第2話(中編1) 意外と世界は狭いと実感する系ラブコメ
放課後、いつも通りカフェのテーブル席に座る俺。ただ今日はいつもと一味も二味も三味も違う。人を待っているのだ。
「あ、四葉君、おまたー」
声のする方を振り返るとそこには綺麗な銀髪を一条さんと……一条さんと顔の似てるサラサラな黒髪ロングの背の高い美女がいた。
「えっと、こちらの方は?」
「あー、こっちは私の妹の一条八戸!」
「あ、妹さんでしたか。僕は一条さんと同じクラスの黒羽と言います。よろしくお願いし……妹⁉︎ お姉さんじゃなくて⁉︎」
嘘だ、身長が一条さん(二戸)の方が圧倒的に小さいだとッ!!
「こ、こんにちは、妹の一条八戸です。よろしくお願いします」
八戸さんは俺の名前を聞いて一瞬驚いたが、すぐに落ち着いた表情に戻った。
「身長が低くて悪かったね!」
一条さん(姉)……姉条さんは頬を膨らませて不満気にこっちを睨んでくる。可愛いかよ。
「ごめんごめん。で、相談事っていうのは?」
「私のことじゃなくて妹のことなんだけど」
姉条さんはチラッと、妹条さんを見る。
「今、お付き合いしてる彼氏がいるんですけど……彼氏に飽きられちゃったのかな、と不安になってしまい姉に相談したんです。そしたら知り合いに恋愛マスターがいるから紹介するって言われて」
「ちょっと待っててね」
俺は姉条さんに手招きして少し離れたところに移動する。
「俺って恋愛マスターだったんですか?」
俺の小さい頃の夢はポケモンマスターだったけど恋愛マスターになった覚えはないんだけどなぁ。
「四葉君、私にアドバイスくれたし恋愛詳しそうだから相談相手にぴったりかなぁって思って。……それに私は恋愛に詳しくないから失敗したわけだし」
一条さんの目から光が消えてどんどん暗く虚な目になっていく。
ていうか、この人失恋したニ日後くらいに妹から恋愛事情について相談されたのかよ。良いお姉ちゃんしてるなぁ。
……この人前世で何したんだよ、辛すぎだろ色々と。
「ま、まぁ相談くらいなら喜んで乗るよ」
こ、断りずれぇ……。まぁ相談を断るつもりはないけどさ。
「お待たせしましたー。それでなんで彼氏に飽きられちゃったって思ったんですか?」
「実は一週間ほど前からですが、キスの回数が少なくなったんです!!」
「「へ?」」
それだけ?
「男の人と付き合うのはOKしたけどそこまでは認めてません。ちゃんと清い交際をしなさい!!」
姉条さんはお怒りのようだ。シスコンかよ……、なんだか謎のシンパシーを感じるぜ。俺は別にシスコンとかじゃないけどね!
「えっと……それだけですか?」
「それだけって⁉︎ 前までは一日に三回以上してたんですよ!! それが今は一日に一回あるかないかぐらいで……」
ただのラブラブカップルじゃねぇか。
「よくお聞き八戸、告白した相手の性対象が違くてフラれた女の子も世の中にはいるのよ。そんな相手の前であなたは惚気たっぷりの恋愛相談することができる⁉︎」
現在進行形で行われてるなぁ……。
にしても、どうやって回答すれば良いのだろうか? 普通にラブラブカップルみたいだし。助けてラブコメ漫画!!
俺は全力で週刊誌に載ってたラブコメの内容を思い出す。
謎は解けたぞ!! まるで小一のガキンチョに麻酔針を撃たれたかのように閃いた。
「謎は解けました!! 二人ともちょっと待ってて」
カウンターから厨房に行き、階段を上がってなおねぇの家のドアを開けて閉める。
キュイーーーン。コナン君ならこの後は謎解きタイムが始まる。謎解きはcmの後で!!
■
俺はなおねぇの家に置いてた鞄から取り出したスマホを一条姉妹に差し出す。真実はいつも一つなのだ。
「「これは?」」
「ふっふっふ、これはですね先週の漫画雑誌です」
俺は電子書籍で先週の漫画雑誌を開いて見せる。
「最近若者に人気のこのラブコメ『胃袋を掴んだら心も一緒に掴んでいた』のこのページを見てください」
俺はとあるコマを指差す。
「このシーンはですね、主人公とヒロインが一週間ぶりのキスにいつもより特別なものを感じる話なんですよ。普段は頻繁にキスしてるのに、回数を少なくするとキスの重みが変わる的な」
姉条さんはあまりに甘々な話にダメージを受け、耳を塞いでいるようだ。失恋した人の前でラブコメの話をするのはダメか……。
「つまりですね……、あなたの彼氏はおそらく『胃袋を掴んだら心も一緒に掴んでいた』に影響されているということです!!」
ビシっと、指を突き出しドヤ顔をする。
「な、なるほど。確かに今週のキスは回数が少ない分、いつもよりドキドキしたしキュンキュンしました……」
再度、姉条さんは耳を塞ぎ出した。家族のイチャイチャ事情なんて知りたくないよなぁ、俺もなおねぇと春人の野郎がイチャイチャしてるの見ると脳が震えるし。
「相談に乗っていただきありがとうございました、彼氏と付き合い始めてまだ一ヶ月くらいしか経ってないので色々と不安だったんですありがとうございます!!」
一ヵ月でそんなにラブラブなら多分大丈夫だろ……。
「お姉ちゃんは認めません!! 今度彼氏さんを私に合わせなさい。八戸を幸せに出来るかお姉ちゃんが審査します」
それって何やっても認められないやつじゃん……気持ちは分かるけど。
「にしても四葉君凄いね、よくラブコメのシーンを覚えてたね!」
「俺の弟がこのシーンを見て何か考え込んでたから印象に残ってたんだよ」
「弟さんと一緒に漫画読んでるんだ、仲良いね」
ん、なにか引っかかる気がするけど気のせいかな?
「弟も最近彼女が出来たっぽくてね、最近は恋愛ブームでも来てるのかな?」
「……私もブームに乗っかってフラれたしね」
やべ、また地雷踏んじゃった。フラれたしねの「しね」が「死ね」に聞こえたのは俺の気のせいかな?
「話は変わるんですけど、四葉さんとお姉ちゃんはいつから付き合ってるんですか?」
「「は?」」
……。
…………。
………………。
「えっと、俺と一条さんは付き合ってないんですけど」
「四葉君の言う通りだよ、何言ってんの⁉︎ 四葉君とは友達?みたいな感じだよ!!」
俺と一条さんは友達になってたらしい。この調子だとブラザーになる日も近いかもしれない。
「あ、違ったんですね、ごめんなさい。私の彼氏と四葉さんの顔が似てたので、お姉ちゃんの彼氏かと」
「まぁ、私と八戸は趣味嗜好が似てるけどさ、流石に恋愛観とかタイプの男性は違うでしょ」
ナチュラルに「お前はタイプじゃない」と言われた気が……、まぁ別に良いけどね!
それよりも何かが俺の中で引っ掛かってる気がするんだよな。俺の名探偵の勘が何かを告げているのだが……。
「あれ、八戸じゃん。ここのカフェ知ってたんだ?」
長年聴いてきた家族に似た声が聴こえてくる。まさかね……。
「あれ、この人達は八戸の知り合……に、兄ちゃん⁉︎」
そこには最近彼女持ちになった俺の弟、四葉白羽がいた。
それと同時に、頭の中に散らばったピースがハマった音がした。
意外と世界は狭いんだなと思いました、まる。
あれ? 世界って思ったより狭いかもしれなぁい。




