第2話(前編) 意外と世界は狭いと実感する系ラブコメ
なおねぇのカフェと俺の家は徒歩三分くらいの距離にある。というか、祖父母の家も割と近い位置にある。
四葉家は昔からここら辺の土地で暮らしているのだ。だからなおねぇの家に泊まっていくこともあるんだけど……。
「お帰りなさい、春人さん!」
「ただいま奈央さん、今日もカフェのお仕事お疲れ!」
二人は数秒間見つめ合うと互いの唇と唇をくっつけて舌を入れ合う。
「ストーップ!!!!」
俺が大声を出すと二人とも頬を赤らめて急に恥じらい出す。
「……や、やぁ黒羽くん来てたんだね」
「来てたんだねじゃないですよ!! 普段からこんなことやってるんですか⁉︎ 大体なおねぇに関しては俺がいること知ってたよね⁉︎」
「ごめんごめん、頭が春人君のことでいっぱいになっちゃって」
……水野春人。こいつこそが諸悪の根源であり、なおねぇの夫である。良く言えば、性格もよく、顔も割りかしイケメン、エリート社員の優良株だ。悪く言えば、綺麗事を履いてる、顔が無駄に良くて、働くことしか脳のないカス。
「今日はもう帰るけどあんまりハメ外さないようにね」
「「はーい」」
俺は荷物を鞄にまとめて出て行こうとする。ていうか、この場所から早く出て行きたい。脳が破壊される。
二人とも俺の後ろでチュッチュラブラブしてる。
一回想像してほしい。自分の姉が彼氏とイチャイチャしてる姿を見て喜ぶ弟がどこにいるのだろうか? 大体、なおねぇは春人の野郎の前だとキャラ変わりすぎだろ。
「はぁ……」
どうせ今夜もお楽しみになるんだろうなぁ。頭を抱えながら俺は階段を降りた。
■
「ではこれから第123回水野春人暗殺会議を開きたいと思います」
「勝手に変な会議開かないでくんない?」
俺の弟……四葉白羽は冷静にそう返す。
「兄ちゃんのシスコンもそこまで来ると病気の域に達してるよ……。正直ドン引きだね」
「別に本気で言ってるわけじゃないって、ただリア充うぜぇって思っただけだし」
ちっちゃい頃は「大きくなったら奈央お姉ちゃんと結婚する!」って言っても頭を撫でてくれたのに!! と心の中でシスコンをかましながら誤魔化す。
「ていうか、兄ちゃんもそろそろ彼女作ればいいんじゃない?」
「作れば? じゃなくて作れないの」
大体お前も彼女いないだろ。
「兄ちゃん色々と拗らせてるからなぁ」
「俺もお前も彼女いない同盟じゃん。俺が拗らせてるのならお前も拗らせてることになるぞ、QED証明終了」
超早口で天才的な解答を述べてみたが……俺ってラッパーにでもなれるんじゃね? 滑舌良すぎだろ。
すると白羽は俺から目線を横にずらす。そしてピューピューと口笛を吹き出す。
「お前、まさか彼女できたのか⁉︎ おい、裏切ってないよな⁉︎」
「なんか、風呂入りたくなったから先入ってくるわ。お・に・い・さ・ま」
ニヤニヤと勝ち誇った笑みを浮かべて逃げる白羽。
「おいちょっ、待てよ」
……もしかして四葉家で独身なの俺だけ?
現実逃避混じりにスマホを開くとラインからの通知が画面に出てきた。一条さんからだ。よろしくというスタンプが送られてきてる。
俺は友達追加のボタンを押して、広告会社と友達になることでゲットできるスタンプを送り返す。
『明日相談したいことがあるんだけど放課後空いてる?』と一条さんからメッセージが送られてきた。
ここ最近の放課後はずっと一条さんに会ってる気がしてる。やれやれ。
斉木楠雄みたいに「やれやれ」しつつも、俺の頬は緩んでる。案外、一条さんと話すのが楽しみだったりしてるのかもしれない。
「『ok』っと」
俺はラインを閉じてソファーに寝転がりながらテレビをつける。
うわぁ今の時間帯面白い番組やってねー。チャンネルをコロコロ変えながらスマホを弄り直す。
スマホを閉じたばっかなのにすぐ開いちゃうよなぁ。このままいくと俺の嫁はスマートフォンかもしれない。
にしても本当に面白い番組やってないなぁ。
「そんなにニヤニヤしてどうしたの兄ちゃん? この番組そんなに面白かった?」
「別にー」
ニヤニヤ




