婚約
「お姉さまとあの男が、どうして婚約!!??」
「いや、うるさい。声がでかいよ」
私が喚くように叫ぶと、ユベールが横で嫌そうに片耳を塞ぐ。
「嫌なわけ? まともな人だと思うけど」
「嫌なわけ!? 嫌なわけではないけれど、いい方だと思うし、お似合いだとも思うし、お姉さまが嬉しそうだからいいのだけれど!」
お姉さまは大切な話があると言って、アルフォンス様のいる部屋に私を連れた。警備を行うために屋敷に残っているのかと思ったが、そうではなかったらしい。
(お姉さまの婚約者として、自主的に私の警備についていただけだったなんて)
私の知らぬ間に婚約話は出ていて、王宮のパーティで正式に申し出があったそうだ。
おめでとうとしか言えないが、知らなかったのは私だけ。
「何であんたも知ってるのよー!」
「知らなくても気付くよ。あれだけ露骨に顔に出してて、むしろどうして気付かないわけ? アルフォンス様もフェリシテ姉さんも仲睦まじく、だったし、シルヴァン殿下だってリリアーヌ姉さんしか見てなかっただろ?」
ユベールはしらけたように呆れ声を出す。それは賄賂を渡したのだから早く斡旋しろよ。の視線だと思っていたとは口にできない。
アルフォンス様との距離を縮めたお姉さまは、アルフォンス様の結婚の申し出を二つ返事で承諾した。話はとんとん拍子に進み、結婚式もいつにするかと浮き立っている。
「それで、殿下のことはどうするわけ?」
ユベールの問いに私は唸りそうになった。
フェリシテお姉さまのお相手と思っていた時点で、シルヴァン殿下に想いを寄せることなどない。自分の相手になど、考えるわけがない。
「フェリシテ姉さんにお似合いってことは、眼鏡にかなっていたわけだろ?」
「それはそうよ! シルヴァン殿下であれば安心してお姉さまを預けられると思っていたし、申し分のないお方だわ」
「それが自分の相手になるんだろう?」
「そ、それとこれとは、話が…」
確かに素敵な方で、だからこそフェリシテお姉さまにと思っていたのに、まさかの自分が相手になるなど、考えただけで恐れ多い。
お姉さまは完璧でシルヴァン殿下の隣も似合う人だ。だが、私がシルヴァン殿下の隣にいる図など、
「想像つかないわ…」
「じゃあ、断るんだ?」
「それは…」
私は口籠る。フェリシテお姉さまを狙っていると勘違いしていても、シルヴァン殿下の言葉一つ行動一つに私は囚われないようにしていた。間違っても、この人には惹かれてはならないと。
「王族から結婚の申し出があったんだから、断れないだろうけどね。大体あの人だし……」
「断る? 私が? 殿下の申し出を? どうやって?」
「聞こえてる?」
「はい、何!?」
ユベールの声に私はびくりと肩を上げる。ユベールは呆れるように大きなため息をついてくれた。
「唸ってるところ悪いけど、客だって」
お客様の訪問に一瞬シルヴァン殿下を思い浮かべたが、訪れたのはディオンで、私は縋るように駆け寄ったのだ。
「体調でも、悪いのか?」
「悪くないわ。悪くないけれど、さっきは少し…」
錯乱でもしたように思われただろうか。とにかく落ち着こうと新鮮な空気を吸うために外に出て、私たちはゆっくり庭を歩く。
せっかく訪れたお客様にお茶も出さず、申し訳ない気持ちでいっぱいだが、頭の中がぐるぐる回っていた私を気遣って、ディオンは嫌な顔ひとつせず庭歩きを付き合ってくれた。
私が話すのをあぐねていると、ディオンは別の会話に変えてくれる。
「…パーティでは大丈夫だったのか? 俺と別れた後、騒ぎになっただろう?」
「そうなの。私も驚いたわ…」
ディオンがあの場所に辿り着いた時、既に騒ぎは終わりクリステル様が連れ出された後だった。クリステル様がシルヴァン殿下を傷付けようとしたことは聞いたらしい。
シルヴァン殿下と私が一緒にいたので、心配してくれたようだ。
「でも、クリステル様があんなにもシルヴァン殿下を恨んでいるとは思わなかったわ。裏切ったなど、逆恨みのような発言もされていたし」
「バルバストル令嬢は婚約破棄になるよう陥れられたと思ってるんだろう。実際そうだろうし、間違いじゃない」
「陥れられた、だなんて…。私が聞いたのは、クリステル様の行動が行き過ぎたためと」
アルフォンス様はそう言っていた、クリステル様の行為にシルヴァン殿下が注意しても直らなかったと。
しかし、ディオンは肩を竦める。
「妃教育を嫌がっていたのかもしれない。だから無理に行わせる真似はせず、その上、王太子殿下の婚約者に充てがわれる金で無駄な贅沢をさせた。甘やかされていた理由が婚約破棄のためだと知らず過ごしていれば、気付けば殿下に距離を置かれ、殿下が他の女を選ぶかもしれないと焦ったんだろう」
「だから、嫌がらせ?」
「他に理由はあるか? 殿下の前でなければバレないと思っているところが浅すぎる。バルバストル令嬢も殿下のことをよく知っているわけじゃなかったんだろう」
殿下の知らないところで何かをしても、気付かれないと思っていたのならば、シルヴァン殿下を馬鹿にしすぎだ。その程度の男だと思っていたわけである。
それは、何だか腹立たしく感じた。権力しか目に見えていなかったのだ。
クリステル様は何もかも自分の思い通りにいくと考えていた。けれどそれは裏切られ、シルヴァン殿下を恨んだのだろうか。
(私も、恨まれるようなことをしたことになるわけね…)
またお前呼ばわりされるほどのことはしていないのだが。邪魔をしたのは二回しかないのに。
「婚約破棄への道に進んだのは本人だ。もう少し賢ければ、婚約破棄になんてならなかった。他の令嬢に嫌がらせなんてしている暇があれば、自分の状況を見返すべきだったんだ」
ディオンはきっぱりと言いながら、なぜか顔色を曇らせた。
「ディオン?」
「パーティでの話、覚えてるか…?」
何のことだろうか。私が首を傾げると、ディオンは自嘲するように口端を上げた。
「婚約の話だ」
「決まったの? 私、知らなくて。その、おめでとうと言っていいのかしら。あなたはそういったことは好まないと思っていたから」
「俺が、婚約したくないと思った?」
「思ったわ。自分で築き上げた商売でしょう? 確かにあなたの家が背景にあって信頼を得ていることもあるだろうけれど、成功させて続けていられるのはあなたの功績だわ。なのに、ここで事業をかっさらうみたいに他家が入ってくるのは、あなたにとって受け入れ難いことでしょう。断ることができるならば断るのでは?」
婚約は本意ではないだろう。決断も何も、従わざるを得なかったはずだ。
私が言うと、ディオンはひどく眉を寄せて無造作に髪を掻いた。口元を歪めると、髪を抑えたまま大きく息を吐く。
「リリアーヌは、そう思ってくれるんだな。そんな風に思ってくれているのは、リリアーヌくらいだ」
やはり自分の意志とは反して、婚約が決められてしまったのだ。口を噛み締めるようにすると、整えるようにもう一度息を吐いた。
「もっと早く、伝えるべきだった…。そうすれば、こんな話出なかったのに…」
「伝える?」
「いや、いいんだ。もう手遅れだから。それより、もう落ち着いたか? 何かあったんじゃないのか?」
ディオンはもう決まったことだからと、口元を上げた。本当は辛いだろうに、けれど家同士で決まってしまえば覆すのは難しい。私は慰める言葉もなく、お姉さまの婚約について話をした。
「アルフォンス・グランジェ? 殿下についている、次期宰相と目された? それがフェリシテ嬢と婚約? なら、殿下の相手はやっぱり…、」
その言葉に私は目を泳がせる。
「だって、おかしいでしょう!? 何で殿下が私なの!?」
「やっぱりそうなのか…。はは、まったく、やってくれる。おかしいと思ったんだ。急に婚約話が上がって」
「婚約話?」
ディオンは嘲笑うような顔をして吐き捨てるように言うと、肺の息を全部吐き出すようなため息をついた。
「何もかも殿下の策略だ。敵に回すと最悪だな。リリアーヌはどこで目を付けられたんだ。どこかで目立つ真似をしたんだ。フェリシテ嬢といればなおさらだろうしな」
「お姉さまのお相手たちを払っていただけで、目立つ真似なんてしてないわ」
フェリシテお姉さまを狙っている者たちを蹴散らしているのに、その様を見て私と婚約を望むなんておかしいと思う。胸を張って鼻息荒く言うと、ディオンは少しだけ眉を下げた。
「妃教育が進まなくなったのは何年か前。お前に行く縁談を邪魔していたのは、間違いなく殿下だな」
「そ、そんなこと…っ」
私は反論したいが、ディオンは納得できたと、苦笑いを見せた。
「…でも、答えは出てるんだろう? 顔が真っ赤だ」
悶々とシルヴァン殿下の申し出に迷い続けているのだ。答えなんて出ていない。
しかしディオンは、これで諦めがついた。と小さく呟いて、私の頭をぐしゃりとなでた。
「…こうやって二人で会うことはできなくなるだろうから、一度だけ握手をしてもらっていいか」
「握手くらい」
言われて手を差し出すと、ディオンは手に触れた途端、私を引き寄せた。
「でぃ、ディオン!?」
ぎゅっと抱きしめられて驚愕に固まりそうになると、ディオンはすぐに体を離し笑顔を向けた。
「頑張れよ。またな」
ディオンはそう言うと、手を振りながら去っていってしまった。
「………そんなことされたら、さすがに私だって気付くわ…」
婚約が決まったディオンに何か言うことなど、私にはない。ディオンの姿が見えなくなるまで見送って、私は振っていた手を下ろした。
「ごめんなさい。ディオン…」
シルヴァン殿下からお茶のお誘いは、それからすぐに届いた。
「少し散歩をしましょうか」
お茶に誘われて王宮に来たまではいいが、あまりに緊張しすぎてお茶にならず、シルヴァン殿下は庭園を歩くことを提案してきた。
ぎくしゃくと私は手足を伸ばして歩いていると、ぎこちない歩き方に待機する侍女が怪訝な顔をしそうになっていたが、緊張しすぎているのだ、許してほしい。
「フェリシテ嬢への心配は、少しは減りましたか?」
突然言われ、緊張がすぎて私は一瞬頭にはてなを浮かべた。
そういえば、シルヴァン殿下はフェリシテお姉さまの心配はなくなると言っていたが、まさかのアルフォンス様のことだったわけだ。
シルヴァン殿下は婚約について先に知っていたわけである。つい、顔を膨らませそうになって私は我慢した。
「少しは、心配は減りました。これから、アルフォンス様の行動を注視するつもりです」
「注視、ですか」
クスリと笑われてしまったが、婚約は喜ばしいことでも、今後が問題なのだから注視するに決まっている。もしこれでフェリシテお姉さまを蔑ろにするような真似を一つでもしてみたら、後ろから刺す勢いである。
「お姉さまには幸せになってほしいんです」
「知っています。フェリシテ嬢を大切にされているのは側から見ても分かりました。相手におかしなところがないか、子供の頃から注視していらっしゃいましたからね」
その返答に笑うしかない。子供の頃から男たちへの牽制を見られていたのを忘れていた。
「自分の誕生日会でありながら、自分そっちのけでフェリシテ嬢を気になされていて、その一生懸命な姿は大人になっても同じなことに安堵しましたよ。幼い頃から変わらず、人のために常に必死で、目を奪われました」
シルヴァン殿下は照れることもなく言うと、ふわりと微笑む。
「リリアーヌ嬢に近寄る男もいたのに、あなたはフェリシテ嬢に集まる男たちばかりを見ていて、自分のことなど後回しにされていた」
そんなことあっただろうか。パーティではいつもフェリシテお姉さまを見ているので、自分に話し掛けてくる男たちはあまり覚えていない。いや、邪魔だなとか思っていたような気もする。
「男たちを蹴散らすと、途端笑顔になるのも素敵でした」
「そ、それは、お姉さまに変な男は近寄らせたくないので」
パーティではフェリシテお姉さまの相手をチェックしてばかりなのだから、良い相手がいればそれで良いが、全くいないので蹴散らすしかないのだ。
しかし、そんなところも見られていたとは、なんだか気恥ずかしい。
「バルバストル令嬢の件は、耳にされましたか?」
「あ、は、はい。大変な決断かと思いましたが…」
クリステル様は友人に届いた招待状を使ってパーティに潜り込んでいた。仮面舞踏会では招待状だけが頼りだ。仮面を被っていれば誰だか正確には分からない。
それを悪用してパーティに潜り込み、シルヴァン殿下を探していた。
婚約破棄について問うために侵入したそうだが、扇にナイフを仕込んでいたことから、初めからシルヴァン殿下を傷付けるつもりだったのだろう。
捕らえられた後、婚約者の地位にふさわしいのは自分だと言い、それを欲しがる者たちを罰して何が悪かったのだと、反省の色も何もなかったそうだ。
クリステル様は王族を狙った罪により死刑。父親のバルバストル様は現在の地位を剥奪されて辺境へ送られることになった。
最後までクリステル様はシルヴァン殿下への謝罪をせず、怨嗟の声を上げ続けたという。
「彼女がどうしてあそこまでの行動に出たのか、私には分かりません。ただ、婚約は幼い頃に決まりそれが義務だと言われても納得できていなかったのは事実です」
シルヴァン殿下は歩く足を止めると、ゆっくりと私に向き直る。
「王族の婚姻は自らが決めることではなく、決められた相手とどう関係を築いていくかが重要です。ですが、私とバルバストル令嬢は互いの価値観も考え方も擦り合わせることができませんでした。バルバストル令嬢は地位を求め、私はそれに嫌気が差していた。どうして私は、愛する女性と一緒になれないのかと」
どきりとした。シルヴァン殿下は私を見つめ、藍色の瞳を向ける。
「私には幼い頃から婚約者がいて、そんな気持ちを持つことは許されませんでした。このような事件が起きなければ、私は彼女と結婚していたでしょう。王族にとって結婚は契約です。ですが運良く向こうが自ば…、いえ、リリアーヌ嬢、私は自分の気持ちに気付かぬふりを続けたくはないのです」
途中で暴言が聞こえたが、シルヴァン殿下は片膝を下ろすと、私の手にそろりと触れた。
「どうか、結婚の申込みを受けていただけないでしょうか」
シルヴァン殿下の真剣な眼差しに、私はただ小さく頷くしかできなかったのである。
その後のことはあまり覚えていない。我が家に戻りシルヴァン殿下は両親に婚約の申し出を受けてもらえたと報告し、すぐに王宮へ入り王と王妃に挨拶をして、怒涛の贈り物がシルヴァン殿下から届き、中身を全て確認する間もなくいつの間にか発表された婚約に周囲が驚くのも束の間、婚約の祝いやパーティの誘いがどっさり届き、気付けば妃教育の日が近付いていた。
「忙しくなるわね、リリアーヌ」
「フェリシテお姉さまも結婚式の用意が忙しいのでは…?」
「あなたの比ではないわよ」
後から後からと届く贈り物や招待状にうんざりしながら、私は荷物を片付けるメイドたちに混じり、自分が必要なものがどれか選んで荷物を詰めさせた。
「妃教育が急務だからと言って、王宮に住めと言われるとは思いませんでした」
「うふふ。そうねえ。けれど、早く行わないと、あなたが大変になるだけだもの。ありがたくお受けしなさい」
「分かっています…」
本来なら幼い頃に妃教育を始めるのだろうが、私は急遽決まった王太子殿下の婚約者。妃教育を行うには遅すぎるので、王宮に住まいそのルールを学ぶことになった。
(妃教育。考えていなかったわ。いえ、お姉さまが行うものとばかり思っていたのよ…)
お姉さまならば大丈夫。我が家の教育も厳しかったのだし問題ないと思っていながら、いざ自分が行うとなると、少々気鬱ではある。
そんなことを言ったら怒られるだろうが、詰まる所自信がないのだ。
「はあ。私に務まるのかしら…」
「まあ、リリアーヌ、大丈夫よ。あなたの教育係は王妃さまの妃教育を行った方よ。既に妃教育を受けているようなものなのだから、大船に乗ったつもりで行ってらっしゃい」
「それとこれとは話が別ですよ…」
フェリシテお姉さまの能天気さを見習いたいところだが、私は若干ナーバスである。
「それでは、お父さま、お母さま、行って参ります」
「リリアーヌ、お前なら大丈夫だ。安心して行って来なさい」
「大丈夫よ、リリアーヌ。あなたならばこなせるわ」
ベッドに寝たままのお母さまに挨拶をし、お父さまに挨拶を終えると、お父さまは私を玄関まで見送ってくれた。フェリシテお姉さまとユベールも見送ってくれる。
待っていた王宮からの馬車の前で、なぜかシルヴァン殿下が迎えに来ていた。王太子殿下自ら迎えに来るなど、恐縮としか言いようがない。
「既に妃教育を受けているのだから、なんの心配もない。体に気を付けなさい」
「ええ、は?」
お父さまは何かおかしなことを口にしたが、馬車の前で待つシルヴァン殿下に挨拶をして、私に馬車に乗るように促す。
「リリアーヌ嬢、どうぞ、お手を」
「あ、ありがとうございます」
「体に気を付けるのよ」
「頑張れ、リリアーヌ姉さん」
シルヴァン殿下の手を受けて馬車に乗り込むと、フェリシテお姉さまとユベールの声に頷いた。閉められた扉に隔てられて、馬車はゆっくりと走り出す。幼い頃からずっと住んでいる我が家があっという間に遠のいた。
「緊張なさらないでください。妃教育は貴族の教育の延長のようなものです。リリアーヌならば軽くこなせるでしょう」
シルヴァン殿下は笑顔でそんなことを言ってくれるが、さすがに軽くはこなせないと思う。
「妃教育の後、必ず会いに行きますから」
「わ、私で務まるのか、分かりませんが、精一杯やらせていただきます」
「私と話をする余力は残しておいてくださいね」
シルヴァン殿下は当たり前に私の手の甲にキスをして、こちらを見遣る。その視線と色気の迫力に、既に気力が奪われそうになるのだが。
顔が赤くなっているのか、シルヴァン殿下は大きな手で包むように私の頬に触れた。
「もう少し私に慣れてください。これからはずっと一緒ですから」
「い、一緒…っ」
私の心臓はもつのだろうか。シルヴァン殿下の機嫌はとても良いようで、馬車に乗っている間ずっと私の手を握り締め、にこにこ笑顔を私に向けていた。
(気を引き締めなければ。妃教育よ、妃教育。ただの教育とは違うのだから)
まずはそれをクリアーしなければならない。まともに学べなければ婚約などすぐに破棄されてしまうだろう。シルヴァン殿下に恥をかかせないためにも、頑張らなければならないのだから。
妃教育の科目のボリュームは想像し難い。
妃教育のために住まう宮に案内され、部屋の規模や豪華さに恐れおののきながら、私の妃教育は始まったのだ。