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シャーリーのリスタート  作者: 小松しの


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21/49

シャルの婚約者候補達


よろしくお願いします。



 近衛騎士には部屋の外で護衛についてもらい、部屋の中にはマイリーと三人のメイド、そしてカントと私。

 最初、近衛騎士に部屋の外でと伝えると、明らかに拒否の反応をした。


「室内での護衛を、とウィズレッド団長から申し付けられております」


 そう言っていたけど、カントが『自分が居るから大丈夫だ』と下がらせていた。

 話の内容が内容だから、聞かせるわけにはいかない。でも、彼もあまり持ち場を離れるのは良くないだろうから、なるべく手短に終わらせようと近衛騎士が退室してすぐに話し始めた。

 昨夜のここに戻った時のあれを一部始終。しかしかなり早い段階でマイリーと三人のメイド達の芝居になっていた。

 

「もう!あれを目の前で!眼福です!」


 一人のメイドが興奮気味に言うと、他のメイドも大きく頷く。

 その四人の即興の芝居を見ていたら、なんだか少しだけ冷静になった。


「婚約者候補筆頭というのは、なんとなく理解はできるんですけど······」

「でも、公爵家を継ぐ訳ではないので、爵位的には私の方が上ですね。侯爵を継いでいますから」

「やはり、王女は降嫁を考えると爵位は重要なんですよね」

「まあ、逃げ道はあると思いますけど」

「逃げ道?」

「先程も話に出ていた女公爵です。我国は女性も後継として認められていますから、それもありえますね」

「なるほど」

「シャーロット様はどのように考えますか?」

「結婚についてですか?」

「そうです。ご自身のことですが、王族なので意志は通せないと思いますけど」

「できれば、というかなるべく私を好きな人が良いですね」

「ああ、それならば私も頭に入れておいてくださいね。私はシャーロット様を愛してますから」

「······また、唐突に」

「本当ですよ」


 マイリーと三人のメイド達はまた『きゃあ』と悲鳴を上げた。

 その悲鳴を聞きつけて、外にいた近衛騎士が『何事ですか』と部屋へ入ってくる。

 

「大丈夫です。なんでもありません」


 私を含め、女達が慌てて何事もなかったと伝えたけど、その近衛騎士は部屋から出ることなく護衛をすると言った。

 

「私は話が終わったので、そろそろ戻りますね。シャーロット様、また明日」

 

 カントはそう言って部屋から出ていった。

 マイリーと三人のメイド達は騎士から離れた所でコソコソと話をしていたけど、まあ、なんとなく言っている内容はわかった。

 

「ねえ、他の人には話しちゃ駄目よ」

「大丈夫です!ここだけの話です。わかってます」


 皆楽しそうだ。私も他人事なら楽しいんだけど。

 これは一度お父様かお母様に聞いてみた方が良いのだろうか。教えてもらえるのかわからないけど。

 考えても仕方のないことだと思った私は、ソール伯爵夫人へお礼で渡そうと思って始めた刺繍に取り掛かった。



 

 夕食後、お父様から談話室で少し話をしようと言われた。

 当然お母様もローズも加わっての話で、何かと思ったら討伐についてのことだった。

 

「シャルの討伐隊参加は、条件付きで許可とします」

「条件?ですか?」

「そう。ローズの婚約式までにダンスのステップをもう一つ覚えること。明日から新しいステップを始めます」


 お母様が厳しいお顔で私に言った。

 いや、でも一週間ないのに、という動揺が顔に出たようで『私はどちらでもかまいませんよ。覚えても覚えなくても』と言われた。

 覚えれば参加して良いのか、と思うと、新しいステップにもやる気が湧いてくる。

 はたして一週間で覚えられるのか、と言われれば、覚えるしかないと思う。

 

「そんなに討伐隊に参加したいの?」


 ローズが呆れ顔で聞いてきた。

 確かにローズにはわからないかもしれない。

 これはもう、感覚的なものだと思う。勝負に勝つという、そんな感覚。

 王都に住んでいると魔物が出ることは殆ど無いけど、私はサンドナで育ち、下位種ではあるけど魔物が町に出ることはあった。

 それを防ぐために、ギルドで募集をかけて討伐の依頼が出される。魔物によっては、魔導具の材料採取もあり、その場合は材料になる部分を損傷なく採取しなくてはいけないから、倒し方にも工夫が必要となる。

 綺麗に採取できたときの達成感は、なんとも言えないほどだ。

 あの達成感を一度味わうと、なかなか抜け出せないと思う。

 そんなことをローズに言うと、『寝泊まりはテントよ?』と聞く。

 

「テントでも問題ないわ」

「周りは男しかいないのよ?」

「今までも問題なかったわよ」

「シャルは危機感が無さすぎるわ」


 ローズは大きく溜息をついた。

 私達のやり取りを見ていたお父様は、『野営については、カントが結界を張ると言っている。ドレスというわけにはいかないから、騎士服に似たものを作ることにする』と、わりと前向きなことを教えてくれた。さっき、カントがお父様を説得してくれると言っていたから、もうこんなに話が進んでいるのかもしれない。

 明日、カントにお礼を言わなくちゃ。

 私の高揚を感じ取ったのか、お父様が『まだ決まっていないことだけど』と前置きして話し始めた。


「シャルの婚約者を選定している。現在候補者は三人に絞られた。一人はセイヴァー・リッセル侯爵令息、一人はダグラス・ウィズレッド公爵令息、最後の一人はカント・コンシューリ侯爵」

 

 セイヴァー・リッセル侯爵令息は、お目にかかったことがない。前に勉強した貴族一覧を頭の中で手繰り、確かリッセル侯爵嫡男だったということは思い出した。

 で、その繋がりは、とさらに考え始めた所で、お父様から『宰相の甥だ』との情報がはいった。

 そうだった。宰相とソール伯爵夫人の妹のご子息。

 現在、隣国へ留学中のため、婚約者が置かれていないとか。

 

「セイヴァー・リッセル侯爵令息は情報がないかもしれないが、シャルはこの中なら誰が良いか?」


 私は暫く考えて、正直に答えた。


「私は、できれは私を好きな人が良いです。政略的なものとか、やっぱり出てくるとは思うんですけど」

「セイヴァー・リッセル侯爵令息はこの際置いておいて、他の二人が同じくらいシャルを好きだったらどうする?」

「あの二人が私を同じくらい?」


 最近のダグラスはカントに近い甘さがあるけど······昨日はそれっぽいことも言われたけど······カントはスッパリと言いすぎているし······

 どちらも私を好きなのかわからない、というのが正直な感想で、その感覚の中で選ぶのは難しい。

 

「私には、誰が合うと思いますか?」


 周りはどう思っているのか疑問になり、見回して聞いてみた。

 人払いされているのでメイドもいない。四人だけの本当のプライベート空間。

 

「私はダグラスよ。あのくらいしっかりした人じゃないと、シャルがフラフラしそうだもの」


 ローズはダグラス。


「私はカントね。カントとシャルの子供はどんなに可愛らしいかしら」


 お母様はカント。


「······」


 お父様は、腕組みをしたまま答えをくれない。

 女三人の視線はお父様に向いたまま。

 それに気がついたお父様は、言葉を選びながら気持ちを教えてくれた。


「ダグラスは、今まで待たせたという負い目がある。カントはあの魔力量に対応できるのはシャルだけだと思うと、二人の子供は見たいと思う」


 ああ、魔力量。ローズが教えてくれたあれのことか、と思い出したところで、お父様はどっちも選べていないんだと気がついた。

 

「陛下、それでは答えになりませんわ」


 お母様が呆れたように言うけど、私は正直に答えてもらえて良かったと思っている。

 私も答えられないことを求めることが、そもそも違っていたのかもしれない。

 しかし、ふと思い出したのはダグラスに教えてもらったこと。


「ダグラスにエスコートされると、婚約者候補筆頭だと周知されると言われましたけど」

「あら、誰に?」

「わかった、ダグラスでしょう?」

「ええ、まあ」

「それはそうよね。王女に公爵令息だもの。これは決まりって普通は思うわ」

「そうすると、これから毎回エスコートしてもらうと、自ずと決まってしまうのかと思うんですけど」

「それならば、ローズの婚約式はカントにエスコートしてもらうことにしよう。それならまだ決定とは思われない」


 お父様の言葉に、やっぱりローズは反対した。


「私の婚約式に?シャルの隣にカントが居るの?それは嫌だわ」

「しかし、婚約式もダグラスがエスコートすると、貴族達は決まったと思うだろう」

「良いと思うわ、そのまま決定しても」


 ローズはカントは嫌だと言うけど、なぜこんなにカントを嫌うのだろうか。

 もしも聞いたら、いつか教えてもらえるのだろうか。

 

「セイヴァー・リッセルが明後日、ミハエル・イルタンセ第三王子の随行という形で一時帰国する。ローズの婚約式はセイヴァーにエスコートさせるか」

「それは、私がセイヴァー・リッセル侯爵令息とダンスを踊ることになるのかな」

「そうなるね」

「カントにエスコートさせるくらいなら、セイヴァー・リッセルの方が良いわ。私の婚約式にはそっちで調整してもらえると嬉しいわ」

「ねえ、ローズはどうしてそこまでカントが嫌いなの?」


 私の質問に、ローズは一瞬驚いたようだったけど、すぐにはっきりと答えた。


「あんなに女性にだらしない人は不潔よ!」





 更新は毎日二十一時を予定しています。


 読んでいただき、ありがとうございました。




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