表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
シャーリーのリスタート  作者: 小松しの


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

23/49

勢揃い


よろしくお願いします。



 今夜から、早速ミハエル殿下をお迎えして晩餐会がある。

 到着早々ご苦労さまだ、と思うけど、王族とはこんなものだとローズから聞いた。

 

「でも、シャルは降嫁だろうから、他国へ行くことはないと思うわよ。気にしなくても平気よ」


 とローズは言うけど、今の私に降嫁は禁句だ。

 また婚約者について思い出して悩んでしまう。

 

「ローズは、ミハエル殿下をお好きなのね」


 なんとなく口にしたら、ローズはすぐに顔を真っ赤にしていた。

 国と国とのあれこれで決められたと思っていたけど、好きな人との結婚で良かった、と思う。そして、羨ましいとも。

 私は今、三人の中から選べるみたいだけど、いったいどうなることやら。

 


 晩餐会には、セイヴァー・リッセル侯爵令息の席がミハエル殿下の隣に用意されていた。

 ご友人も一緒なら殿下も少しは気が楽だろうという配慮に見えて、私とセイヴァー・リッセル侯爵令息との顔合わせだな、と理解できた。

 あちらはどう聞いているかは知らない。

 主役はローズとミハエル殿下。

 私は何も知らないふりをしていればいい。

 会話は、両陛下とミハエル殿下とローズ。

 私とセイヴァー・リッセル侯爵令息は、静かに微笑みながら聞き役に徹していた。

 そう、静かに。

 で、困ったことに相手の為人がわからない。

 本当に顔を見ただけで終わった。


 部屋へ戻ると、ローズからの連絡が来て、明日内々にお茶会を開くので参加するように、とのことだった。

 今夜の晩餐会で、私とセイヴァー・リッセル侯爵令息が会話をしなかったことを見て、急遽設けられた席なんだろうと思う。

 今の私はお茶会よりもダンスの練習をしたいのに。マスターできなかったら魔物討伐に参加できないから、必死なのに。

 しかし、出席者はローズとミハエル殿下とある。たぶんセイヴァー・リッセル侯爵令息も付いてくるのだろうけど、この顔ぶれでは断れない。

 仕方がない。参加します、との返事をローズへ渡すようにマイリーに持たせた。



 翌日のお茶会は、いつもならダンスの練習をしている時間だった。

 もしかすると、ローズが今練習中のステップをマスターしないようにしているのか?と疑ってしまう。

 とはいえ、こればかりは仕方がないので、今夜マイリーにお付き合いしてもらおうと思っている。

 身だしなみを調えて、指定の場所へ向かう。

 周りに花が見頃を迎えている庭園の四阿。

 さすがに城ともなると、庭師はいい仕事をしている。少しずつ開花時期の違う植物が植えてあるようで、いつでも何か咲いているらしい。

 

 やっぱり参加者はミハエル殿下とセイヴァー・リッセル侯爵令息。ローズはミハエル殿下と楽しそうに話をしている。

 ミハエル殿下は、体型がしっかりしていたので予想していたけど、やっぱり剣術は好きだし得意だと言う。こちらに来てからも、朝は鍛錬を怠ってないとのことで、セイヴァー・リッセル侯爵令息が溜息混じりに『私もつきあわされていて』と言っていた。

 セイヴァー・リッセル侯爵令息は、現在侯爵家に帰っているはず、と思っていると、『ご想像通り、早起きして別宮まで参っております』と言う。

 それは大変なこと。リッセル侯爵邸がどこにあるのか知らないけど、確実に早起きだ。

 

「まあ、ミハエル様、リッセル侯爵令息がお可哀想ですわ」


 ローズが、小首を傾げてミハエル殿下を見て言う。言葉遣いが丁寧。カントに対するのとは全く違う。とっても微笑ましくて、ニコニコと聞いてしまう。

 

「はは、セイヴァーが怠けるといけないでしょう?剣は己も己の愛する人も守りますからね」


 ミハエル殿下は優しく微笑みながらローズを見る。

 ああ、これは私にもわかる。いちゃついてるんだ。

 二人してふふふと笑い合う。

 あらあらお熱いことで、と思っていたのに、二人はなぜか私を見た。

 あの流れで私を見る?あ、三人目の婚約者候補ってバレている?

 セイヴァー・リッセル侯爵令息を見ると、私を見て優しく微笑んでいた。

 ああ、これは全て知っています、的な感じだろう。

 気まずい。

 思わず目をそらして近くの花を見るフリをした。

 

「シャーロット殿下はお花が好きですか?」


 すぐに尋ねられる。声はセイヴァー・リッセル侯爵令息。

 視線を侯爵令息へ戻して、『そうですね』と答えてみた。


「こちらの庭園は初めてですが、沢山の花が美しいと思います」

「ああ、療養から戻られたばかりですね。お元気になられて良かったです」

「ありがとうございます」

「シャル、リッセル侯爵令息と散策したら?私、ミハエル様とゆっくりお話したいわ」


 これは、ローズがミハエル殿下と二人きりになりたいからの提案なのか、それとも侯爵令息と二人で話せということなのか。

 ローズを見るとニッコリと微笑んで、意味がくみ取れない。

 ローズを見て考えている時間はほんの数秒だと思うけど、侯爵令息は私の方に近づいてきて手を差し出していた。

 高位貴族っていうのは、仕事が早いな。ぼんやりしている時間も与えないらしい。

 仕方ないので手を添えて、『リッセル侯爵令息、よろしくお願いします』と微笑んでみた。

 

「セイヴァーとお呼びください」


 この、名前呼びも決まり事のようだ。

 カントもダグラスも。

 やり取りも面倒なので『わかりました』と伝えた。

 でも少し歩いたら、交流というノルマはこなしたことになるだろう、そう思ってほんの二歩歩いたら、前方からカントが近づいてくることに気がついた。

 おや?と立ち止まると、カントは『迎えに来ましたよ。愛しい人』と私に向かって言った。


「カント、控えなさい」


 ローズのピリついた声が背中を飛び越す。


「シャーロット様、ダンスのお時間が過ぎていますよ」

「カント、控えなさい。シャルは私達とお茶を楽しんでいるのよ」

「ローゼリア殿下、シャーロット様はダンスの練習をしないといけません。もう時間もありませんからね」


 相変わらずカントは怯まずローズに言い返す。

 でも、今の私には力強い言葉だ。

 

「ローズ、私ダンスの練習に行くわ」

「シャル、今日は駄目よ。ダンスはお休みよ」

「でも、時間が無いのは本当だし」

「では、私も一緒に参りましょう」


 そんなことを言い出したのはセイヴァーだった。

 この様子だと、カントも候補者だということは知っていそう。気になるのはどこまで知っているか、ということ。シュバイス宰相の甥っ子だけど、宰相が話しているのか秘密にしているのか。

 

「セイヴァーは、今のところ婚約者候補ということだけですよ」


 ミハエル殿下がはっきりと私に伝えてきた。

 いや、それはミハエル殿下は知っているということなのでは?と思わず振り返った私に、セイヴァーが、『今は秘密と言われまして。シャーロット殿下が教えてくれるまでは待つように、と』と教えてくれた。

 隣国へ帰るミハエル殿下に伝える方が問題のような気もするけど、その辺の線引がわからない。

 考えているうちにセイヴァーに手を引かれた私は、カントの後ろを歩いて練習用のホールへと向かっていた。

 そして、練習用のホールへ入ると、中で待っていたダグラスを見てどっと疲れが出た気がした。

 婚約者候補勢揃い。

 今日の私は、ダンスの練習に集中できるのかしら。

 既に心臓はバクバクしている。

 一番奥のソファに、お父様とお母様が座ってこっちを見ているのがわかった。

 今は私に選ばせようとしているけど、時間がかかるようならお二人が選ぶのかもしれない。

 セイヴァーは、私をホールの真ん中へ連れてきたけど、すぐにカントと入れ替わっていた。


「何を練習しているのか、まず拝見させていただきます」


 セイヴァーは、そう言ってダグラスの近くまで歩いて行った。

 どうやらすぐに練習が始まるのだと理解した私は、カントの正面に立ち、『練習、お願いします』と声をかけて礼をした。

 正規の速さで曲は流れ、私はなんとかギリギリ間違えずに踊れたけど、合格が貰えないのはわかっていた。

 お母様が近づいてきて、やはり注意を四箇所もされた。

 次はダグラスが来て、カントと交代。

 なんだろう。最初から話ができていたのかもしれない。やけにスムーズに進んでいる。

 しかし、私がそれ以上考える間もなく、ダグラスは私の正面に立ち、優しく微笑んでいた。

 もう視界の端で、楽団の方々が曲を弾こうと構えたのがわかり、さっき注意された四箇所を思い出しながらダグラスと踊った。

 やっぱり正規のスピード。気をつけた筈の四箇所は、まだまだできなかった。

 踊り終わった私に近づいてきたのはカント。だけど、足に治癒をかけて離れていった。

 そして想像通り、次はセイヴァー。

 治癒をかけてもらったけど、私の病弱設定はどこへ行ったのだろう。お父様もお母様も黙って見ている。

 ローズの婚約者とはいえ、隣国の王子に知られているからもうどうでもいいのか。

 私は諦めてセイヴァーの手を取った。




 更新は毎日二十一時を予定しています。


 読んでいただき、ありがとうございました。




評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ