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シャーリーのリスタート  作者: 小松しの


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近衛騎士副団長の仕事〜リカルド〜

前半はリカルド視点、後半はシャーロット視点です。

 シャーロット王女が王妃とローゼリア王女と退室してすぐ、陛下が私に視線を送る。


「リカルド、サンドナで情報収集だ。どのような生活だったのか特に念入りに。ああそうだ、白魔法師にはまだ手を出すな。脅すのは逃げられない程度ならいいぞ」




 私、リカルド・ラザイガーは、レンダルク国近衛騎士副団長になって一年目。剣も得意だが、魔法も武器として使える。

 私の得意な魔法は『集音』『防音』『転移』。

 諜報活動に特化しているというべきか。お陰で二十三歳にして副団長になれた。

 

 シャーロット王女誘拐事件は機密事項で、王女の行方が未だにわからないということと、誘拐を企てた犯人名は、宰相と騎士団長のみが引継ぎで知らされる。

 本来私の立場なら知らないはずだが、シャーロット王女が見つかったという話が王室の手の者から緊急で届き、諜報が必要になるだろうからと急遽教えられた。

 聖玉についても初めて知って、だからなのか先程の光景がまだ信じられない。

 シャーロット王女については一般知識としてあるだけで、身体が弱いので幼少期から別荘で静養中ということだけだ。

 その身体の弱い(はずの)王女は、冒険者ギルドで大怪我をした、とその傷跡を惜しげもなく見せる豪胆な少女で、色々な意味でこの子は大丈夫なんだろうか、と失礼とは思うが心配になる。

 しかし、公爵邸で対面時に見せたカーテシーも、お茶の飲み方も、満点とまではいかないが綺麗にできていて、平民として暮らしていたのに髪も長く美しかった。

 これはマイケル・カイナーゼという騎士が、いずれ王女は城へ帰れると信じ教えたのだろう。

 マイケル・カイナーゼを父として話をするシャーロット王女は、とても信を置いているようだった。

 しかし、それとこれとは別で、私はサンドナでしっかり調べないといけない。たいして離れていない町にいた王女をなぜ見つけられなかったのか。


「シャルは冒険者ギルドに登録していたそうだから、ギルドカードを持っていけば何か役にたつかもしれない。シャルの荷物は既に届いている。シャルの部屋にあるから、持っていくといい」

 

 陛下からシャーロット王女の部屋へ入る許可を得た。


「転移軸の設定もしてくるように。念の為に」


 転移軸は転移のための目印。これがある所には転移ができる。転移軸が無いところには転移ができない。

 宰相から転移軸の話が出たということは、調査に時間がかかると言われたも同然。

 

「ああ、サンドナに行く前に、シャルから町での情報をもらうか。何も知らないより良いかもしれない。シャルをここへ呼んでくれるか」


 陛下はダグラス騎士団長に言うと、騎士団長は頭を下げて退室した。

 

「マイケルが守っていたから無事だろうが、シャルの周辺も···男とかもきっちり調べるように」


 無事ってのはあれか、処女かどうかということか。

 平民は重要視しないらしいからな。でもそこは王家としては無視できないんだろう。

 本人に聞けば早いのに。あの王女なら、あっさり言いそうだけど。


「承知いたしました」

「これから調べるリカルドが先入観を持つわけにはいかないから、マイケルについては何も言わない。ただ、私は彼をよく知っている」


 陛下はそう言って口をギュッと結んだ。

 言いたいことを我慢しているようで、私は陛下から視線を逸らした。

 

 暫く重い空気が続いたが、ノックの音がそれを霧散させた。


「シャーロットです」


 高めの声の後、扉が開いた。陛下の許可を得て王女が入ってくる。後ろからローゼリア王女と王妃もついてきた。最後に入室したダグラス騎士団長は、シャーロット王女だけを連れてくることに失敗したのだろう。珍しく項垂れていた。

 王妃と双子の王女達はソファに座る。

 真ん中にシャーロット王女、挟むようにローゼリア王女と王妃が座った。

 

「お父様もシャーロットの隣が良かったな」


 甘い話し方の陛下だが、ローゼリア王女にもいつもこの調子で話すので通常運転。しかし、さっきが初対面だったシャーロット王女は少し驚いている。

 慣れるまで頑張って平常心を保ってほしい。


「お父様、シャルをお呼びですって?これからドレスを選ぼうと思っていたんですよ」


 ローゼリア王女がムッと拗ねた表情で陛下へ言う。

 

「そうかい?それは申し訳なかった。でも、二人も来たならちょうどいい。シャルの情報を共有しようじゃないか」


 町での暮らしぶりを聞きたいと、陛下はにっこり微笑んで話しやすい雰囲気を作った。


「町での暮らしですか?父は···あ、えっと···」

「マイケルは父で良いよ。サンドナでの父だからね」

「ありがとうございます。えっと、父が最初冒険者ギルドに登録して稼いでいました。町長と父は仲が良くて、父が泊まりで家に居ない時は、町長の家にお泊りが決まり事でしたね。我が家の隣は八百屋の夫婦が住んでいて、よく差し入れとかもらいました。あ、父は子供達に剣の使い方を教えていて、だからなのかギルドは剣士が多いですね」


 それはほとんど父親の情報だと思うが、嬉々として話すので皆うんうんと聞いている。


「ねえ、シャルの恋人とかいなかったの?」


 ローゼリア王女がぶっ込んできた。


**********


「えっ?恋人?」

「ええ、だって今まで平民として暮らしていたでしょ?自由恋愛だって聞いたことがあるわ」


 私はこの面々に恋バナをしなくちゃいけないのかしら。何もないんだけど。


「恋人なんていなかったし、そういったことは何もないかな」

「ええ?でも好きな人とかはいたでしょ?ね、いたでしょ?」


 随分と食いついてくるなと思ったけど、好きな人ってところでサイラスを思い出してしまった。

 前に座るお父様の顔がサッと変わったので、私も顔に出ていたのかな。

 

「あ、やっぱりいるのね。どんな人?素敵な人?」


 ローズはなおも食いつく。これはある程度話さないと逃れられないやつだわ、と感じてサラッと話すことにした。


「えっと、ずっと片想いしていた人がいたけど、最近失恋が確定して──」

「──ええっ?シャルが失恋?」


 今度はお母様だ。


「どういうこと?どうして失恋しちゃったの?」

「えっと、私が片想いしていたのは幼馴染で同じギルドのパーティ仲間だったんだけど、先日の討伐の時、私が寝ずの番をしている時に、その人が女性用のテントに入っていくのを見まして···」

「ええっ?!夜這い?!」


 その単語は何処で覚えたんだろうお母様。

 ふと見るとお父様は顔色が真っ赤になっているし、お父様の後ろに控えているウィズレッド騎士団長とラザイガー副団長は真っ青だ。

 この二人真っ青になって、夜這い経験者か?と思ったけど、そうじゃなくて、好きな男が他の女に夜這いをかけた所にいるという、私の置かれた状況を想像したのだろうか。そしてそれをサラッと話す私も、貴族としての常識がないということだろう。そろそろ終わりにしたほうが良さそうかなと思っても、女性達は逃してくれなかった。

 

「え、女性用のテントってことは、女性はシャルの他にもいたってことよね」

「私ともう一人ですね」

「何人パーティだったの?」

「四人で、剣士が二人と、白魔法師と私」

「じゃ、白魔法師が相手なのね」

「その白魔法師って、シャルの傷を治さなかった女か?」


 おっと、怖い。やめたほうが良さそうな方向に話が向く。

 最後の声はお父様だ。相変わらず顔が赤い。


「楽しい話じゃないから、もうこのへんで、ね」


 なんとか終了の意思表示をしたら、え〜とか言いながらも終わりにしてくれた。

 お父さんは心配症で、女の子だけのお泊まり会にも行かせてもらえなかったとか、一人で出歩くのは結婚した時か俺が死んだ時だ、と言われたことなんかを話した。

 そのあたりの話は男性陣には好評のようで、『大切に育てられたんだな』とお父様からしんみりと言われた。お父様、顔色も普通に戻っている。良かった。


「ああ、そうだ。シャルは王女だからギルドカードはもう返却しよう。身分はちゃんと証明できるし」


 お父様が思い出したように言う。

 確かにもうギルドで依頼は受けないだろうから、返却したほうが良いのか。


「あ、私の荷物、カリアさんの宿屋に置いたまま」

「荷物は届いているよ。シャルの部屋に置いてある。後で確認して、カードをリカルドに渡して。リカルドが返却してくる」

「いえ、そんな私が行ってきますよ」

「シャル、王女はね、一人で彼方此方行かないんだ。王女が出かける時は、必ず護衛が付く。それなりの人数がね。カード返すだけで、そんなに大袈裟なことできないだろう?」


 なるほど。確かに護衛をつけてカード返すのは大騒ぎになりそうだ。

 納得した私は、後で副団長にカードを渡す約束をした。

 そこでまた一つ気がついた。


「宿屋にお金払ってないわ」

「ハッハッハッ、大丈夫だ。カリアにはちゃんと払う。シャルを見つけてくれたお礼もあるし」


 良かった。安心できたところでお茶をいただいた。

 うん、お城のお茶も美味しい。

 ソーサーにカップを置くと、ローズがお菓子を指さした。


「お城の料理人が作るクッキー、とっても美味しいの。お茶にもあうのよ」


 そうなのね、と一つつまんで口にする。

 あ、本当に美味しい。サクッと軽くてホロホロっと口の中で解けて、バターの風味もとても良い。

 お茶を一口含んでみる。本当、お茶を口にすると甘みがふくよかになる。

 その美味しさに驚いていると、お母様からもこっちのお菓子もね、と別のお菓子をすすめられる。

 そんなやりとりを、お父様と宰相はニコニコと見ていた。

 私は三日前にお父さんとお別れしてきたのに、今、新しい(?)家族とこんなに和気藹々としている。

 お父さんが知ってた方がいい、と言っていた諸々は、本当に役に立っている。この日が来るのを知っていたのかはわからないけど、お父さんには感謝感謝だ。


「あんまり食べると、このあとの夕食が入らなくなるぞ。そっちも美味しいんだから、食べないのは勿体ない」

  

 お父様に言われて、お菓子はそこで止めた。

 丁度その時、ノックのあと『シャーロット様のお部屋が整いました』と声が聞こえ、私は部屋へ案内されることになった。



今回もお読みいただきありがとうございました。

次話は二十一時投稿予定です。

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