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シャーリーのリスタート  作者: 小松しの


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私は誰?

今回もよろしくお願いします。

「ああ、シャーロット、やっと、やっと」


 婦人は立ち上がりススっと私に近づくと、ぎゅうっと抱きしめた。

 私の左隣に座っている綺麗なドレスの私は、


「会えると信じてました。ああ、でも夢のようで、夢のようで」


 何やら涙声になっている。

 抱きつかれているので身動きがとれず、目だけで辺りを確認すると、先程入室した男性は、うんうん、と何やら頷いていて、近くに寄ってきた宰相も、にこやかにこっちを見ている。

 目頭を押さえるのが見えたから、泣いているのかも。

 私だけがよくわからない状況。

 ただ一つ言えるのは


「シャーロットって誰?」


 場の空気がビシッと固まった。


「ダイアナ、まず座りなさい。未だ説明がされていないようだ」


 目の前の男性が声をかけると、ダイアナと呼ばれた婦人が名残惜しそうに私から離れ、ソファに戻った。


「宰相?」


「申し訳ありません。皆様おそろいの場でご説明したほうがよろしいかと判断しました。シャーリー様、よく聞いてくださいね」


 ゆっくりと私に説明を始めた。


「こちらはアルケイン・レンダルク国王、そしてダイアナ・レンダルク王妃、シャーリー様のお隣にいらっしゃるのはローゼリア王女です。両陛下はシャーリー様のご両親、ローゼリア王女はシャーリー様の双子の姉君にあたります。あとシャーリー様のお名前はシャーロット様です」


 まず、この人達が王家の方々だということに驚き、なぜか私がシャーロットという名前だという。しかも、私の両親って?

 宰相の話が説明下手くそで、余計に混乱する。


「失礼しました。順をおって説明いたします」 


 私の言いたいことがわかったのか、宰相はしっかりと説明してくれた。


 国王に双子の王女が生まれたが、ある事件により第二王女が誘拐された。

 いくら探しても見つからず、しかし諦めずにいたところ、宿屋に来た少女がよく似ている上に、中指の痣もある。この痣は王族の指に必ずあり誘拐された王女にもあった。そしてそれは聖玉に触れると発光する。

 公爵家のメイドの面接と称して呼び出し確認したところ、痣が発光したので王族として確認がとれた。

 なおカリアさんは、町中での情報収集をする王城勤めの人だった。


「ご理解いただけましたか?」


 宰相が笑顔で尋ねるけど、私はまだ混乱中。

 今の話が本当で、それが私のことだとするとお父さんは誘拐犯になってしまう。


「いえ、それは私のことではありません。私の父は誘拐犯ではありません。町の人からも好かれていたし、ただの平民です」


 お父さんが誘拐犯のはずがない、と必死に伝えるけど、国王様の表情が暗くなり、暫く沈黙が続いた。

 

「サンドナで過ごしていた時のお父様の名前がマイケル、お母様の名前はリーリアとのことですが、シャーロット様が拐われたとき、行方不明になった近衛騎士の名前がマイケル・カイナーゼ。カイナーゼ伯爵家の次男で、彼の婚約者の名前がリーリア・マルティーエス。マルティーエス子爵令嬢です」


 シュバイス宰相が私を見て『偶然ではないですよね』と続ける。


 確かにそこだけ聞くと偶然ではないけど、でも誘拐犯じゃないです、そんな人じゃないです、と小さく反論することしかできなかった。すると、ただ···と王妃様が口を開いた。


「ただリーリア様は、事件の三年後に別の方と結婚なさって、今も王都に住んでいらっしゃいます」

「それならやっぱり私とは関係ありません。父は誘拐犯じゃありません」


 また沈黙が続いたけど、国王様が『彼の性格は私もよく知っている。誘拐犯とは思えないが、そのことについてはこれからしっかり調べる。何か戻れない訳があったのかもしれない』と優しく仰って、私は少し安心した。


「では、私の部屋に行きましょう?まだシャーロットのお部屋は整っていないの」


 左隣のローゼリア様が、立ち上がりながら私の左手を取り引っ張った。

 突然だったことと左手だったことで、左脇腹の傷が引きつって思わず『痛っ』と左脇腹を庇ってしまった。

 

「あっ、ごめんなさいっ。そんなに強くひいたつもりはかったの」

「あ、いえこれは一ヶ月前の傷が引きつってしまっただけなので」


 ローゼリア様が青ざめて謝るから、傷のことを少し話した。

 すると、周りの皆の顔色がさっと青くなり、そんなに酷い傷なのか、白魔法師はいなかったのか、と声があがる。

 ここでサイラスとミーシャのことを話しても仕方ないので、なんとなく誤魔化したけど、ついには傷を見せなさい、と国王様から言われてしまった。

 見せないことには話が終わらない雰囲気だったので立ち上がり、傷が見える程度にブラウスを持ち上げた。

 国王様もシュバイス宰相も私の思い切りの良さにギョッとした表情をしたけど、私の後ろから『えっ?』という声が二つ聞こえた。

 そうだった。後ろにもいたのを忘れていた。

 でも既に傷を見せた状態だったので時すでに遅し。

 顔を後ろに向けて『見ますか?』と聞くと、少し躊躇を見せたけど『拝見します』と言って、二人共前に移動してきた。


 見るんかい!




 記録として残したほうが良いという国王様の判断により、傷の大きさや傷を負ったときの状況、治癒の程度や治癒をした白魔法師の名前等を聞かれた。

 白魔法師の名前は言うことを躊躇った。

 なんだか処罰対象っぽいことを言われて、さすがにかわいそうかなと思ってしまったので。

 男性陣があれこれ質問している最中、王妃様は真っ青な顔をして涙目になり、ついには顔を背けてしまった。

 王妃様の立場とすれば、なかなかこんな傷見ないでしょうしね。

 ローゼリア様は、男性陣に負けないくらい傷を観察し、『記録が終わったら私が治しますよ。この程度なら綺麗に治せます』といい笑顔を見せてくれた。

 いつまでも傷が残るのは嫌なのでお言葉に甘え、この後ローゼリア様のお部屋で治してもらえることになった。


「今夜は私と同じベッドで寝ましょうね。シャーロットのお部屋が整うまで、ずっと私の部屋を使ってね」

「そんな、ローゼリア様と同じお部屋なんて勿体ないです」


 突然の提案に驚いて断ると、とても悲しそうな顔をして、


「シャーロット、ローゼリアと呼んで。姉様でもいいわね。あ、でもローズが良いわ。ね、お願い、ローズと呼んで」

 

 と言われてしまった。これは私は妹だと決定したのかな?

 どうしたら良いのかと困っていると、


「そうね、シャーロットのことはシャルと呼ぼうかしら?」

「はい、シャルで大丈夫です、王妃様」

「···お母様って呼んで欲しいわ、ね、シャル、お母様、お母様よ」

「私はお父様だよ。シャル、呼べるね、さ、呼んでごらん」


 と、この国の最高峰二人から、なかなか圧がある要望が飛んできた。

 見ると目を輝かせた王妃様、にっこり笑う国王様がいる。

 言わざるをえないと覚悟して、


「お父様、お母様」


 小さくつぶやくように言うと、『わぁ』と随分可愛らしく喜ばれた。


「シャルは黒魔法なのね。私は白魔法なの。先生が厳しかったから、ある程度の傷は綺麗に治せるのよ。シャルはどんな攻撃魔法が得意なの?」

「得意なのは雷ですが、好きなのは水ですね」

「もぉ、喋り方が硬すぎる。家族だけの時にはもっとくだけて喋って欲しいわ」


 ローズの頭の中ではすっかり仲良しの姉妹らしい。しかし、宰相も近衛騎士二人もいるんだけど···

 

「そうね、私にも楽にお話してほしいわ。あ、彼らは護衛だから、彼らにも楽に、ね」


 顔に出ていたのかな?それにしても何だろう、このフワフワ感。貴族って、もっとビシッとしていると思っていたから驚き。

 私が戸惑っていると宰相が提案してきた。


「夕食まではまだ時間がありますので、ローゼリア様のお部屋に移動してお話されては?」


 そうね、とローズがにっこり笑い、こっちよと歩き出した。私が後に続くとお母様もついてくる。『急ぎの仕事が終わったら、お父様も行くからね』とお父様が寂し気に声をかけてきた。

 仲良し家族なのね。

 王家といえども私と似た感覚だと思うと安心できる。

 

 目指すローズの部屋は三階で、先程の部屋より更に奥へと歩いた。

 お城って広いのね。ショートブーツで良かったと思えるほどに歩く。

 暫くすると、大きな扉の前に着いた。

 両脇を守っている近衛騎士が、礼をした後扉を開いた。

 重そうなそれはとても静かに開き、そこから先は特別なんだと思わせる。

 扉の奥も廊下が続き、少し歩くとまた扉。

 そこにも両脇を近衛騎士がいて、同じように礼をして扉を開けた。やっと部屋に入った。


「ここはね、王家のプライベートスペースに入る前の控室みたいな所よ」


 どうやらまだ歩くらしい。

 その控室の奥の扉を、やっぱり近衛騎士が両脇にいて、同じことをした。

 なるほど王家のプライペートは、こうして守られているのか。

 その扉の向こうはやっぱり廊下だけど、両側には所々扉が見える。そして廊下の突きあたりにまた扉。

 両側にある扉を四つ通り過ぎると、ここが私の部屋よ、ローズが立ち止まる。勿論、扉の両脇を近衛騎士。

 同じように礼をして扉を開く。

 その部屋は、淡いピンクを基調にしているけど、可愛すぎない素敵な空間だった。

 

「さ、座って。何から話そうかしら」


 近くに控えていた侍女にお茶を依頼して、ローズはソファに座り、私を見ながらローズの隣の座面をポンポンと叩いた。

 ここに座ってね、と態度だけでなく表情からもわかる。拒否する理由もないので隣に座ったら、パァっと今日一の笑顔を見せてくれた。

 なんだろ、凄く可愛い。顔は私と同じなのに、仕草がいちいち可愛い。

 思わず見惚れてしまった。


 侍女がお茶を用意し終わると、お母様が人払いをした。

 ローズが『傷を治しちゃいましょうね』とブラウスを持ち上げ手をかざすと、傷がフワリ温かくなり、すぐに肌が綺麗になっていった。

 ローズの性質が感じられるとても優しい治癒で、心も満たされた。


「ほら、綺麗に治りました」

「凄いね。温かい治癒だったわ。本当にありがとう」


 ローズの希望通りくだけて口調でお礼を言ったら、嬉しそうに微笑まれた。

 

 一口お茶を飲み、お母様が口を開いた。


「シャルにとって、大切なことを話すわね」


 お母様が優しい口調ながらも笑みを消し、そっと話し始めた。

 それは、私が誘拐された事件についてだった。


 

 

お読みいただき、ありがとうございます。

もう少し続けて投稿します。

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