、恐れることなく、その狩の本能を、群全体で僕にぶつけてくる。
さすがに20体に迫るワイバーンの殺気は毛が逆立ち、頭の後ろがピリピリとなるような臨場感になるな•••。
僕はそこら辺に落ちてある木の枝を拾う。
ただ、それを乗り越えてこそ、英雄だ!
腰を落とし、居合の形を取る。
タケミカヅチ様、開放します。
『セイバー久しぶりだなあ。ちったあ漢のツラになってきたじゃねえか。ちとおめえは剣術が下手だが、この状況はうってつけだな』
ワイバーンの全群れが僕に迫り来る。
殺気の塊が押し潰されるように降りかかる。
その絶体絶命の状況に肌がさらにひりつく。
でも、そんな絶望的状況だからこそ、感覚が鋭くなる。
自分の呼吸の落ち着き、風の流れ、ワイバーンの動き、全てが手に取るようにわかる。
いくぞ。
『あまり斬りすぎるなよ』
一閃。
瞬間、全てのワイバーンの首が斬り落ちる。
一瞬故に斬られたことがわからないのか、翼を若干はためかせるも、だんだんと歪なはためかせ方となり、その体がもう動くことができないことを知ると果実が木から落ちてくるようにボタボタとワイバーンの死体が空から降ってくる。
そして僕の拾った木の枝は、剣術に耐えれなかったのか粉々になっていた。
『ふははは。やっぱりセイバー、おめえは剣術が下手だな。繊細な動きが全然できねえ。大振りしか脳のないブンブン剣術だ。ただ、その斬るということに対しての技術はピカイチだな。なんせ、木の枝で仮にも龍種をひとまとまりにぶった斬るんだ。普通ありえねえ光景だ。ま、さすが俺の弟子といったところだな』
タケミカヅチ様にはなかなか及びませんね•••自分の不器用さを感じます。ただ、それだけまだ伸び代があると僕は思っています。
『ふははは。向上心があるのがおめえのええとこだな。ま、こういう手加減できない状況じゃないとおめえの剣術は使えないが、こういう状況だとアホみたいに役立つ。これからも精進するように』
今回はワイバーンが相手だったから空中でまとめて仕留めれたけど、地上戦なら手加減が出来ないので村ごと斬ってしまっていただろう。うーむ。まだまだだ、僕。
ちゃんとした反省は後にしよう。
とりあえず、ワイバーンは全滅させれたかな?
周りを見てみるともう脅威はなさそうだ。
しかし、ある意味血の海になっていた。
ワイバーンの頭と死体が転がっている血生臭いこの状況は、まあそれはそれはあんまり気持ちのいいものではない。
脅威はさったけど、次は後片付けだな。
村の人に話しかけようとすると、村の人は完全に僕にドン引きしていた。
ちょ、ちょっとみんな?今さっきまでワイバーンに向けてた目線が僕に向いてないですか?
そして大量の馬の足音と共に派遣された自警団や騎士団、そして冒険者が到着する。
「おいおいどうなってんだよ」「ワイバーン全滅してるじゃん」「え、ついさっきに襲われてたんだよな?」「どうやって処理しだんだ?」
「誰か!状況を説明してくれないか!?」
綺麗な甲冑を着た騎士団と思われる、壮年のおそらくここでのリーダーだと思われる人が響き渡る声で尋ねる。
「こ、この村の村長です•••あの、ワイバーンを倒したのはそ、その人です」
尊重と名乗る人物が、恐る恐るといった感じで僕を指差す。
ちょっと?その指の差し方は犯人を指すようなテンションですよ。
「貴殿が?みたところ1人でどうやって?」
「木の枝、でです」
ちょっと?村長、それ嘘ぽく聞こえますよ。と思ったけど、本当だけどどう事実を伝えても嘘に聞こえてしまう。不思議。
「木の、枝?」
ざわざわとし始める皆さん。気、気まずい。
「よし!とりあえず今は村の復旧だ!村のみんなの手当てと壊れたものを最低限復興させるぞ!」
どうやら無かったことにされたらしい。
「あと貴殿には聞きたいことがあるからこっちに来てもらう!」
どうやら無かったことにはされなかったらしい。大丈夫、真実をしっかりと話せばわかってくれるはずだ。大丈夫、だよね?




