表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
シャーリーのリスタート  作者: 小松しの


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

43/49

マイリーとメイド達の仕事


よろしくお願いします。



 やることが全て終わり、部屋でぼんやり過ごしていたら、あっという間に結婚式当日。

 不安は何も解消されていないのに、ただぼんやりと時間を無駄にした。

 マイリーとメイド達は、昨夜も私を磨いたのに、今朝も早くから湯浴みだ香油だと忙しく手を動かしている。

 勿論、コルセットを締め上げることは抜かりなく、締めて休んで締めて休んで、やっぱり限界の少し手前まで締め上げた。

 ドレッサーの近くに、コンシューリ領でお針子さんが作ってくれたウエディングドレスが用意されている。

 布地は真っ白なのに、白いレース、白い糸の刺繍がされていて、とても豪華に見える。

 ベールのレースは、糸が細いのかとても繊細な編み目で軽やかだ。

 化粧を含めて全ての支度が終わった頃、お父様お母様、ローズとミハエル様が来た。

 教会まで待てなかったとローズが言って、私の手を握った。

 

「一緒にいられた時間は短かったけど、私はシャルといられて幸せだったわ。本当はね、一年中王都に居て欲しいけど、それは私の我儘だもの、わかっているわ。シャル、幸せになってね。あの男に限ってないとは思うけど、浮気とか嫌なことされたらすぐに戻ってきて良いのよ。それだけは覚えておいて」

「ローズに全部言われたから、私達はもう言うことはないわね。シャル、いつでも顔を出して。この部屋はあなたの部屋よ」


 泣き虫なローズが、珍しく泣かずに笑顔で言い切って、お母様が続いた。

 お父様とミハエル様はうんうんと頷いている。

 ああ、幸せだわ。こんなに祝福されている。

 私の涙腺が緩みそうになった時、『泣いたらコルセット締め上げるってマイリーが言っていたわ』とローズが恐ろしいことを教えてくれた。

 すっと涙なんて消え去ってしまうから、コルセットとは恐ろしいものだ。

 そんな私を見て、皆が笑う。

 

「ありがとう。私もここでの生活は、とても幸せだった。短かったのが残念だけどね。いつでもコンシューリ領へ遊びに来て。避暑の為に別荘も建てたほうが良いかしら」

 

 私の言葉に、皆がそれは良いねと言い合って、それもまた嬉しいし幸せだ。

 皆が退室すると、今日の護衛のダグラスが来た。


「コンシューリ侯爵より早く拝見できて、申し訳ないですね」


 と言うけど、きっとそんなこと思っていないんだろうな。『今日はお願いします』と言ったら、『このまま逃げますか?』なんてウインクされた。

 ダグラスこんなこと言うんだ、と楽しくなって、二人で笑い合った。

 

 私は馬車に乗り、ダグラスは馬で前を行く。

 周りにも護衛の近衛騎士はいる。

 窓から外を見ると、遠くに街の人達が見に来ている。

 小さい女の子が手を振っていたので、私も振り返してあげたら歓声が上がった。

 今回はパレードはしない。

 私は降嫁で、ローズとは違うから。

 街の人達もそれを知っているから、教会とお城の間に立って見に来ている。

 もしかすると、教会からコンシューリ邸までもいるかもしれない。

 ここでも祝福を感じて、胸が熱くなった。

 教会につくと、馬車から降りる時にダグラスが手を添えてくれる。

 でも、それで終わり。

 そこからは私は一人で教会へ入った。

 外の扉を入る。もう一つ扉があり、その向こうには参列者がいてカントが待っている。

 

 司祭が、『おめでとうございます』と言って扉を開いた。

 奥の正面にカントが見えた。

 遠いのに、カントが笑っているのがわかる。

 ベールがあって良かった。私、絶対にニヤけている。

 ゆっくりとカントの所まで歩く。

 少しずつ、少しずつ。

 シャーロット・コンシューリになる為の時間だと実感する。

 カントの隣にたどり着くと、カントが小さい声で、『今日は一段と美しい』と言ったので、心の中で、『今日も絶好調ね』と言っておいた。

 たぶんカントはわかったと思う。ふふっと笑っていた。

 

 式自体は三十分程で恙無く終了した。

 誓いのキスの時に、軽くではあったけど口吻をしたら、私の魔力量を知らない貴族から小さく驚きの声が漏れていた。

 私の魔力量については、そのうち知れ渡るだろうと放っておいた。

 たから、こういう感想が出てくるのは承知しているけど、この場で声に出るのかと思ったら笑えた。

 カントにエスコートされて教会を出る。

 教会から遠巻きに街の人達が見物に来ていた。

 カントと馬車に乗り込む前に、少しだけ手を振った。

 人々の熱量が上がったのを見計らったように、カントは私を馬車へと促した。

 馬車に乗って窓から外を見ると、私のやっぱりコンシューリ邸の方へと人々の列がある。


「凄いことになってるわ」

「この後の舞踏会までは、近衛達が護衛についてくれるけど、夜にはさすがにこの人達はいなくなると良いんですがね」


 本来ならコンシューリ侯爵家で行う舞踏会はこれを最後に、と王城で開催される。

 王女に話しかけるのは二の足を踏んでも、候爵夫人になら話しかける人はいるはず。交流を深めなさい。とお母様から言われていた。

 私は学園に行っていないし、デビュタントもしていない。過去の舞踏会では病弱設定で、さらに隣りにいるのがダグラスやカントだったので、話しかける人がいなかった。

 社交頑張れ、ということだと理解しているけど、疲れを既に感じている今、なかなか大変なことだと思う。

 とりあえず今日は、カントから離れないようにしていよう。



 舞踏会は、いつものように始まったけど、出席者がわりと若い方々が多かった。父親世代と私達世代で三対七の割合か。

 父親世代の方々は、祝福の言葉の後は取引などの仕事の話がほとんどで、私達世代は私と知り合いになりたいという、小さな希望を持って話しかけてきていた。

 仕事の話はカントがしているし、私は若者世代と話をしていた。

 学園には行っていなかったけど、サンドナで生活していた時にはちゃんと友人はいた。

 友達作りの引き際も少しはわかる。

 笑顔で無難な返しをしていたけど、さすがに疲れた。

 そんな中、セイヴァーとアンナリエが話しかけてくれた。

 やっと知っている人達と会えて、ほっと一息ついた。

 私達が一冬、コンシューリ領にいると話したら、アンナリエは明らかに気落ちした。

 彼女にとっても、私がいるといないとでは違うのだろう。私もそうだからわかる。

 社交シーズンには戻ってくるから、手紙も出すから、と二人で約束しているのをセイヴァーとカントが優しく見守ってくれていた。


 

 一時間を過ぎると、私が体力的に辛くなってきた。

 立っているのが疲れてしまった。

 そんな状態の私を見てカントは、お父様とお母様に少し早いけど邸に戻る、と挨拶してくれた。

 ローズ夫妻もやってきて、暫く会えないけど元気で、と挨拶をし、コンシューリ邸へ馬車で戻った。

 さすがに沿道に人はいなくて安心。

 初冬の夜は、コンシューリ領でなくても寒い。

 体調崩したらいけないから、外で待っていなくて良かった。



 邸につくと、使用人達が並んで出迎えてくれて、その中にはマイリーと私付きだったメイド達の姿もあった。

 カントを見ると、『マッサージが上手なメイドが見つからなくて、それならいっそのこと、と声をかけたら了承してもらえました』と教えてくれた。

 

「嬉しい。ありがとう」

「今日は疲れたでしょう?しっかりマッサージしてもらってくださいね」

「そうね。お願いしよう」


 カントが私の部屋の前まで送ってくれて、後はマイリーとメイド達にお任せだ。

 朝から湯浴みをしたけど、化粧も落としたいし疲れを取りたい。

 いつもよりゆっくりと時間をかけてマッサージをしてもらい、リラックスできたところで用意された夜着のおかしさに気がついた。

 いつもは膝下まで長さがある。用意されたこれは膝上十センチ以上。お尻が隠れているのか不安になる長さ。

 そして生地が薄い。

 初冬でこれは寒いと言ったら、『暖めてもらってください』と言われ、そこでやっとこれからの初仕事を思い出した。

 ここまでしなくても、との私の声はまるっきり無視され、ほらほらと夫婦の寝室へと放り込まれた。

 

 夫婦の寝室には既にカントがいて、ソファに座って本を読んでいた。

 私は心許ない夜着のせいで近づくこともできず、なんとなく居心地が悪く思っていたら、カント寄ってきて、『寒くない?』と聞いてきた。

 夜着の薄さが恥ずかしくて、腕で胸を隠すようにして、『寒い』と言ったら、『こんなに薄着でかわいそうに』と言ってお姫様抱っこした。

 は?と思って緊張していると、ベッドに優しく下ろしてくれて、掛布団をかけてくれる。

 良かった、見られなかった、と思ってほっと一安心すると、カントが隣に潜り込んできたので、『そうだった。結婚後の一仕事があった』と思い出した。

 

「こんな薄着じゃなくても、シャーロットは魅力的なのに」


 と言って私をギュウっと抱きしめて暖めてくれたけど、その後は一仕事では済まなくて四仕事することになった。

 寝室に入る前にマッサージしてもらったのに、全く無駄だった。

 そして、なぜ結婚式の二日後に領地へ出発する予定にしていたのか、身をもって理解した。





 更新は毎日二十一時を予定しています。


 読んでいただき、ありがとうございました。




評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ