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シャーリーのリスタート  作者: 小松しの


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9/49

サンドナでの調査〜リカルド〜


よろしくお願いします



 シャーリーの脇腹を見たっていうのが衝撃だったのか、サイラスは力なく椅子に座った。ミーシャはすかさず隣の椅子に座る。リゲルは無言でこっちを見る。

 

「さっきの食堂、周りの客達は俺のことを気にしてるようだったが、何故だ?」

「こんな町に余所者が来るなんて珍しいからだろう?」


 リゲルが冷静に答えた。

 

「シャーリーの話が聞かれたくないって感じだったけど?」

「···そんなことないだろ」

「俺の雇い主がマイケルさんの知り合いで、その主の代わりに探していたんだが、偶然シャーリーと会うことができた。聞いたらもうマイケルさんは死んでるって聞いて驚いたんだよ。マイケルさんとシャーリーは、ここでどんな生活してたんだ?」


 ちょっと嘘を入れながら聞いてみる。


「お前の主がマイケルさんの知り合い?どこの繋がりだよ」


 リゲルは冷静だな、本当に。


「マイケルさんがまだ赤ん坊のシャーリーを連れて俺達が住んでいた町に来たんだが、主が悪い奴らに襲われて金を取られちまってな。その時に金を貸してくれたんだよマイケルさんが。で、金を返すために探していたんだ。手掛かりはマイケルという男と娘の名前がシャーリーだってこと」

「いくら借りたんだ?」

「金貨七枚」


 なかなか大金だ。これなら返そうと探しても不思議ではないはず。

 

「主はそんな大金を借りっぱなしだったから、気になって仕方なかったんだと。生活に不自由してなかったか」


 三人は黙ってしまった。陛下の様子から、マイケルは人間的に出来た人だったと思われる。

 このくらいのエピソードはありそうなんじゃないかと思い、咄嗟に創り上げた。


「私はそのへん詳しくないから帰るね」


 ミーシャが抜けた。あの女はいいか。

 リゲルも椅子に座り、少し考えている。

 

 暫く沈黙の後、サイラスが口を開く。


「どこでそんなことが?」

「王都に近い町だ。大雨の日にいきなり襲われて困っていたら、マイケルさんがお金を貸してくれてそのまま何処かへ行ってしまったって。雨の中だったから顔がよく見えなかったけど、腕の中の赤ん坊をシャーリーって呼んでいたって。ああ、もう一人男がいたらしいけど、そいつの名前はわからないな」


 情報を小出しにしてみた。

 もう一人男がいたという所で、リゲルがこっちを見た。

 ああ、ナモシェンド子爵はこの町にまで来たんだな。


「シャーリーは、町長にも世話になったって言ってたな。明日で良いから、町長の家を教えてくないか」 

「···明日、迎えに行く。宿屋に行けば良いな」


 サイラスが答えて帰って行った。

 残ったのはリゲル。

 こいつはどこまで知っているのか。


「随分短時間にシャーリーと親しくなったんだな」


 リゲルはこっちの様子を伺いながら声を出す。

 

「シャーリーって名前の女の子が面接に来ているって聞いたから、もしかしてって声を掛けたら大当りだったんだ」

「シャーリーは迂闊なやつだから、疑うことを知らない」

「迂闊、そうだな迂闊だな」


 私は傷跡を見せている姿を思い出した。

 

「ああそうだ、傷跡は主のお嬢さんが綺麗に治していた。可哀想だってな」

「あれはミーシャの嫌がらせだ。サイラスの近くにいるシャーリーが気に入らなかったんだろう」

「でも、随分とベタベタしていたぞ。付き合ってないのか?あの二人」

「どうやらサイラスにその気は無かったようだな。あいつはシャーリーを好きだったらしい」

「シャーリーとはどんな付き合いだったんだ?」

「幼馴染でパーティの仲間。それ以上にはなってないな」

「シャーリーは男はいなかったのか?可愛い子だったけど」

「いないな。あいつもサイラスのことが好きだったけど、ミーシャとサイラスを見て諦めた感じだった」


 陛下の気にする事は聞けたな。


「マイケルさんはいつからこの町に居たんだ?」

「俺はシャーリーの五歳上だけど、俺が六歳になった時にはもう居たな。マイケルさんが剣を教える道場を開いて、六歳になったばかりの俺は親に連れて行かれたから覚えてる」

「なるほど···最初にマイケルさんと一緒にいた男にもお礼がしたいんだけど、誰かわかるか?」

「明日町長に聞けよ。マイケルさんと仲良かったから知ってるかもな」


 マイケルさんの墓参りもしたいと言ったら、明日連れて行ってくれると。町長の家にも一緒に行くから宿屋で待ってろと言われた。当然ながらまだ警戒しているようだ。


 ほとんどの抽斗の中を見てから、寝室へ戻った。

 リゲルから見えないように気をつけながら、転移軸を設定し、リゲルの近くへ戻る。


「あったのか?」

「マイケルさんの剣はあったが、母親の形見がわからなかった」


 そんな話は聞いてないが、抽斗を開けていたのでそれっぽい事を言った。


「ああ、ピアスか」


 リゲルは抽斗を開いて見たが、あれ?ないなと首を傾げた。

 こいつ、この家に詳しすぎないか?

 よく知ってるな、と聞けば、何度もマイケルさんが見せてくれた、と答える。

 宿屋まで送ると言うので、ここまでか、と帰ることにした。鍵はリゲルが持っていたので、リゲルが隣の家に戻しに行った。

 そしてリゲルと二人で無言で宿屋までもどった。


 マイケル・カイナーゼの剣は、手入れがしっかりとされていた。

 騎士としてのプライドをそこに見て取れて、何か理由があってここに残ったのだろうと思ってしまう。

 しかし、先入観持たずに事実のみを持ち帰らなくてはいけない。

 リゲルは警戒しながらも、情報をくれた。

 町長にはどのように接するか。ある程度こちらの情報を伝えても、知りたいことを全て引き出したい。

 それにしても、いくら余所者とはいえ警戒しすぎのような気がする。

 マイケル・カイナーゼがこの町に居続けた理由でもあるのか。


 

 翌日朝食を終え、どのように聞き出すか考えていると、リゲルとサイラスが迎えに来た。

 まず、町長に会いに行くという。

 

「今日は恋人とデートしなくても良いのか?」


 サイラスにむけて挑発してみる。


「恋人じゃない!」

「あんなにベタベタくっついていて?シャーリーともあんなふうに歩いたのか?」

「······いや」


 サイラスは苦虫を噛み潰したような顔をする。

 今更何を思っても、シャーロット王女はここには戻らないし、お前たちが付き合っていると思ったままだろう。

 いけ好かない二人だが、今はサイラスとミーシャに感謝だ。


 町長の家は教会の近くで、それなりに大きな家だった。

 サイラスが『ただいま』と家に入る。

 サイラスは町長の息子だったのか、とわかったところで、マイケル・カイナーゼは町長と仲が良く、時々シャーロット王女が泊まっていたと話していたことを思い出した。

 付き合っていないという女とあんなにベタベタしている男が一つ屋根の下にいたのか、ということは、シャーロット王女は無事だったのか?なんとか聞き出さないといけない。

 

 私が通されたのは応接室。

 すぐに町長夫妻がやって来て、軽く挨拶をする。

 私は昨日話したことと同じ内容を二人に伝えた。

 二人は終始頷いて聞いていたが、話し終わると『本当の用件は何ですか』と聞いてきた。


「私達は、マイケルからそんな話は一度も聞いたことがない。何が目的かわからないけど、黙って帰ったほうが良いですよ」


 どうやら私の話は嘘だと見破られたようだ。

 ならば情報を小出しにするか。


「彼女は今、王都にいます」


 たったそれだけで、町長は唾を飲んで手に力が入った。


「町長は、彼女についてどこまでご存知か?」


 町長夫妻は下を向いて、口を噤んでいる。

 サイラスは様子が変わった両親を見て、不思議そうな顔をしているが、リゲルは窓の外をじっと見ている。

 この中で知らないのはサイラスだけらしい。

 もう少し揺さぶってみるか、と口を開きかけた時、町長が観念したのか話し始めた。


「申し訳ありませんが、あなたの身分を教えてくださいませんか」


 よし!落ちた!

 私は本当のことを伝えた。


「リカルド・ラザイガー。レンダルク国近衛騎士副団長をしており、この度、本来の場所に戻られたシャーロット様の足跡を調べております」

「ああ、お戻りになられたのですか。では、無事なんでしょうか」

「はい。特に姉君がお喜びになり、離れませんよ」

「もう、狙われることはないのですね」

「そこは安心してください。ただ、こんな近くにいらしたのに、なぜ見つからなかったのか、その調査も兼ねて来ましたので、全てお話しください」

「わかりました」


 町長は、夫人に『あれを持ってきて』と伝えると、夫人は部屋を出て行き、すぐに日記帳と分厚い植物図鑑を持ってきた。


 町長が言うには、マイケル・カイナーゼがこの町にきたのはシャーロット王女がやっと歩き始めた頃。町長夫人の親戚がナモシェンド家のメイドをしていたことから、町長夫人を頼って来たという。

 城での襲撃からシャーロット王女を守るために暫く身を潜め、城の安全が確認できたら戻ると言っていたが、城の様子を確認してくると言い残し町を出たナモシェンド子爵令息は、それきり戻ってこなかった。

 しかし、時々手紙が届いて現状を伝えてきたそうで、その手紙の内容からまだ帰れないと判断していたという。

 しかし、その手紙もここ三年ほどは来なくなっていた。

 シャーリーを連れて王都へ行こうかとも考えたが、そんなに遠い場所ではないのに一度も探しに来ないのは変だと判断し、引き続きシャーリーとして育てることにした。

 二人がこの町に住み始めた時、すぐに二人の素性は町の二十歳以上の者には伝えられた。

 元々王家への信頼と忠誠意識の高い町、しかも田舎の結束が固い地域だったので、絶対に二人の存在を話さない。他地域からの見知らぬ者がいたら注視するという取り決めは、シャーリーがいなくなった今でも守られていると言う。

 

 町長は夫人が持ってきた植物図鑑の厚い表紙を開く。

 すると中はくり抜かれ、届いた手紙が隠されていた。

 

「届いた手紙、全て保管してあります」


 私は一通手に取り確認する。

 町長宛、裏を見ると名前はない。

 中の手紙を取り出して見る。それは一番最後に届いた手紙だという。


『二人共元気か。こちらは未だに襲撃犯を追っている。先日、ローゼリア王女の食事から毒が見つかり、そちらの調査もなかなか進まない。潜伏期間が長くなり辛いだろうが、もうしばらくそちらで守ってほしい。──タトーラス・ナモシェンド──』


 襲撃犯はわかっているし、ローゼリア王女に毒が盛られたことなど私が知る限り無い。

 嘘の内容で、城へ戻らないように誘導している証拠を手に入れた。




今回もお読みいただきありがとうございました。


次話は二十一時投稿予定です。




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