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シャーリーのリスタート  作者: 小松しの


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捜索


よろしくお願いします。



 今回は魔鹿の討伐のため、元々全魔法師団の三分の一が討伐隊として旅立った。もし魔狼が出ても、その人数で何とかなる筈だった。

 しかし、相手がドラゴン三体は無理な話だった。一体なら総動員で何とかなるだろうけど、さすがに三体は無理だ。それがわかっての増援要請なんだろう。

 そして私が気になるのは三体ということ。


「幼体が一体?」

「きっとそうだろう。番と幼体。成体はかなり気が荒くなっている筈だ。援軍を待てればいいが、もしドラゴンに気づかれてしまったらかなりまずい」


 声は聞こえているのに、理解できないことってあるんだなと思った。

 私はフラリとよろけて、側にいた近衛騎士に受けとめられた。

 

 城を守る観点から本来ならばありえないけど、今回は特例として、魔法師団は留守番組の八割を援軍として出す。騎士団も援軍として出す。ポーションもありったけ持たせる。出発は準備でき次第となった。

 こんな時に私が城にいるのはありえない。

 ドラゴンと戦ったことはないけど、何かできるのではないか。そうお父様に言ったけど、即座に却下された。王女が行っても、周りに気を使わせるだけだ、と。

 私は、城でじっと待たなくてはいけないのか、一人でも多く援軍が欲しい筈なのに、カントが危ないのに。

 

 部屋へ戻った私は、討伐用に仕立てられた服を着た。

 誰に止められても、私はカントの所へ行こうと決めていた。

 馬に乗る前提で作られていたパンツタイプの、魔法師団の制服によく似たそれは、とても動きやすそうだった。

 残念なことに私は転移が使えない。

 着替えても人の目を掻い潜って城外へ出ないといけない。

 廊下には近衛騎士がいるため、そこからは無理だと考えて、バルコニーに出て外を見た。

 城内がバタついているせいか、人の姿は見えない。

 ここだ。

 私は手摺を乗り越え、風魔法で着地の衝撃を弱めた。

 上を見上げると、手摺から落ちんばかりに身を乗り出したマイリーが泣いている。

 私は声を出さずに、元気よく手を振ってから壁際へ移動した。

 城の馬は使えない。今は人が大勢そこにいるだろうから。

 とにかく城から出て、街の貸馬屋へ行き、足の強い馬を借りて走るしかない。

 地図はイッシュラル子爵の授業で頭に入っている。

 今は城を出ること。ただ、一刻も猶予はない。

 私は前方しか見ていなくて、後ろから人が近づいてきたことに気がつくのが遅れた。

 肩をグッと掴まれ、思わず『ひっ』と声が出て振り返ると、そこに居たのはダグラスだった。

 まずい人に見つかった。ダグラスはお父様の側にいる筈だから、きっとお父様にバレている。


「前ばかり見て、後ろから魔物に襲いかかられたらどうするつもりですか」

「こ、ここは城内だから、安全だと思って」

「私に捕まりましたね」

「見逃して」

「それはできません。ここでお待ち下さい。馬を連れてきます」

「え?」

「馬が必要でしょう?城の馬は足が強いし体力もあります。身体強化魔法をかければ、現地まで一日かからずに到着できるでしょう」

「馬を借りて良いの?」

「すぐ連れてきます」


 ダグラスはそう言って厩へ向かった。

 私は人目につかないように、低木に身を潜めて待った。

 馬に乗ったダグラスが戻ってきた。

 横にはもう一頭馬がついてくる。


「さあ、行きましょう。身体強化魔法は既にかけました。途中、再度かけます」

「ダグラスも行くの?」

「殿下は身体強化魔法を使えますか?」

「できません」

「私は使えます。さ、早く乗ってください。ポーションも馬に乗せましたから、落とさないように気をつけてください」


 

 ダグラスが私の前を行く。

 近衛騎士団長が通るので、ほとんどの人は頭を下げて通り過ぎるのを待つ。

 私は止められることなく城外へ出られた。

 そこからはひたすら駆ける。

 本来ならば街中の広い道を行くのが早いけど、身体強化をかけた馬が駆け抜けると確実に危険なので、街から少し外れにある道を選んで進んだ。

 ダグラスは途中、食事にだけ休憩をとり、その時に馬にも水や餌を与え、出発する時にまた身体強化をかけた。

 身体強化をかけた馬というのは本当に早くて、私は身を低くして手綱を握りしめ、落ちないように気を張った。

 休憩を三回し、一睡もせずに駆けたおかげか、翌日の早朝には現地へついた。

 

 そこは、戦場だった。

 聞いたところ、当初援軍が来るまで見張る程度でいる予定だったけど、孵化したばかりの幼体を守る成体に気づかれ、一体が襲いかかってきたそうだ。

 ドラゴン発見時から、いつ戦闘になっても良いように魔力は温存していたので、一体だけならばなんとか討伐できそうだ、と戦隊を組んだところで、なぜか幼体が飛び出し、戦いの方へと向かったために残る成体も戦闘の中へと入った。

 そんな想定外が立て続けに起こり、こちらの一瞬の隙をついてドラゴンは容赦なく襲いかかってきた。

 カントは『自分が引き付けておくから、安全な場所まで撤退を』と別の魔法師へ伝え、囮となるべく隊から離れた。

 後方にいた白魔法師は黒魔法師へ治癒をかけ続け撤退はできたが、カントが戻らないと言う。

 そんなばかな。

 少し離れた空には、一体のドラゴンがグルグルと何かを探すように旋回している。

 あの辺りにカントがいるのかもしれない。

 きっと生きていて、身を潜めているのだ。

 白魔法師達も黒魔法師達も、私とダグラスが運んできたポーションでかなり回復していた。

 カントを助けるために、あのドラゴンを倒さなければいけない。

 幸い、幼体と成体一体は塒へ帰ったのか、今は一体のみ。

 一体ならここにいる魔法師団員だけで倒せる。

 魔法師団はカントがいると思われる位置からドラゴンを引きはがす為、少し離れた所から攻撃をする。その間に私はポーションを持ち、カントを探すということになった。

 ダグラスは私を護衛すると言う。

 ポーションの重い瓶を持っての移動は大変なので、とても助かる。

 私とダグラスは魔法師団から離れ、ドラゴンの様子を伺いながら少しずつ目的地へと進んだ。

 暫くすると攻撃開始の合図となる閃光弾が上がった。

 私とダグラスはさらに身を低くして、ドラゴンが離れるのを待つ。

 シュッとドラゴンの鼻先を抜けたのは、魔法を纏った弓矢。

 ドラゴンは旋回をやめて、魔法師団がいる方向へと体を向けた。

 私達はその隙に静かに移動する。

 ダグラスの視線はドラゴンへ、私は周りを見てカントを探す。

 ドラゴンがバサリと大きく羽ばたいて、魔法師団の方へと向かったのを確認して、ダグラスは『急ぎましょう』と言った。

 カントはたぶん、かなり低い体勢でいるか横になっているか。

 私は木の間に、あの綺麗な銀の髪を見つけるために注意した。少し進んで銀色と気配を探す。少し進んで銀色と気配を探す。それを何度か繰り返した。

 遠くでは魔法師団と戦っているドラゴンがいる。

 急がなくては。

 焦りながらも見落とさないように気をつけて探していた時、『いた!』とダグラスが声を出した。しかし、『殿下は行かない方が良い』と言う。『ここまで来てそれはない』と抗議すると、『殿下がショックをうけるから見ない方が良い』と。大丈夫だと言い切ってダグラスの視線の先に向かうと、うつ伏せで倒れているカントがいた。

 マントは魔法がかけられているのか綺麗だけど、カントの綺麗な銀の髪は焼けて短くなっていて、見える横顔も火傷が酷い。体はマントが守ったのか、首から下はほとんど外傷は見られなかった。

 

「カント」


 私が呼びかけても返事はない。

 ダグラスが慎重に仰向けにしたけど、体はダランと力がない。

 脈を測るとかろうじてあるけど、体温が低いし呼吸も浅い。

 私は初級レベルの治癒しか使えないけど、顔の火傷を治した。まだ痕は残っているけど、痛みは治まっているはず。

 

「魔力切れですか」


 ダグラスが周りの様子を伺いながら聞いてきた。


「そのようです。体温が低くて、呼吸も浅くて、何よりカントから魔力が一切感じられません」


 一刻も早く治さないと、命にかかわる。

 持ってきたポーションの蓋を開け、少しカントの口を開けて垂らした。

 しかし、液体は飲み込まれることがなく、口の中に溜まったまま。

 

「カント、飲んで。お願い。ゴクンって」


 私の願いも虚しく、カントは全く反応しない。

 カントの上半身を少し持ち上げ、私の膝に頭を乗せた。この方が飲みやすいだろうと思ったけど、その行動の最中に、口の中ポーションはほとんど流れ出てしまった。

 

「殿下、コンシューリ団長のマントは、魔物から身を隠す魔法がかけられています。それを被ってコンシューリ団長と二人で隠れていてください。助けを呼んできます」


 ダグラスはそう言い残して、魔法師団の方へと向かった。

 ドラゴンはもうすぐ倒されるようで、今は地面に落ちているようだった。

 私はマントをカントに掛け、どうしたらポーションを飲ませることができるか考えていた。

 ほんの少しでも魔力が戻ったら、体はきっと動かせる。

 私はカントの体を抱くようにし、上半身をもう少し持ち上げた。

 カントの口に指を入れ、舌が喉を塞がないように指で押さえたけど、これでは私の手が邪魔でポーションを飲ませることができない。

 カントを私にもたれかかったような体勢にして、顔だけ上向かせ、私はその体を精一杯支えつつ一か八か、カントに口づけをした。

 いつもの触れるだけではない。

 弛緩した舌が喉を塞がないように、私の舌でカントの舌を少し動かす。

 弛緩した舌を押さえ込むのは難しかったけど、これなら次の段階へいけそうだ。

 私は次にポーションを口に含み、カントの口の中へ口移しで移動させた。

 カントの舌が、ポーションを飲むのを邪魔しないように、私の舌で飲むための道を開ける。

 お願いだから、一度だけでも飲み込んで。

 そう願いながら、何度か口の中で舌を移動させた。




 

 更新は毎日二十一時を予定しています。


 読んでいただき、ありがとうございました。




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