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シャーリーのリスタート  作者: 小松しの


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30/49

銀色のドレス


よろしくお願いします。



 暫くするとローズがお母様と戻ってきた。

 ローズは、『今日一日安静にしていたら、明日からはベッドを出ても良いわ』と言ってくれた。

 少し不服そうだけど、それは私を心配していたからだと理解している。

 そのこともあわせて『ありがとう』と言ったら、また泣きそうな顔をした。

 お母様は、『今後について話をしようと思ったのに、カントはもう戻っていたのね』と苦笑いを浮かべた。

 討伐から帰ったら、婚約について話を進めると言っていたからそれか、と思い出し、もう少しひきとめても良かったのかと思った。

 

 お父様がダグラスを護衛につけただけで私を自由にしたことは、お母様も私が城を出てから知ったそうだけど、お母様からはローズほどお説教はなかった。

 ただ一言、置き手紙でもいいから欲しかった、と言われただけだった。

 

 今回、討伐での死者はなく、怪我人は白魔法師が治した。

 私達が城へ戻った後、徹底的に近辺を調べていた魔法師団から魔鳩が飛ばされて来て、ドラゴンの塒は他にはなく、ドラゴンの番がたまたま良さげな穴蔵を見つけたのだろう、との結論になった。

 明日にも討伐隊は帰城予定で、詳しくはその後になるらしい。

 きっと討伐隊が戻るとそのことでカントは忙しくなるだろう。

 お母様は今のうちに少し話をしておこうと思ったのかもしれない。

 

「全てが落ち着いてからでも、私は全然かまわないから」

「あら、そうなの?でもこれから婚約式をして、結婚の準備をしてとなると、どのみち早くても一年半は時間がかかるわ」

「私はそれでも良いけど、ローズが結婚したら私はどこかへ移動したほうが良いんですか?」

「それは大丈夫。ローズは暫く別宮に住むから」


 別宮は、ミハエル殿下御一行が泊まった離宮だ。

 どんな建物なのか知らないけど、きっと結婚して暫くは二人きりでという配慮なんだろう。

 

「私は別宮から通うから、あまり変わらないわ」


 ローズは嬉しそうに微笑んでいる。


 ローズは女王となるために、学園を卒業したら本格的に仕事を始める。ミハエル殿下は王配になるために、同じように仕事を始める。

 別宮から王城へ通うことになるけど、城の敷地内にある別宮からも馬車を使うそうだ。

 カントは魔法師団長だけど、侯爵位を継いでいる。ご両親が病で立て続けに他界された為だった。

 以前、侯爵としての仕事はどうしているのか聞いたら、ちゃんとやっているとドヤ顔された。

 転移が使えるから、移動の時間が省略できる。その分、侯爵としての仕事をこなしていると言われ、器用だなと思ったことを思い出した。

 その時に、『シャーロットが望むなら、二人で領地に籠もっても良いですね』と言われ、それも良いかな、と思った。今、カントはどう思っているのだろう。

 その辺もきちんと話をしないといけないな、とボンヤリ考えた。

 コンシューリ家の領地は、王都より北。冬は長いけど、夏は避暑地として人気があり、観光産業が盛んな土地だったと記憶している。

 結婚したら二人で領地に籠もって、時々お父様達も遊びに来る。それも楽しそうだなと、結婚に現実味が出てきた今、考える。

 明日の討伐隊の帰還式には出席してね、と言いおいて二人は部屋を出ていった。



 

 翌日、帰還式は十五時からあった。

 私とカントが並んでいるのを見た魔法師団員は、皆一様に安堵の表情だった。

 あの団長と王女が傷病者用の馬車に揺られて帰城なんて、きっと色々な意味で恐怖を感じていたことだろう。

 私は心の中で謝った。

 

 今回は、きちんと当初の目的の魔鹿も駆除して、ドラゴン討伐で得た物の他、魔鹿の肉もお土産で運ばれて来た。

 これはきっと、慰労パーティで振る舞われることになる。

 国王陛下であるお父様は、労いの言葉をのべた後で、明日の夜、慰労パーティを開くと言った。

 お城はパーティばっかりだな、とは思ったけど、今回のはお疲れ様の会なので、飲んで食べて楽しんで欲しい。

 私もカントがパートナーで出席することになった。

 まだ婚約式がいつになるか決まっていないけど、これからは毎回カントがエスコートして、周りに周知させると言われている。

 婚約式は国内に広めるための儀式のようなものだけど、貴族達には何回か隣に立てば勝手に理解するから。お母様はそう言って慰労パーティのドレスを用意していた。

 カントは髪も瞳も銀色だから、私の瞳の色である碧を使って刺繍をする。とお母様は、お城勤めのお針子さんに依頼した。

 お針子さん達は今頃、本当に寝る間を惜しんで仕事をしてくれている筈だ。

 お針子さん達は、慰労会なんてあるのだろうか。

 一度、主催してみようかな。



 慰労パーティ用にお母様が用意してくれたドレスは、銀の布地に碧をふんだんに使った刺繍。

 何回も立たなくたって、これだけで貴族達へ効果がありそうな一着だった。 

 エスコートしてくれたカントは式典用の騎士服だったけど、式典用なので飾緒も勲章もキラキラしている。

 この人、頭の先から足の先まで光っているな、と思ったけど、私のドレスを見たカントは『ああ、これは感激ですね』といつも以上に甘く微笑んできた。

 笑顔すら眩しい。

 

 慰労パーティなので、立食形式で食事は沢山用意され、楽団も音楽を奏でて踊りたい人は踊るもよし、という自由なものだった。

 参加している貴族は若い人が多く、気楽なパーティを楽しんでいるようだった。

 カントは常に私の横にいて、ダンスは二回踊った。

 飲み物を持ってバルコニーへ出たけど、これは興味本位の視線を向ける貴族達から避けるためだった。

 

「ウィズレッド団長じゃないのか、という視線が多かったですね」

「二回続けてカントがパートナーだし、このドレスだから決定だと思われたんでしょうね」


 カントの横でこのドレスだから、ほとんどの人は驚愕していた。きっと私の魔力量を知らない人達ばかりだから、そのこともあるのだろう。

 カントに見合う魔力量を持っていないと、気がふれるか白い結婚。病弱で療養から戻ったばかりの王女が、そんな魔力量の持ち主なのか。それとも王家は白い結婚前提なのか。

 そんなことを考えていた人が多かったと思う。

 視線がいつも以上に刺さった。

 その視線を避けて、バルコニーへと避難した。

 バルコニーに用意してあったソファに座ると、カントは『このドレス、結婚する時に持ってきてくださいね』と囁いた。

  



 カントは帰還式の後、書類仕事が多くなって目が疲れると言い、しばしば私の部屋でお茶を飲みながら愚痴を言った。何かかわいそうだなと思ったら、『ちょっと休ませて』と言ってゴロンと横になり、所謂膝枕をする形になった。

 まあ、好きな人に甘えられている感じで嬉しいから、何も言わずに膝を貸した。

 十五分たったら起こして、と言われたけど、まさか本当に寝るとは思わなかった。

 カントは静かに寝息をたてて、無防備に寝ている。

 十一歳も歳上なのに、可愛なあと思ってしまう。短くなった銀の髪を指先で撫でるけど、寝息は変わらず聞こえてきて、気を許してもらっているのだと嬉しくなる。

 カントは忙しいけど、私は平和な日常が戻ってきて、しかもとても幸せだ。

 この人がいるからだと思うと、自然と笑みが浮かぶ。

 結婚までは時間がかなりある。

 それは決まり事なので仕方ないし、できればカントの負担にならないように進めたい。

 でも、今みたいな穏やかな時間は毎日でも欲しいと思う。

 


「カント、時間よ」


 約束の十五分になったので、少し小さめの声でカントを起こす。

 起きなくても良いな、と思っていたけど、カントの寝覚めは良かった。

 うっすら瞼を開けて、また目を閉じたら『う〜ん』と伸びをした。

 それからおもむろに座り直し、『おはようのキスをして』とねだられた。

 お昼寝から目覚めてもおはようなのかな、とは思ったけど、チュッと頬にキスをしたらとても嬉しそうな顔をされた。

 それが嬉しいと思うと同時に、こうしてどんどん好きになっていくんだろうなとも思う。

 だけど、それで良いんだろうな。

 

 

「婚約式の前に、サンドナヘ行ってお墓参りをしましょう。シャーロットと結婚すると報告をしたい」


 カントからの提案は、嬉しくもあり不安でもあった。

 誰にも何も言わずに出てきてしまった。

 そんな私が、突然王族として戻ったら。

 そう考えると気が重くなる。

 


 

 更新は毎日二十一時を予定しています。


 読んでいただき、ありがとうございました。




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