第1章 【ロイの冒険】
それから、セイバーを打ち上げに誘って、久しぶりに色々話したな。ていうか、ちゃんと話したのは初めてかもしれない。子供の時、別によく遊ぶ友達ではなかったからな。ただ、そんな仲でもやっぱりあいつはみんなの”英雄”だった。まあ、中にはそう言うのが鬱陶しいって思う奴もいたし興味がない奴もいたけど。
打ち上げの途中は全く記憶がないが、ダンジョンを攻略してみんなにちやほやされて気分が良くなったのは覚えている。
記憶がはっきりしてのは打ち上げが終わって帰る時だ。
ウィンダービンの風が心地よくて、頭が冷静になっていくのが身に沁みた。
俺はセイバーをパーティに誘おうかどうか迷っていた。それはなんとなくだ。セイバーが強いからってのもあるし、セイバーの活躍を側で見たいってのもあるし。ただ、俺はこの今のパーティで上に上り詰めたいとも思っている。強いから、憧れだからでメンバーを増やす時期ではないのもわかる。
だからなんとなしに聞いてみた。
「んで、お前これからどうするんだ?」
本当になんも予想としていない質問だ。
「とりあえず、中央都市に向かうよ。アルセォドワ王国の中央に行けばたくさんダンジョンがありそうだし、そこに行くまでにもダンジョンがありそうだし。潜りながら向かうよ」
は?
俺はパーティメンバーと顔を見合わせる。
「そ、ソロで見つけたダンジョンを全部攻略していくのか?」
こいつアホなのか?
「とりあえずは?」
セイバーはきょとんとまるで人ごとのように話す。こいつ、本気だ。
やばい、なんか取り繕うと思ったら引き攣った笑顔しか出なかった。それくらい衝撃的なことを言ってるぜセイバー。だが、それでこそ”英雄”だ。
「それを本当にできるならイカれてるぜセイバー•••ただ、さすが俺たちの英雄だ」
それでもことの大きさをわかってなさそうなセイバー。おいおい本当にわかってねーじゃねえのかこれ?あ、そういやこいつ会った時に冒険者登録してたな。ダンジョン攻略についてなんもわかってねーんじゃねえのか?
「んだよその顔。なんもわかってねえみてーだな。ダンジョン攻略っていうのはな、友達の家に行ってきまーすみたいな感覚じゃねえのよ。入念な情報収集と準備と覚悟がいるわけよ。んで、それしながらダンジョンボスと連戦連戦なんて、死ななくても死ぬぜ?」
「そんなもんじゃないの?」
なんだよそれ。
「はあ?お前なあ•••」
いや、待てよ。
「いや、セイバーお前、『石畳の都市』の最終層まで1人できてたな。しかも、その後悪魔とかいうやつと戦ってよ」
最終層に、俺はセイバーが簡単に近道できるラッキールームから来たと思っていた。でも、それが俺たちが通ってきたレベルの部屋の連戦をちゃんと終えてきたのなら。そして終えてかつ、ほとんど無傷だったのなら。
想像して、その想像を絶することに、鳥肌が立つ。
俺は思わず、パーティメンバーたちと顔を見合わせた。
言葉には発さないが、俺たちの考えを過ったのは、セイバーが本当にソロで連戦部屋を乗り越え、尚且つあの悪魔を倒したと言う”本物”だということ。お前、どんだけ強いんだ?
「お前、今どんな強さなんだ?」
「どんな強さ?うーん•••いやあ、わかんないなあ」
笑って誤魔化すセイバー。本当にわかってなさそうだなこいつ。なんだか、調子が抜けたな。こいつをパーティに誘おうと思ったけど、違うわ。こいつの強さは未知数だ。明らかに常軌を逸している可能性も高い。そんなやつに合わせるのもこっちが苦労するし、何よりもやっぱり俺は今のパーティで上を目指してえ。改めてそう思ったな。
その後は他愛もない話をして、そんでセイバーの宿を超えた先に俺たちの宿があるから途中でわかれた。
「よかったのか?」
少し経って、俺たちの宿までの間パーティの奴らから聞かれる。
「何が?」
「あいつを俺たちのパーティに誘わなくて」
さすが、一心同体の俺たちだぜ。
「おいおい、よく俺が誘おうとしてたのわかったな」
「そりゃ告白せる前の男みたいにそわそわしてからな。こっちがもどかしかったぜ?そんでちょっとキモかったぞ」
めっちゃきめえじゃねえかよ俺。
「おい、恥ずかしいこと言うんじゃねえよ。まあなんだ。そう思ってたこともあったけど、やっぱりちげーなって思ったんだよなー。お前らも思ってると思うけど、まずあいつの強さが未知数すぎる。ここからあいつに合わせるのはめんどくせえし俺たちに合うかもわからねえ。後はそうだな」
これも恥ずかしいけど、まあ勢いだ。
「やっぱりこのメンバーで上に行きてえって思ったわけ」
パーティメンバーが面食らった顔をする。その後にメンバーたちは笑い出す。
「やっぱり今日のお前、ちょっとキモイぞ」
うるせえ。
ま、休んで、明日からまたしっかりダンジョン攻略へと勤しみますかね。そしたらいつかまた会えるだろう————”英雄”に。




