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シャーリーのリスタート  作者: 小松しの


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カント・コンシューリの回想 2


よろしくお願いします。



 シャーロット殿下は、いつにも増して美しかった。『今日も美しいね、私の愛しい人』迎えに行った時に思わず声に出ていた。

 いつものように受け流すのかと思ったが、殿下はパッと頬を染めた。

 その姿が可愛らしいし、何よりその反応はやっと私の言葉を受け取ってもらえたのかと嬉しくなった。

 

 ローゼリア殿下とミハエル殿下がホールの真ん中で踊る姿を見て、シャーロット殿下が、『綺麗ね』と呟いていた。『私にとっては、あなた以上に綺麗な方はいませんよ』と言った私の言葉は、いつものように流された。


「今日も絶好調ね」

「そんなに可愛らしく見つめられるなんて、嬉しいですね」


 一卵性の双子のなのに、私はシャーロット殿下の方が美しく見える。それはいつ見てもそうで、例えドレスを交換していても、化粧を変えても見分ける自信はある。

 さっきのように、私の言葉をそのまま受け取って欲しいのに、と少し残念だったが、この美しい人を今日はエスコートする権利を有していると思えば、気持ちも上向いた。

 その後のダンスは、やはり楽しかった。

 話はいつも色気のないものだけど、この時間は殿下の素が見えて好きな時間だ。

 この後も続けて踊りたいと思っていたが、やはりウィズレッド団長がやってきて殿下を誘っていた。

 本当は譲りたくなかったが、それを押し通せるような関係ではない。

 グッと堪えて私は壁際へと移動した。

 私は二人の様子をじっと見ていた。

 二人共、表情がぎこちない。

 何か会話をしているけど、そんなに楽しそうではない。

 いったい何を話しているんだろうか。殿下が引き気味に見える。

 ぼうっと見ていたせいか、曲が終わりに近づいていたことに気が付かず、あっと思ったときにはリッセル侯爵令息が次のお相手になっていた。

 先日、リッセル侯爵令息は婚約者候補を辞退していた。だからこれはマナーとして誘っただけなんだと思い込もうとしても、私の目に映る二人はお似合いだった。

 相変わらず息のあったダンスで、二人共会話も楽しそう。

 この二人を見たら、婚約者辞退なんて無理なのではないか、そう感じた。

 そもそも貴族は政略結婚が普通で、シャーロット殿下が望む『自分を好きな人』というのは条件としては二の次。

 陛下がどのように選ぶのかわからないが、私のような訳ありよりも、リッセル侯爵令息のような将来有望なご子息を選んでも不思議ではない。

 むしろ、その方が当たり前の事。

 その考えに行きつき、私は気持ちのやり場に困ってしまった。

 私の気持ちを伝えても、サラリと受け流す殿下は、私のことを何とも思っていないのだろうか。

 もしそうなら、私は自分の気持ちを整理しなくてはいけない。このままでは苦しくて、とても殿下の幸せを祝うことなどできない。

 私は、殿下へ私の気持ちを全力で伝えることに決めた。

 もし、信じてもらえなかったり返事が否だったら、その時は諦めよう。きちんと諦めて、殿下の幸せを祝おう。

 決意をすると行動は自ずと決まった。



 リッセル侯爵令息とのダンスが終わって、すぐに私は殿下を迎えに行った。

 殿下は、さすがに三人続けて踊るのは疲れたようで、あっさり私についてきた。

 途中飲み物をもらい、バルコニーへ行く。

 

「はあ、休める」


 シャーロット殿下は用意されていたソファに座り、果実水を一口飲んだ。

 すっかり心を許した表情に見えるのが、私の思い違いでなければ良いが。

 私は殿下の顔を覗き込むようにして語りかけた。


「やっとあなたを独り占めできる」


 私の言葉を受け流すにしても、いつもは切り返しが早い殿下が、今はなぜか反応が鈍い。


「体調が悪い?」

「体調は、平気」

「熱っぽい」


 お酒を飲んだわけでもないのに顔が赤く見え、私は確認のためにシャーロット殿下の頬を触った。

 わずかに熱を感じたが、その直後に殿下の口から漏れたつぶやきが、私の背中を押した。


「いったい、どうしたいの?」

「結婚したい」


 サイドテーブルにシャンパングラスを置いて、殿下の腰に手を回す。

 少しでも拒否反応を示したらやめようと思ったが、嫌がる素振りはない。


「シャーロット様、顔を見せて」


 殿下は少し俯いて、表情がよくわからない。

 私は頬に当てていた手を顎へと移動させ、優しく上向かせた。

 顔は私の正面にあるのに、目が合わない。

 大切な話をするから、お願いだから目を見てほしい。


「シャーロット様、目を見て」


 すぐには視線が合わなかったが、再度願うとやっと目を見てくれた。

 ああ、やはりこの人が欲しい。

 

「大切に、愛し続けます。だから私と結婚してください」


 私の目に映る殿下は目を見開いている。

 突然で驚いたのだろう。口も少し開いてポカンとした。

 それがまた可愛くて、そして、ダンスの時より近い距離にある唇が欲しくて。

 少しずつ顔を近づけた。

 嫌なら止めるから。

 そう心の中で思いながら、ゆっくりと顔を近づけた。

 もう、触ってしまいそうな時、殿下は瞳を閉じた。

 受け入れてもらえた。ああ、でも口吻を受け入れただけで、結婚は駄目と言われてしまうかもしれない。

 私は口吻の間、そんな心配しかできなかった。

 そして、唇が離れた寂しさからか、先程の求婚の返事を急かしてしまった。

 駄目なら諦める。今すぐには無理でも、あなたの幸せを祝えるように頑張る。

 シャーロット殿下から言葉が出るまでの数秒、私は悪いことしか考えなかった。

 

「カントと、結婚したいです」


 ホールから聞こえてくる音楽に消されそうなほど小さな声だったけど、私の望む返事に一瞬幻聴かと思った。

 しかし、殿下の私を見る表情から、それは確かに殿下からの答えだとすぐにわかった。


「嬉しい。ありがとう。ありがとう」


 夢ではないのを確認したくて、殿下を抱きしめてしまった。声が震えているのがわかって、恥ずかしくなる。

 殿下は昔母がしてくれたように、落ち着けというように優しく背中をポンポンと叩く。


「これから、ずっと愛してくださいね」

「シャーロットが望むなら、約束します」


 殿下が私を選んでくれたから、この先ずっと愛し続ける。

 額に頬にと顔中キスをしていると、ローゼリア殿下がいきなり現れて驚いた。

 どこで見ていたんだろう。

 王家の影から報告がいったのか?そんなことには使わないか。

 その後、軽くローゼリア殿下からお小言をいただいたが、全く耳に入らなかった。

 

 

 シャーロットの討伐不参加は残念だったが、変にケチがついても嫌なので了承した。

 予定は一週間。頑張れば一日くらいは早く終わるかもしれない。

 早く行って早く帰ろうと思ったが、まさかドラゴンに遭遇するとは思わなかった。

 圧倒的に人数不足。

 城ヘ魔鳩を飛ばし、援軍を求めた。

 約二日、ドラゴンを見張れば良い。きっと陛下は多く援軍を出してくれるだろう。

 援軍がきたら、一気に攻めよう。そう思って皆静かに見張っていた。

 しかし、そろそろ援軍が来るだろうと思われた二日目に入った時、まずい事態になった。

 討伐に不慣れな新人が、極度の緊張からか逃走しようとした。

 逃げるのは仕方ない。しかしその者は、大声を出しながら走り、塒の外にいたドラゴン一体に、こちらの存在をわからせてしまった。

 仕方ない。一体ならば何とかいけるかもしれない。

 そう判断し、早期に決着をつけることにした。

 しかし戦い始めてすぐ、音に気づいた幼体が塒から出てきて、それを守る成体一体も戦いに入った。

 成体二体と幼体一体。 

 これは分が悪い。仕方がないので私が一人抜け出して、魔法師団とは別の方向へ気を逸らせることにした。

 その間に一時撤退し、援軍を待つ。

 私のマントは魔物から身を守る『幻惑』がかけてある。これをかぶればドラゴンからは存在が見えない。

 私はフードを被りマントで体を隠して、素早くドラゴンの後へ回り込もうと移動した。

 元居た場所から九十度回り込んだところで、幼体に攻撃を仕掛けた。

 当然、成体二体はこちらを向く。

 幼体は私の攻撃に驚いたのか、塒の方へと飛び去ったが、成体二体はこちらを狙う。

 生体は私の姿が見えないが、攻撃が繰り出された元を探ろうとしていた。

 私は大木に隠れながら、さらにマントで存在を消し、攻撃を繰り出す。

 決めた成体一体にだけ攻撃を仕掛けるが、私の位置がばれるのはまずい。

 慎重に時間をかけて、魔法師団がある程度撤退するまで時間を稼ぐ。

 そうこうしているうちに、一体は離れて行った。幼体のいる塒へと戻ったのか。

 残るは一体。その一体は私が見つからないからか、魔法師団の方へと向くので、私は攻撃を連続してかけた。

 確実に当たってはいるが、致命傷にはなっていない。

 魔法師団はどこまで行けたか。既に一時間以上一人で戦っている。

 私の魔力量も、そろそろ残りわずかだと思う。

 これ以上攻撃すると、魔力切れを起こしそうだ。

 私がいる場所からは、魔法師団がどこにいるのかわからない。

 確認しようと大木から一歩横に移動した時、ドラゴンがこちらを見た。確実に私を捉えていた。

 まずい。

 そう思った時、ドラゴンの炎が私に向かってきた。

 とっさにウォーターホールを展開したが、残りわずかの魔力を使い切り、膝から崩れ落ちた私に炎が容赦なく浴びせられた。

 記憶はここまで。

 次にぼんやりと目が覚めた時、なぜかウィズレッド団長の腕の中にシャーロットがいて、彼女の左手が血だらけだった。

 




 更新は毎日二十一時を予定しています。


 読んでいただき、ありがとうございました。




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