第1章 第13話 【打ち上げ】
村の子に肩を貸して街まで戻る道中。
「おい、セイバーお前打ち上げくるだろ?」
「打ち上げ?」
ダンジョンから出ると、すっかり日が沈んでいる時刻だった。どうやら1日中ダンジョンの中にいたらしい。
「ダンジョン攻略したんだ。今日は朝まで飲み明かすぞ」
このアルセォドワ王国でお酒が飲めるのは18歳からじゃなかったっけ?とか、僕がいってもいいの?とか、色々思い浮かぶけど、まずは心配が出てくる。
「その、大丈夫なの?」
「なにが?」
「体だよ。相当無理したんでしょ?休んだほうがいいんじゃないの?」
村の子が目を見開き、ぷっと吹き出す。
「おいおい、お前が全部治してくれたじゃねえかよ!ただ、ボコボコにされたのはお前の分もあるけどな。でも、おかげさまで体はぴんぴんだよ。もうびっくりするぐれえ真っ白けっけだぜ!本当になにしたんだよってぐらいだ。でも、すげえ疲れは残ってるから一旦休んで、夜集合ってわけよ!」
肩を貸しながら、村の子は笑う。
「そんで、そんときにお前のこと教えてくれよ。無理に、とは言わねえからさ」
僕のこと、か•••。言ってもいいんですかね?
『いいんじゃない?』
神様が干渉してきてるのってまずくはないんですか?
『『スキル』の時点で神が与えたものなんだから、問題ないでしょ。それよりも、悪魔が復活しそうなことを言ってほしいわ。ダンジョン攻略で悪魔に取り込まれないように注意喚起をして頂戴』
確かに、そっちの方が重要だね。
『本当に、今でもなんでもない悪魔ならダンジョンと共に滅びるはずよ。でも位の高い悪魔なら、ダンジョンの封印から抜け出す方法を考えているようね。もう、厄介だわ』
『拙者たちの干渉は『スキル』のみ。向こうは実体化できそうなので、早急に皆に知らせる必要がありますな』
『他の神たちも何人かに神託として降ろしているようだけど、まだまだ広がってはないようね』
わかりました。とりあえずは色々言ってみます。
「どうした?そんな考えることか?」
「いや、ちょっとね。打ち上げ行くよ。また集合場所を教えてよ、ロイ」
「お前•••俺の名前覚えていたのか?」
そりゃ昔遊んだ仲だからね。
「まあスキル授与式の時のことは強烈だったからね」
ちょっと嫌味を言ってみる。
「はっ、俺は謝らねーぜ?俺もお前に期待してたんだぜ?本当にショックだったからな。お互い様ってやつだ」
なんというか、ありがたいと言うか、ありがた迷惑というか、勝手に期待されても、というか。でも僕もそう言うもの含めて全てを背負って英雄になる気満々だったから勝手に期待させてたのも事実だ。
そうだね•••うん、確かにお互い様だ。
今はもうただの戦友。それこそ、子供のごっこ遊びじゃなくて、本当に共に戦った、戦友。
お互いに笑い合う。お互いに、生きてる証拠だね。
▽
約束の時刻を告げられたのは日を超える真夜9つの時刻。とんでもない集合時間だ。
場所は冒険者ギルド内にある酒場。
どうやら冒険者ギルドの兼用の酒場は1日中しているらしい。いつでも打ち上げが可能だ。だからいつ行っても冒険者ギルドは酒飲みがいる、らしい。日中問わずどんちゃん騒ぎ、冒険者らしいし、とても活気があって楽しいね。
僕も宿でお風呂に入ったりして休み、打ち上げに参加すべく冒険者ギルドへ向かう。
お風呂で温まった体に、そよ風があたりとても気持ち良い。
夜風に身を包み、歩きながら少し疑問に思ったことを神様たちに聞いてみる。
今さっき神様たちは『スキル』しか干渉できないって言ってましたけど、僕ってどうなってるんです?
『セイバーはね、ちょっとよくわからないのよ』
『なぜか干渉できるって感じですな』
え?でも神託は下ろせるんですよね?それって干渉じゃないんですか?
『神託はある『スキル』持ちにしか無理なの。その『スキル』を依代に、扉を開くような感じで神託を降ろすと言った感じよ。干渉といえば干渉だけど、一方的で向こうからしたら幻覚を見ている感じかもしれないわね』
『セイバー氏はおそらく、拙者たちの魔力の残滓である『祈祷のダンジョン』に1日中長年いたことにより魔力汚染のような状態になって、拙者たちの干渉を受け入れる体質になったのかもしれませぬが•••よくわかりませんな!』
なるほど。なるほど?
『まあなんにせよ、セイバーの状態は今となっては悪魔たちにとって不都合よ。セイバーには負担ばかりかけるけど、これからもよろしくね』
いえ!そのために強くなりましたから!全然任せてください!
どんな悪でも強敵でも退いてこその、英雄だ。
そんな事を喋っていると冒険者ギルドにつく。
ドアを開けると、とんでもない熱気が体を貫く。今はもう日を越しているというのに、冒険者でひしめき合っている。前とは打って変わってみんなでどんちゃん騒ぎだ。
「にゃー!セイバーさん!大反響ですにゃ!パーティ”からくり”がダンジョンを攻略したからですにゃ!もうみんな好き勝手ですにゃ!」
そこにはビールのグラスを大量に持ち運んでいる猫の獣人族の受付嬢が目を回しながら右往左往している。
ダンジョンを攻略したら、そんなに盛り上がらないかと思ってたけどこんなに盛り上がるのか。ていうかロイのパーティの名前って”からくり”っていうの?刃物使いでいろいろな刃物を取って変わって使えるからかな?
まあそれにしても大盛況だ。
「すごい盛り上がりですね」
「ダンジョンが攻略されたら次は残されている宝探しですからにゃ!みんな大盛り上がりにゃ!酒場は仕事の範囲じゃないのに私たちも駆り出されてる始末•••目がまわるにゃ〜」
そう言いながらビールの空きグラスと新たなビールをとりにどこかに行ってしまった。
あっらー、どうしよう。
「おい!セイバー遅えじゃねえか!こっちこいこっち!」
喧騒の中に居場所を見つけようとしていると、僕を見つけたロイが大きな声で僕を捉える。
なんだかロイがハイテンションな気がするけどきっと気のせいだろう。
「いやー、すごい盛り上がりだよね。圧倒されちゃったよ。ロイ何飲んでるの?」
「ジュースだよジュース!」
本当に?
「本当にジュースだよ。この場に酔ってんの」
ロイのパーティメンバーがこそっと教えてくれる。
「まあ後は、こいつの憧れが帰ってきたからじゃねえかな?」
ロイの方を見るとロイが他の冒険者たちと笑い合いながら飲み食いしている。僕と会った時は常にしかめっつらをしていたロイしか見てなかった。今はつきものが落ちたかのようにスッキリしている。
ロイに色んなことを喋ろうと思ったけど、こりゃ喋るタイミングないな。
「それにしてもよ、あんたスキル『なし』なんだろ?あの強さはなんだよ?」
ロイのパーティメンバーからいい質問を投げかけられる。そうだ、メンバーに言って後で伝えてもらおう。
「えっと、色々と複雑なんだけど、簡単にいうと僕は神様から加護を頂いてるんだ。それでなんとかやれてるって感じかな?」
しばし、ロイのパーティメンバーが面食らったかのような顔をして笑い出す。
「いや、そりゃなんだよ」「まああそこまで強かったらそう言って強さの種を隠さなきゃなあ」「確かに、そうでも言われねえと納得できねーわ」
笑い合いながら何かを納得される。これ、僕が嘘ついてるって思われてるぞ。うん、でも自分で言ってみて思ったけど、側から見ると完全に言動がおかしい人だ。僕もこんなこと言ってる人いたらあ、変な人だなって思っちゃう。
まあそれは信じても信じられなくてもよくて、もうひとつ重要な、悪魔の件について話しておこう。
「そういえばさ、ロイがおかしくなったじゃん?」
「ああ、確かにダンジョンボス倒してからおかしくなったな」「あれなんだったんだ?」「ボスの最後の能力か魔法か何かか?」
「他のダンジョンでもこういうことが起きてるらしんだ」
他の冒険者が騒いでる中、ロイを除くメンバーは黙って話を聞いてくれる。ロイは他の冒険者と相当浮かれている。実に楽しそうだ。よし、あとでちゃんと教えてあげてくれ。
「原因はダンジョンボスを倒した後のボスのドロップアイテムや魔道具に、”悪魔”が潜んでいるって説がある」
「悪魔あ?」「神話の御伽噺じゃねーかよ」「でも待てよ•••あの変になったときも悪魔ってあいつ言ってたよな」「悪魔の復活がなんとかーってな•••」
みんなが顔を合わせる。
「まじなのか?」
僕はこくり、と頷いた。




